プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

H-IIAロケット試験機1号機の打上げ準備状況について

平成13年8月22日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 7月12日より開始した射場整備作業において、機体の組立、各系統点検を実施し、8月9日には、極低温点検を計画通り実施した。極低温点検状況及びその後の射場整備作業状況について報告する。

2. 極低温点検結果概要

 H-IIAロケット試験機1号機に推進薬を充填し、LE-7Aエンジンの着火直前まで(リフトオフ-6秒付近まで)の自動カウントダウンシーケンスを実行することにより、機体、設備及び打上げ当日作業の総合的な確認を行った。当初計画通り、自動カウントダウンシーケンスを2度実施し、データ取得及び機能確認を実施した。

・極低温点検作業状況
8日 11時頃 機体移動(大型ロケット組立棟 → 射点)
9日 2:25 推進薬充填に伴う規制開始
6:30 総員待避開始
13:00 自動カウントダウンシーケンス1回目 リフトオフ - 6秒まで計画通りデータ取得
15:30 自動カウントダウンシーケンス2回目 ルフトオフ - 6.5秒まで計画通りデータ取得
17:50 推進薬排出終了
18:00 総員待避解除
10日 2時頃 機体移動(大型ロケット組立棟 → 射点)

3. 今後の計画

 射場整備作業にて2段液体酸素タンク圧力調整弁の作動不良が発見されたことを受け、調査のため、当該バルブを工場へ返送した(8月21日返送済み)。しかし、台風第11号の影響により輸送が遅れたこと、今後の当該バルブの調査に相応の時間が必要であること等から、打上げ日程を延期する事とした。尚、今後の調査の進み方次第ではあるものの、順調に作業が進めば、打上げは、早ければ8月28日にも行うこととなる見込みであるが、具体的な打上げ日は、今後の作業状況を踏まえ、出来る限り早期に決定する予定である。



極低温点検及びその後の整備作業における特記事項

No.事象原因対策・処置
1 極低温点検時にGPS受信機のテレメータデータに断続的なデータ欠損(最大10秒の欠損)が発生した。 不具合モードを分析し、地上設備であるテレメータデータ処理装置内のGPS点検装置用インターフェースボードの不良と特定した。 インターフェースボードを交換した後、確認試験を実施し、不具合が発生しないことを確認した。
2 テレメータデータ処理を行うタスク支援装置(TAS)で、極低温点検時にデータの一部が処理されない状態(ロックオフ)となった。 第2段搭載ソフトウエア(OBS)を停止したときの状態により、TASのテレメータデータ処理にエラーが生じる場合があり、OBSとTASの一部インターフェース不良と特定した。 TASのテレメータデータ処理プログラムを改修した後、再現試験、機体との組み合わせ試験を実施し、不具合が発生しないことを確認した。
3 極低温点検時に第1段エンジン部の酸素濃度が、規定内ではあるが若干上昇した。また、不具合処置で実施した第1段酸素注排液弁(OFDV)の分解点検において、内部に黒色粉末が見られた。 OFDVは弁軸のシール部から酸素を排気する特性を持っており、これを検知したものと判明した。また、黒色粉末については、工場での作動確認時に設備から混入したものと判明した。 排気ガス出口を機体外に移設した。尚、不具合解析のために取り外したOFDVは2号機用のものと交換した。また黒色粉末については、粉末が存在する可能性がある箇所について影響評価を実施し、内部漏洩点検や清浄度検査により、機能・性能に問題ないことを確認した。
4 保安用コマンド送信試験中に、中之山局からの送信が断となった。 アンテナ及び送信装置内部等の詳細点検、並びに「故障の木」解析等による原因究明の結果、電波の出力調整用部品の不具合と特定した。 出力調整用部品の交換を行い、確認試験を実施し、不具合が発生しないことを確認した。
5 バルブ作動点検中に2段液体酸素タンク圧力調整用弁のバックアップ用予備バルブが作動しなかった。 現在調査中。
当該バルブの分解点検を実施したところ、内部のポペットが固着していた。また、潤滑剤の剥離及び粉状の粒子が確認された。
原因究明結果を踏まえ決定する。

第2段液体酸素タンク圧力調整弁