宇宙開発事業団
宇宙開発事業団(NASDA)は、国際宇宙ステーション(ISS)のサービスモジュール(SM)に搭載する実験装置である微小粒子捕獲実験装置及び材料曝露実験装置(MPAC&SEED)、並びに高精細度テレビジョン(HDTV)カメラシステムを3月30日にロシア航空宇宙庁(RASA)に向け出荷することと致しましたのでお知らせ致します。
これらの装置はプログレス無人補給船で2001年7月に打ち上げられる予定で、MPAC&SEEDについてはSMの外部に船外活動により取り付けられ、HDTVカメラシステムについてはSM内部で医学実験・広報応用実験のための画像取得に用いられます。
1. ミッション概要
宇宙開発事業団(NASDA)は国際宇宙ステーション(ISS)の早期利用の一環として、2001年7月からISSロシア・サービスモジュール(SM)を利用して、微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験(MPAC&SEED実験)、並びに映像取得実験(HDTVカメラ実験)を実施します。 2. 実験の概要2.1 微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験(MPAC&SEED実験)今回の宇宙実験では、最長3年間にわたって宇宙空間における微小粒子の捕獲実験及び宇宙用材料の曝露実験を実施します。これは、これまでにわが国が実施してきた同種の実験と比べて長期間の実験であることが大きな特徴です。また、今回の実験では、実験開始後1年、2年及び3年経過毎に実験試料を回収するため、最長3年間にわたる微小粒子の捕獲数変化、曝露材料の経年変化を評価することが可能です。これらの実験結果は世界的にみても貴重な実験成果であるとともに、我が国の今後の宇宙機開発に大きく貢献するものと期待されています。 ●微小粒子捕獲実験ISS軌道に存在する微小粒子(スペースデブリ、マイクロメテオロイド等)の存在量、大きさ、組成、衝突エネルギ等について評価し、安全な宇宙活動に支障をきたす恐れのある微小粒子環境の把握、また、太陽系形成や進化の一層の理解に貢献するなど、宇宙環境モデルの最新化などに資するものです。
表―1 MPAC実験試料
●材料曝露実験宇宙機の長寿命化、高信頼性化のために、宇宙機の曝露部に使用される様々な宇宙用材料の耐宇宙環境性の向上が重要になります。曝露実験では、各種の宇宙用材料(熱制御材料、固体潤滑剤等)を宇宙放射線、原子状酸素等の宇宙環境にさらし、それら材料の劣化状況、及び宇宙機からのアウトガスや姿勢制御用ガスジェットのプルーム等の汚染物による汚染状況を評価し、今後の宇宙用機器等の開発に資するものです。 表-2 SEED実験試料
![]() 図―1 宇宙機のおかれる宇宙環境のモデル図 2.2 映像取得実験(HDTVカメラ実験)●医学実験
宇宙飛行士は、精神的、肉体的なストレスが多い特殊環境にさらされるため、医師や専門家のサポートが重要になります。 表-3 医学実験テーマ
●広報実験ISS内部の活動状況及び地球撮影等による宇宙活動の映像取得により、ISS計画の国民への普及啓発に活用します。 表-4 広報実験テーマ
3. 実験装置の概要3.1 微小粒子捕獲実験装置及び材料曝露実験装置(MPAC&SEED)実験装置は、プログレスにより2001年7月に3式打ち上げます。実験装置3式をSM外壁に取り付け、各々1,2,3年間宇宙環境に曝露させた後、曝露実験試料部分(微小粒子捕獲材、曝露実験試料)のみを、ソユーズにより回収します。地上に回収された後に、試料の分析・評価、及び地上対照試験データとの比較評価を行います。 ![]() 図-2 MPAC&SEEDのSMへの取り付け状態
3.2 高精細度テレビジョン(HDTV)カメラ・システム
HDTVカメラ・システムは、大きく分けて、HDTVカメラとコンバータユニットより、構成されています。
4. スケジュール(ミッション概要)
表-5 マスタースケジュール![]() 5. 今後の材料曝露実験及びHDTV実験の計画
NASDAは、2005年の打上げを目指して、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームを利用する実験テーマの一つとして、宇宙環境計測ミッション装置(SEDA-AP)を開発中です。 |