プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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国際宇宙ステーションロシアサービスモジュールを利用する
NASDA宇宙実験の実施について

平成13年8月1日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

宇宙開発事業団(NASDA)が国際宇宙ステーション早期利用の一環としてロシアサービスモジュール(SM)を用いて実施する実験装置の打ち上げおよび実験実施について報告する。

2. SMを利用するNASDA宇宙実験の概要

NASDAはロシアサービスモジュール(SM)を用いて以下の実験を実施する。微小粒子捕獲実験および材料曝露実験は最大3年にわたり、高精細度テレビカメラ利用実験は1年にわたり実験をおこなう予定である。

2.1. 微小粒子捕獲実験および材料曝露実験(MPAC&SEED実験)

SM外壁に微小粒子捕獲実験装置および材料曝露実験装置(MPAC&SEED)3式を船外活動により取り付け、それぞれ1年から3年にわたり宇宙環境に曝露させた後、曝露実験試料を地上に回収し、微小粒子環境の計測および材料の経年変化の評価を行う。

2.1.1.微小粒子捕獲実験

宇宙ステーション軌道に存在する微小なダスト(スペースデブリ、マイクロメテオロイド等)の存在量、大きさ、組成、衝突エネルギ等について評価し、安全な宇宙活動に支障を来すおそれのある微小粒子環境の把握、また、太陽系の形成と進化の一層の理解に貢献するなど、宇宙環境モデルの最新化等に資する。

2.1.2.材料曝露実験

宇宙機の長寿命化、高信頼性確保のために、宇宙環境に曝される部分に使用される機能材料や構造材料の耐宇宙環境性の向上を目的とし、宇宙用材料(熱制御材料、固体潤滑剤等)を宇宙放射線、原子状酸素等の宇宙環境に曝露させ、それら材料の劣化状況およびコンタミによる汚染状況を評価する。

2.2. 高精細度テレビジョンカメラ利用実験(HDTVカメラ実験)

2.2.1.医学実験

宇宙飛行士は精神的・肉体的なストレスが多い特殊な環境で活動を行うため、宇宙ステーションでの長期滞在には医師や、専門家のサポートが必要とされる。本実験では、宇宙飛行時の遠隔医学診断および心理面でのサポートへの実施に向けて、高精細度テレビジョン(HDTV)カメラの高精細な視覚情報の上記サポートでの有効性の評価を行う。

2.2.2.広報応用実験

宇宙ステーション内部の活動および地上からの撮影要求に宇宙飛行士が対応することによる効率的な地球の映像取得実験を行い、ISSにおける映像取得技術を修得すると共に、取得映像の広報活動等への活用と新たな利用形態の検討に資する。

2.2.3.「きぼう」利用多様化パイロットプロジェクト

将来の「きぼう」利用の多様化促進および多様な利用形態に備えた制度検討に資することを目的としたパイロットプロジェクトの一環として公募、選定された「ISS映像を活用したCM制作・実施プロジェクト」を(株)電通と共同研究として実施する。

3. ミッション運用概要

3.1. 打ち上げ(ロシア・プログレス輸送船:5P)

打ち上げ予定日:平成13年8月21日(バイコヌール時刻)
打ち上げ場所:カザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地
NASDAのMPAC&SEEDおよびHDTVカメラシステムが搭載されたロシア・プログレス輸送船(5P)は、ISSの組立フライトとしてロシアが打ち上げる5番目の補給フライトである。

3.2. 回収(ロシア・ソユーズ飛行船)

MPAC&SEED実験の曝露後の試料、HDTVカメラの撮影済みテープはロシア・ソユーズ飛行船にて5回にわけて適宜地上に持ち帰る予定である。
第1回:平成13年10月、撮影済テープの回収
第2回:平成14年5月ごろ、撮影済テープの回収
第3回:1年後、撮影済テープ、曝露実験試料の回収
第4回:2年後、曝露実験試料の回収
第5回:3年後、曝露実験試料の回収
3.2.1.軌道上実験運用の概要

プログレス輸送船(5P)のISSドッキング後、実験装置のSMへの搬入が行われ、引き続きHDTVカメラのセッティングを行う。
医学実験はHDTVカメラのセッティングの後、第1回の実験が行われる。その後約10日ごと約1年間にわたり約420分程度の実験が実施される。広報応用実験は、1年間にわたり適宜地球など約450分の撮影を行う。「きぼう」利用多様化パイロットプロジェクトは、ダウンリンク2回分(20分)を含む計50分の撮影を行う。
MPAC&SEEDは、SMにて保管された後、平成13年10月ごろにEVAによりSM外壁に取り付け、曝露実験が開始される。その後1年ごとにEVAにより曝露試料の回収を行う。

3.2.2.ロシア人宇宙飛行士の担当について
以下のロシア人宇宙飛行士がNASDA宇宙実験を担当する予定である。
#3クルー
Vladimir Nikolaevich Dezhurov
Mikhail Turin
HDTVカメラ実験(医学実験、広報応用実験)、MPAC&SEED取付作業
#4クルー
Yuri Ivanovich Onufrienko
HDTVカメラ実験(広報応用実験の地球映像取得)
#5クルー
Valeri Grigorievich Korzun
Sergei Yevgenyevich Treschev
HDTVカメラ実験(医学実験、広報応用実験)
#6クルー以降
MPAC&SEEDの回収作業

4. 作業実施状況および今後の予定

(1) 平成13年6月22日 実験装置のロシアへの引き渡し
(2) 平成13年6月25日 宇宙開発委員会安全部会への安全審査結果の報告
(3) 平成13年7月28日 ロシア航空宇宙局による実験装置のバイコヌールへの輸送
(4) 平成13年8月 2日
から
平成13年8月 6日
ロシア航空宇宙局による実験装置のプログレス輸送船への収納、プログレス輸送船クローズアウト(実験装置に関する全作業完了)
(5) 平成13年8月21日 実験装置の打上(5P)
(6) 平成13年8月23日 プログレス輸送船のISSへのドッキング
(7) 平成13年8月24日 実験装置のSMへの搬入、セッティング
(8) 平成13年8月25日 第1回医学実験
(9) 平成13年8月26日 第2回医学実験
(10) 平成13年10月16日 EVAによるMPAC&SEEDのSM外壁への取付

なお、添付1にスケジュールの線表を示す。