本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
1. 報告事項
宇宙開発事業団(NASDA)が国際宇宙ステーション(ISS)の日本の実験棟(JEM)の利用多様化促進の一環としてロシアサービスモジュール(SM)を利用して実施するパイロットプロジェクトについて報告する。
2. 経緯
(1) |
宇宙開発委員会宇宙環境利用部会報告(平成12年度)において、JEMの本格的な利用に向けた初期利用フェーズの推進方策として、「軌道上研究所」という位置付けを維持しつつ、科学研究や技術開発以外の利用分野や、民間企業などの利用者負担による利用形態への利用の多様化を段階的に推進することが適当とされた。また、その推進方策の一つとして、NASDAが複数のパイロットプロジェクトを試行し、その結果を評価した上で、順次、本格的な民間利用に移行するものとされた。 |
(2) |
同報告を受け、平成13年度に第1回パイロットプロジェクトを実施することとして、提案公募を3月15日から4月20日にかけて行い、(株)電通の提案による「ISS映像を活用したCM制作実験・実施プロジェクト(以下、「CM制作実験」という。)」を選定した。 |
(3) |
撮影対象物、実施時期等技術的事項について、提案者並びにロシア航空宇宙局と調整を行ってきたところ、この程、実施内容につき合意に至った。 |
3. 第1回パイロットプロジェクトの概要
3.1 CM制作実験の目的と範囲
JEM利用多様化のためのパイロットプロジェクトは、将来のJEM利用の多様化促進および多様な利用形態に備えた制度検討に資することを目的として実施される。
特に第1回パイロットプロジェクトであるCM制作実験は、提案者側が用意する撮影対象物とシナリオ、並びにHDTVカメラを利用して、無重力状態で美しい映像を撮影し、宇宙のリアリティが感じられる広告撮影の技術実験を行う。可能な限り実際の広告制作まで行い、具体的な産業利用例として社会にアピールして産業界での研究開発以外での利用のさきがけを狙うとともに、ISSの公共性を考慮して広く国民の賛同を得られる映像を心がける。
NASDAは、SMを用いて微小粒子捕獲実験および材料曝露実験(MPAC&SEED実験)並びに高精細度テレビジョンカメラ利用実験(HDTVカメラ実験)を実施する計画であり、CM制作実験は、HDTVカメラ実験のサブテーマの一つとして、提案者と共同で実施される。
3.2 ミッション運用概要
- (1) 撮影対象物の打上げ(ロシア・ソユーズ宇宙船)
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打上げ予定日:平成13年10月21日(バイコヌール時刻) |
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打上げ場所:カザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地 |
- (2) 撮影済みテープ等の回収(ロシア・ソユーズ宇宙船)
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回収予定日:平成13年10月31日(バイコヌール時刻) |
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CM制作実験の撮影済みテープは、撮影対象物の一部とともにロシア・ソユーズ宇宙船にて地上に持ち帰る予定。 |
- (3) 軌道上実験運用の概要
- ソユーズ宇宙船のISSドッキング後、撮影対象物がSMへ搬入される。その後、タイムラインに従ってHDTVカメラがセッティングされた後、撮影シナリオに沿ってCM制作実験が行われる。HDTVテープの撮影時間は、ダウンリンク2回分(20分)を含む計50分。宇宙飛行士の活動風景や撮影対象物が浮遊する様子、宇宙飛行士が撮影対象物を扱うシーンなどが撮影される。シナリオは、プライオリティの高い順にカットが並べられており、最もプライオリティの高いカットについてはダウンリンクにより内容を地上で確認の上、要すれば撮り直すこととしている。
- (4) ロシア人宇宙飛行士の担当について
- ソユーズ宇宙船のロシア人宇宙飛行士2名がCM制作実験を担当する予定である。
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ビクター・アファナシェフ船長(Viktor AFANASIEV) |
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コンスタンチン・コゼィエフ(フライトエンジニア)(Konstantin KOZEEV) |
- (5) 実施評価について
- 今後のJEM利用拡大に資するため、CM放映によるJEM利用の可能性に対する社会の反応や利用促進上の効果、制度検討に供すべく新たに得た知見なども含めて、実施評価を(株)電通とNASDAが共同で行う予定。
4. 作業実施状況および今後の予定
(1) |
平成13年9月24〜28日 |
搭乗員訓練、打上げ品のロシアへの引き渡し |
(2) |
平成13年10月2日 |
ロシア側による打上げ品の射場への輸送 |
(3) |
平成13年10月17日 |
宇宙開発委員会報告 |
(4) |
平成13年10月21日 |
ソユーズ(TM-33)の打上げ |
(5) |
平成13年10月23日 |
ソユーズのISSへのドッキング |
(6) |
平成13年10月26日、27日 |
CM制作実験実施 |
(7) |
平成13年10月31日 |
ソユーズ(TM-32)の帰還 |
(8) |
平成13年11月12日 |
撮影済みテープ及び回収品のロシアからの受け取り |
(9) |
平成14年はじめ頃 |
CM放映 |
(10) |
平成14年3月頃 |
共同研究成果報告 |