プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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第3回日仏宇宙協力シンポジウムの開催結果について

平成13年6月13日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

平成13年5月29日から6月1日にかけて、フランス国トゥールーズにおいて第3回日仏宇宙協力シンポジウム(宇宙開発事業団(NASDA)/仏国立宇宙研究センター(CNES)共催)を開催したので、結果概要について報告する。

1. 日仏宇宙協力シンポジウムの経緯

(1) ベンスーサンCNES総裁と内田NASDA理事長(当時)間の「宇宙開発計画分野における長期協力の準備に関する機関間取り決め」(平成8年11月)に基づき第1回を平成9年5月にパリ市にて開催した。
(2) 平成11年2月、第2回を東京で開催した。

2. 開催目的と成果

日仏の宇宙開発分野の専門家間にて情報交換と活発な議論を行い、具体的な協力の可能性を見いだすことを目的とする。
過去2回のシンポジウム及びNASDA/CNES間に設置されたワーキンググループ(WG)での継続的議論により、今回、宇宙輸送分野においては高速飛行実証フェーズ2に関する了解覚書について合意に達し、CNES総裁及びNASDA理事長との間で署名を行った。(独立行政法人航空宇宙技術研究所(NAL)理事長は別途署名)
また、今回、地球観測/災害監視分科会及び輸送系分科会に加え、通信、宇宙ステーション利用及び宇宙科学の3つの分科会を新たに開催した。
宇宙関連機関・企業の活動紹介のための展示を行った。

3. 開催日時・場所等

日時: 平成13年5月29日(火)、30日(水)、31日(木)及び6月1日(金)(5月29日と6月1日は終日テクニカルツアー)
場所: 仏国 トゥールーズ市 ディアゴラ・コンファレンスセンター
プログラム: 別紙1のとおり

4. 開催結果

(1) 参加者: フランス研究省 コスツ技術局長
外務省 在仏大使館 板倉一等書記官
文部科学省 研究開発局宇宙政策課 塩満調査国際室長
宇宙科学研究所 松本企画調整主幹
経済産業省 製造産業局航空機武器宇宙産業課
宇宙産業室 佐野宇宙企画係長
民間企業関係者
主催側: CNESベンスーサン総裁、ブラシェ長官 他
NASDA山之内理事長 他
計 : 約120人(内、仏側約70人、日本側約50人)
 
(2) 結果概要:
日仏双方の活動と今後の相互協力についての概要が全体会合で紹介され、より詳細な議論が地球観測/災害監視分科会、輸送系分科会、通信、宇宙ステーション利用及び宇宙科学の5つの分科会にて行われた。
分科会の実施状況は以下の通り。(別紙2に概要を示す。)
地球観測/災害監視分野においては、ADEN(ALOS欧州データノード)計画の欧州における実施体制をさらに充実させることが確認された。また、災害に関するチャーター(憲章)にNASDAが参加することを視野に入れ、検討を進めることが合意された。
宇宙輸送系分野においては、高速飛行実証及び将来計画の検討状況について報告。
通信分野においては、通信ワーキンググループの設置に合意し、通信衛星の利用実験として、災害監視・医療・教育等の実験に関する検討を共同して進めていくことが合意された。
宇宙ステーション利用及び宇宙科学分野については、相互の計画の紹介を行い、協力の可能性について議論を行った。
また、今回、日仏の産業界からの参加を得てラウンドテーブルを開催し、日仏間の産業界レベルでの協力の現状、宇宙機関への期待などについて活発な意見交換がなされた(別紙3参照)。
次回シンポジウムについては日本にて開催することで合意した。



第3回 日仏宇宙協力シンポジウムプログラム


第1日目(5月30日 水曜日)

開会式
開会挨拶 ベンスーサンCNES総裁
山之内NASDA理事長
日仏における宇宙活動 コスツ仏研究省技術局長
(プレゼンテーション) 塩満文部科学省調査国際室長

地球観測/自然災害監視分野での日仏協力
宇宙輸送分野での日仏協力
高速飛行実証フェーズ2に関する了解覚書への署名

各分科会
●地球観測/自然災害監視分野での協力
    地球観測データ利用
      ・陸域観測技術衛星(ALOS)関連協力についての意見交換
将来協力
・将来の地球観測計画についての意見交換
●輸送系
    再使用型輸送機
      ・NASDA/NALによる高速飛行実証フェーズ2計画に関する発表と意見交換
・CNESの再使用型輸送機に関する実験機計画の発表と意見交換
●通信
・通信WGの設置合意
・衛星プロジェクトのステイタスの報告
将来衛星
・技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)部分アンテナ再実験計画の説明
・超高速インターネット衛星の紹介
・将来衛星協力の可能性の検討
衛星利用実験
          ・共同衛星利用実験の重点協力分野・項目の洗い出し
●宇宙ステーション利用
      ・NASDA宇宙ステーション利用計画の紹介
・CNES宇宙ステーション利用計画の紹介
・ライフサイエンス実験国際公募研究選定テーマの協力についての意見交換
・ベッドレスト実験の協力に関する意見交換
・その他(仏人宇宙飛行士ISS搭乗時のNASDAハイビジョンカメラの利用協力等)
●宇宙科学分科会
      ・宇宙科学研究所における科学衛星計画の現状と将来計画についての紹介
・CNESにおける宇宙科学プログラムの紹介
・フランスの火星探査計画の紹介と日本との協力の可能性についての意見交換

第2日目(5月31日 木曜日)

各分科会(引き続き)
ラウンドテーブル「産業界の協力」
閉会式
閉会挨拶    ブラシェ長官
山之内理事長


分科会の実施状況


地球観測・災害監視分科会

1. 地球観測データ利用セッション

  • ALOSとその応用
  • ALOSデータの欧州・アフリカ地域における配信設備(ADEN)については、地球観測における宇宙システム利用を促進する上で非常に有用であり、商業利用も展望に入れた利用運用のスキームを引き継ぎ実務者レベルで調整を進めることを確認した。
  • 干渉カートホイール
  • ALOSと同期して観測するCNESの小型衛星群(干渉カートホイール)計画については、より高い精度の陸域立体地図の作成が可能となり、災害低減等のためのデータベースの構築に貢献すると確認された。
  • 干渉カートホイール・システムの更に進んだフェーズの検討のための情報の交換について合意した。
  • 災害監視チャーター
  • CNESの推進している災害時の衛星データの提供に係る宇宙機関間の協力活動の枠組みを定める災害監視チャーターについては、NASDAも参加することを視野に入れ、引き続き検討を進めることが確認された。

2. 将来協力セッション

  • 地震・火山活動の観測及び地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)データの利用並びに環境観測技術衛星(ADEOS-II)及び地球環境変動観測ミッション(GCOM)等の将来ミッションについて議論され、次の事項が合意された。
  • 全球炭素循環、地震に起因する電磁波、火山監視、エアロゾル・成層圏化学の分野における研究について合同ワークショップや研究者交流を通じてデータや経験を共有する。
  • 宇宙システム・地上設備の開発・運用に係る協力について検討する。
  • 災害マネジメント及び環境監視の分野で国際的枠組みに即した二国間協力に取り組む。
  • 共同災害監視・マネジメント実験(特にi-Spaceを用いたもの)の可能性を検討する。

宇宙輸送分科会

  • 高速飛行実証(HSFD)プログラム及び双方の将来型輸送機の技術開発プログラムの現状について紹介。
  • 仏企業より、伸展ノズルの過渡現象の解析協力について提案があり、NASDAが持ち帰り検討。

通信分科会

  • 日仏双方からそれぞれの通信衛星プログラム及びその応用について紹介。特にフランス側からは、次のようなプログラム等の紹介があった。
  • 通信技術衛星(STENTOR)の打上げ(2001年末)
  • 大型静止衛星開発を次世代通信技術開発計画(TCS21プログラム)にて実施
  • 測位衛星システム「ガリレオ」の研究開発(2001年末に最終決定)
  • 医療・教育等の分野における通信衛星利用の促進
  • 二国間の協力候補アイテムとして次の項目を重点的に検討していくこととなった。
  • 地球観測衛星・通信衛星の融合利用によるリスクマネジメントと災害監視(地球観測/災害監視WGと連携)
  • IT社会への貢献とデジタルディバイドの解消として次の事項
     1. ブロードバンド通信技術とその利用
     2. 測位技術とその利用
     3. 東南アジア・太平洋地域における遠隔医療実験
     4. その他の各種テレサービス利用の促進
  • その他
  • 独立行政法人通信総合研究所(CRL)も協力に参画。
  • 協力内容についての詳細な議論をWGとして本年秋に日本でCNES側と行う予定。

宇宙ステーション利用分科会

 次のような分野において、NASDA及びCNESの宇宙ステーション利用計画を相互に披露し、協力の可能性について議論した。

  • 基礎物理学分野
  • ACES (Atomic Clock Ensemble in Space)やT2L2 (Time Transfer by Laser Link)について紹介・議論。科学的・技術的事項に関する会合を今年中に日本で実施することが提案された。
  • 生命科学分野
  • 長期ベッドレスト及び国際宇宙ステーション生命科学ワーキンググループ(ISLSWG)の枠組みにおける小動物実験での協力がすでに日仏間で行われているが、ISSのセントリフュージモジュールを用いた重力生物学研究について今後検討することとされた。
  • その他
  • ハイビジョンカメラ利用やペイロード運用について引き続き議論していくこととなった。

宇宙科学分科会

 宇宙研および CNES から宇宙科学ミッションの現状および将来計画が紹介され、相互の理解を深めた。具体的な協力の可能性としては以下のような内容が議論された。

  • フランスの火星探査ミッションへの宇宙研の協力
     CNES がNASAと協力して進めている火星探査ミッション Premier (2007年に打ち上げ)の中のオプション計画・フォボスサンプルリターン計画への宇宙研の協力を打診された。宇宙研としては時期的に他ミッションの関係から十分な対応はできないが、MUSES-Cで開発されたサンプラー技術等の提供で協力することは可能である旨伝えた。 オプション計画の採択は本年6月半ばの予定であり、その決定を待って具体的な議論を始めることとなった。
  • 日本の天文衛星へのフランスの協力
     フランス側は宇宙研が計画している天文衛星計画に多大な興味を示し、フランスの科学者にその内容を伝え、協力の可能性を検討することになった。


産業界ラウンドテーブルの状況


1. 出席者

(日本側パネリスト)IHIエアロスペース木内部長、石川島播磨重工業?近藤部長、日本電気?稲垣事業部長、三菱重工?本田技術顧問、三菱電機?角市部長
(仏側パネリスト)アストリウム社Maury氏、アリアンスペース社Albrecht氏、アルカテル社Tarel氏、スターセム社Weiss氏、スネクマ社Broquere氏、EADS社Duret氏
(コーディネータ)プラタールCNES国際部長、藤田NASDA国際部長

2.概要

コーディネータがパネリストに質問し、パネリストが順に応答する形で議事が進められた。

(1)コーディネータからの主要な質問:

  • 日仏宇宙協力の進展をどうみているか?
  • 新しい協力分野としてはどのようなものに興味あるか?共同研究分野はどうか?
  • 日仏の産業界同志の協力をさらに進めるための方策は
  • NASDA/CNESの合同ワーキンググループの活動にもっと関与したいか?次回の日仏シンポジウムにも参加したいか?

(2)企業からの主要な回答:

  • 商業市場がまだ小さいので、協力の進展は宇宙機関間の協力に依存。両国の宇宙機関がプログラムをまず創出し、その中で産業界どうしが協力し合っていくというのが望ましい。研究については事業化の見通しが立たないと日仏企業間で協力して行うのは難しい。(仏企業)
  • 両国の産業界が有している設備やノウハウを相互に提供しあえるとコスト・時間の節約ができてよいが、安全保障上の課題もあるので簡単には実現できない。こうした課題に政府には取り組んでほしい。(日企業)
  • 災害監視をグローバルなイニシアチブとして日本から始めてはどうか。そのようなイニシアチブの下で産業界が協力していくことが可能だろう。(仏企業)
  • NASDA/CNESの合同ワーキンググループの活動にもっと関与し、具体的な日仏協力の検討作業に参加したい。次回のシンポジウムにもぜひ参加したいし、産業界からの参加者がさらに増えることを望む。(日・仏企業)