宇宙開発事業団
以下のとおり第4回宇宙開発事業団改革推進委員会が開催されました。
平成13年1月24日(水) 9:30〜12:00
宇宙開発事業団 本社第1〜4会議室
久保田委員長、生駒委員、大橋委員、蛇川委員、土居委員、鳥井委員、中原委員、馬場委員、畚野委員
(1) | H-IIAロケットの開発状況 |
(2) | 品質保証の強化に対する取り組み(その3) -H-II及びH-IIAロケットの事故・不具合の背景要因分析- |
(3) | 企業との役割・責任関係の見直し |
(4) | アクションプランの階層別及び期間別整理(続) |
1. 日時 平成12年11月29日(水) 10時00分〜12時30分 2. 場所 宇宙開発事業団 筑波宇宙センター宇宙実験棟大会議室1 3. 議題
4. 配付資料
5.出席者
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第3回の宇宙開発事業団改革推進委員会を開始したいと思います。
まず宇宙開発事業団の山之内理事長に挨拶をお願いしまして、それから議事に入りたいと思います。
本日は、第3回宇宙開発事業団改革推進委員会に、遠路はるばる筑波までおいでいただきましてありがとうございます。宇宙開発事業団の一番中心になる活動、特に衛星、宇宙環境利用の主力部隊はほとんどこの筑波におりますので、ここで会議を持っていただくと同時に、お時間が許されれば、是非主要な施設を見ていただければ大変ありがたいと思います。また、省庁再編の一環といたしまして、2年後の平成14年中ぐらいには宇宙開発事業団全体がここに来ることも予定をしておりますので、よろしくご承知おきをいただきたいと思います。
これまでの委員会でいろいろと貴重なご意見を賜り、前回は品質保証の問題につきまして大変突っ込んだご議論を賜り、また蛇川委員からは貴重な資料をお送りいただきまして、厚く御礼を申し上げます。従って本日はまずその問題を中心にご議論を賜って、議題にあります衛星、あるいは技術開発の問題についてご議論を賜ればありがたいと思います。よろしくお願いをいたしたいと思います。
それでは委員の紹介をしたいと思います。立花委員でございますが、立花委員を知らない方はおられないということでよろしいですか。事業団側では、副理事長が替わられましたので、ご紹介したいと思います。
10月25日付で副理事長を拝命いたしました石井でございます。これまで総務担当理事をしておりましたが、五代前副理事長が任期満了になりましたので、その後を拝命いたしました石井でございます。よろしくお願いします。
それから新理事になられた吉川理事もこの委員会で理事としては初めてですので、よろしくお願いいたします。
前理事の後任として理事になりました吉川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今日の議題は4つございます。1番目が品質保証の強化に対する取り組みで、これは前回の続きでございます。2番目が衛星の開発強化の取り組み状況の報告でございます。3番目が技術基盤の強化に対する取り組み。4番目がアクションプランの階層別及び期間別整理ということでございます。
第1回、第2回で、「委員会の進め方」としまして、この委員会の仕事、ミッションは何かという議論をしていただきました。業務改革と経営改革という2つの面がありますが、業務改革はいわば事業団から依頼されたことについて助言を行い、同時に経営についても助言を行う、このような切り分けをはっきりさせてはどうかというご意見もございました。そうしますと、特別会合で提言されたことに対するアクションと、それからこの委員会で出て来たことについての議論と、このような分け方になるかと思います。
そうしますと、議題の1番目と3番目、具体的にいいますと品質保証の強化と技術基盤の強化は特別会合で提言されていることで、これに対して事業団がどうアクションをとっているかということを説明して、ご議論をいただきます。
4番目は、アクションプランの階層別及び期間別整理で、第1回目の委員会のときに、委員会のほうから出たことで、中原委員と生駒委員からのご提案だったと記憶しております。つまり、アクションを行う場合に、ただやみくもにやるのではなくて、階層別にしたらどうか、期間別に整理したらどうかということです。それについての事業団の考え方を聞いて、助言を行います。
2番目の衛星の開発強化の取り組みというのは、トピックでございます。現在の業務がどうなっているかということです。いわば業務改革に属することかと思いますが、これについて助言をしていただきます。
こういう4つの議題で、それぞれ意味が違っているかと思います。私が最初に申しましたように、切り口が幾つかございますので、そういう認識でご議論いただければ結構かと思います。
それでは1番目の議題から入りたいと思います。今日は12時半には終わりますので、できるだけ効率的にやりたいと思っております。
先ほど理事長がおっしゃられたように、筑波は技術研究本部及び衛星システム本部の本拠地です。3番目の議題はまさに技術基盤の強化ですので、筑波で会議を行いまして、同時に設備等、研究状況も見ていただこうと思います。
それでは1番目の品質保証の強化に対する取り組みから入りたいと思います。これは、前回、大体概要をお話いただきましたが、さらに突っ込んだ議論をしたいということでございます。三浦理事からご説明をお願いします。
資料に沿ってご説明させていただきます。
2ページですが、ここで述べようとしていることは、宇宙開発における品質保証の考え方、実際にNASDAはその品質保証をこれからどのようにして強化していくか、一方、相手側である企業での品質保証強化をどうするか、また、それからこの頃トラブルがちょっと出ていますので、これについてのご説明をしたいと思います。
3ページです。いままでのロケット、人工衛星の設計、製造技術に関する品質保証の経緯です。まず、事業団を30年ほど前に設立したときに、NASAからすべての開発手法を導入して、予備設計、基本設計、詳細設計と、それぞれを審査をしながら次のフェーズに進めていく、フェーズド・プランニングの方法、信頼性管理の手法、品質管理の手法、こういうものを導入して、それを日本語に直して一生懸命やってまいりました。
ここでの潜在的な問題は、ある程度の成功体験を続けたものですから、非常に形骸化してしまった。例えば衛星をつくるときには、1立方フィートにゴミが10万個以下であるようなクリーンルームで製造しているわけですが、何で10万でいいのか、それが何で1万でなければだめなのか、1,000でなくてもいいのか、あるいは100万でもいいのではないかと、それぞれの要求に応じて出てきたということを皆忘れてしまって、単に、「あ、ここは10万と書いてあるから10万でいい。」というようなやり方になってしまった。もともとの要求の大本に立ち返って、なぜこうしなければならないかということに対する意識が薄れて、管理活動が非常に形骸化してしまった。
それから基礎的なデータが非常に重要なのだということについて、たくさん導入したせいか、それに対する認識が不足してしまったということが潜在的な問題として出て来ました。
それから最後のところに書いてある品質実績への過信。成功体験を続けたがゆえに自信過剰になってしまった。従って、いろいろなところを省略することを一生懸命考え出したということです。
その下の段の、環境の変化ということですが、いままでは技術導入だったのが、すべてを自主的な技術開発を行うというフロントランナーになったときに、それが露呈してしまったということです。
一方、いま国際競争が非常に強く求められる時代ですので、その実力とは少し離れたところで背伸びをしなければならなくなってしまった。一方、業務範囲はどんどん広がっていった。それから例えば重さ50?、100?の衛星をやっていた事業団が、いまや3.8トンというような衛星をつくらなければならない。搭載する機器も、1つの搭載機だったのが、10個も15個も載るというような時代になった。
それから国際競争力の確保。それから予算が非常に厳しい状況ですので、コストも削減しなければならないということで、最初はBBM、EM、PM、FMという開発方式でやっておりましたけれども、現在は主流がEM、PFM方式になっております。さらにMDSみたいな新しいプロジェクトでは、エンジニアリングモデルを少し改修してでも打上げてしまおうということも考えなければならない時代になってきた。そういうことで、品質保証上のいろいろな問題が顕在化したということです。
それは、設計マネジメントの有効性が低下するとか、人手不足でプロジェクトチーム制度が未成熟になるとか、要求が非常に曖昧になってしまっている。あるいはエンジンでは、例えばインコネルの新しい材料についての設計データがエンジンの開発過程では非常に不足していることが明らかになりました。そんな問題がいろいろ出て来ました。
今これに対応して、プロジェクトチームを強化しています。例えば現在はH-IIAに総力を結集するようなやり方をしている、要求仕様をなるべく明確化して、設計、製造、検査の段階で常に数値でもって検査ができるようなことを考える、電子データベースを使って情報の共有化を図る、信頼性や品質管理に関する標準類をどんどん最新のものに見直していくなどです。
ここに入れましたのは、リスクマネジメント手法の検討ということで、これは現在制定の準備中です。我々として一番重視するのは、リスク管理が非常に重要であるためです。
射場でのトラブルがいろいろあり、ヒューマンファクタが非常に大きいことがわかっていますので、これについてはヒューマンファクタ分析手法を取り入れ、制定し、メーカー側にも、これをどういうふうにやったかということをすべて提出することを義務づけることを始めました。
それから基盤技術、データの強化をいま図りつつあります。
なお、ISO9001による品質システムの構築も今進んでおります。
4ページです。具体的にはプロジェクトチーム制度の強化ということで、プロジェクトマネージャーに責任を十分持たせるような制度に変えつつあります。ところが、プロジェクトマネージャーだけではできませんし、かつプロジェクトに当てられるべき人数にも制限がありますので、いろいろな部門から支援するという制度を充実させました。例えば技術研究本部からいろいろなサブシステム、あるいはいろいろな設計手法についての支援を得るとか、あるいはプロジェクトの評価チームを別に独立に設けまして、プロジェクトを行っていくことについて評価をしてもらう。そういう部門横断的支援体制をつくっております。
一方、製造企業においても、設計部門と製造部門と検査部門が一体となって支援していこうという活動を指導し、またそれができつつあります。
それから品証部門についても、現在の人員ではなかなかできない面がありますので、経験豊かな民間の方、あるいはNASDAのOBを活用して、招聘開発部員として、工場に駐在してもらうとか、内部での例えば検査方法の開発の研究などをしてもらうことを始めました。
この場合には、それぞれ、要求専門能力の明確化ということで、あなたはここをやってもらいますと、ハンダ付けとか、ろう付けの問題とか、あるいは設計とか、部門を明確にして意見その他を我々に言っていただくということを考えております。
また独立評価チームのサポート、研究部門の支援ということをやっております。
それからリスク管理が非常に重要ですので、重要リスクを確実に識別して、その対策を確実に立てていくことをいま重要にしてまして、内部、外部の組織を有効に活用して、系統的にリスク識別をしていきます。そのために、先ほど申しましたリスクマネジメントハンドブックを作るべく、いま準備中です。
このリスクを常にプロジェクトの内部だけで抱え込まないように、重要リスクに対する経営層の対処、判断ができるように、例えば理事長に対する報告の中で、それぞれのプロジェクト毎にリスク管理をどうしているかということを報告しております。
それから外部の専門家との協調を一層強化していこうと。そんなことをいま重要リスクの識別と対策ということで活発化をしているところです。
NASDAの指示によりますが、製造部門を請負っているメーカーでのやり方を主として、設計・製造・検査部門間で情報、コミュニケーションを良くして、単に設計は設計するだけ、製造は製造するだけ、検査は検査ということではなくて、どういう問題点があって、どういうふうにフィードバックしていくとかいうことについて、例えば製造工程をもう少し変えたらどうなるかということについても、設計まで遡って考えるようにするという動きをしてもらっております。
我々として指示したのは、要点のところにあるように、設計/工程FMEA(故障モードと影響解析)を必ず報告させるとか、変更審査を厳重にするとか、それから部品、材料についても、識別されたものですが、きちんと審査をするとか、契約に基づいて工程FMEAを必ずやることとか、そういうふうなことを契約の文章の中に入れ込んでおります。
それから背後要因分析というのも非常に重要で、単にいままでは末端の作業現場でなぜ間違ったかということを主に検討していましたが、そうではなく、なぜそういう間違いが起こるような環境になったのかとか、あるいは大本として、そういう間違いをせざるを得ないような環境に落ちていったのではないか、そういうふうにしたのはなぜかと、「なぜ」を3段階、4段階続ければ本当の原因が明らかになるということがわかっているものですから、こういう背後要因分析もメーカー側にやらせることを指示しております。我々としても、ヒューマンファクタ分析のハンドブックを作りまして、それをメーカーの方にも渡して、こういう方法でやってくださいということを指示しております。
それから品質保証データの有効活用。これはなるべく数値によって品質を保証していこうというためで、そのためのデータ入力、評価の仕組みをつくって、現在のITを活用したような方式に変えていくことをやっております。
それから重要品質については、特に特性値を十分に管理することを指示しております。
それから品質システムの構築ということでは、ISO9000、第三者認証を取ることをやっておりまして、一部取り始めております。
5ページは、考え方で補足になります。全般的に宇宙開発の特徴として小型、軽量化が強く求められる。非常に特殊な条件である。かつ、できたものはほとんど修理もできない、保全もできない。また、ノウハウが蓄積されるような大量生産ではなく、少量生産どころか、我々の場合は1回限りというものがほとんどあるということで、非常に厳しい現実があります。
我々はそれをどういうふうに進めているかということで、開発の進め方ですが、総合システム仕様書などの仕様をNASDAのほうで作成して、契約の相手方のメーカーで設計審査をしてもらう。そこに我々が監督員として参加して設計をよく見ていく。あるいは実際に実機で確認するということで、BBM、EM、PFMを作って、その試験データも見て、設計どおりになっているかということの妥当性の確認をしております。
それからフライト品については、実環境に十分耐えるということを試験検査で検証する。これはできる限り試験検査で検証するわけですが、そういうことができないものについては、シミュレーションを行うとか、解析でやるようにしております。
6ページです。概論で申しましたように、NASAから信頼性工学、品質管理の方法を取り入れて、順次その内容を見直してやってきたわけですが、現在はその信頼性管理については、特に重要品質特性の識別、ワーストケース解析をさらに重要視して、これらを徹底的に行うようにメーカーには指示をしております。
それから品質管理については、特殊工程についていろいろ不具合が起こっておりますので、特殊工程の管理を厳重にやることを特に注目しております。
7ページです。プロジェクトチームはそれについてどのような活動をしているかということでは、部門横断的な支援体制を充実する必要があるだろうということで、独立評価チームを、例えばH-IIA、あるいはETS-VIIIなどにつくりまして、それから宇宙ステーションについても現在準備中ですが、プロジェクトチーム部門とは独立の評価チームを作って問題点がないかどうかの評価をしていただく。
それから品質保証については、それぞれの部門毎の技術で卓越した人に招聘開発部員として来ていただいて、工場駐在を含めて見ていただいております。
こういうことをやりますと、技術仕様書の内容を充実させることができる。特に今まで仕様で明確に数値で規定すべきものが規定されていなかったというものも、かなりありますので、こういう要求事項を明確にしていくことをやっております。
設計検証、設計の妥当性確認について、どういう方法でそれを確認するかということが非常に重要ですので、その検証技術の研究も行っております。例えばレントゲン写真をどのように見ていくかということについて、できるだけの定量化を検討しております。
それから関連として、例えば監督検査システムの中で、独立評価チームとか、招聘開発部員をどのように位置づけするかという点については、まだ検討するところもあります。現在、メーカーとの関係では、監督員というのが正式な契約上の位置付けですが、他に独立評価チームとか、招聘開発部員がそれぞれ契約上どういうふうに位置付けられるかについては、現在検討中です。それから監督員についても、資格を持った監督員という形にしていくべく、必要資格をどのようにして作っていくかということを検討しているところです。それから民間の会社によって、部品の検査をする能力を持っているところがたくさん出てきましたので、そういう会社を活用することも考えております。
8ページです。NASDAの品質保証強化の大きな点は、重要リスクの識別と対策ということで、開発の初期からリスクを十分認識して、これをトレースしていくことをやっておりまして、専門家の知識経験を活用して、リスクを間違いなく識別することをやっております。それについては、契約の相手方にも、必ずリスクの識別をして、それについてどう対策するかを報告させております。
NASDA内部でも、プロジェクトのリスク管理を重視して、場合によっては経営リソースの適正配分とか、その判断が担当レベルの判断と経営層の判断に乖離がないように情報交換を密にしております。
何度も言いますが、リスクマネジメントハンドブックの活用ということで、いま制定の準備中です。
9ページです。新しく変わったことについて少しご説明します。右側に先ほど申しました衛星システム本部とか、ロケットの開発をする輸送システム本部とか、他の本部もありますが、本部長のもとにプロジェクトチームがあって、それぞれH-IIAとか、ETS-VIIIとか、ADEOS-IIというのを開発しておりますが、それに対して、本部の中にプロジェクトから独立して品質保証室というのを設けまして、ここで独立に品質保証について業務を行う。その他に、何度も言いますが、招聘開発部員を安全・信頼性管理部のもとに呼んで、この人たちに工場に駐在してもらうとか、特殊工程などの技術の研究をしていただくとか、そういうふうに独立の評価を強める手法を現在とっております。
10ページで、企業の品質保証強化です。潜在欠陥をなるべく早期に除去するために、例えば、工程FMEAというのがありまして、非常に重要な工程でどういう不具合が起こりうるか、それがどういうふうになるかということについて、必ず工程FMEAを行いなさいという契約になっておりまして、そういうことを重視しております。
背後要因分析も契約で義務づけまして、背後要因の分析を必ず報告させることにしております。
品質保証データの有効活用ですが、これはITを活用して、いろいろなところで情報が十分流通するようにということを考えております。
11ページは、最近のトラブルです。まず最初はLE-7Aエンジン領収燃焼試験において、軸受のところにあるメッキ部がはがれ、流れていって、ベアリングのほうにも一部異物として入っていたということです。これは加工寸法を調整するために行ったメッキがはがれて、流れ込んだということです。
その原因については、不良は検査で観察されて、「スコーク」という不具合に関する報告も出ていたわけですが、この部所はメッキがされなくてもよいというオプショナルな部位のため、検査を合格させ、起こっています。従って、こういう設計手法でよかったのかどうか、それからそのときにどこにも報告しないで済ませてしまったのが本当によかったのかどうかをよく検討した結果、事前評価とか、適正化を図るとか、関係企業にも周知して、こういうことがないようにという対策をとっております。
12ページです。LE-7Aエンジンの領収試験において、タンクを加圧するために細いパイプが出ていますが、エンジンも動きますのでベローズに可動的な部分があります。このベローズに疲労破断があったことが試験後わかりました。これについては、ベローズの中を液体酸素が通っているわけですが、ベローズは0.2?ぐらいの薄いものですから、ここが振動を起こして疲労をしたということがわかりました。これは、流体が流れることによりベローズの曲がっているところの裏側に渦ができて振動を起こすということです。
これについては、再現性試験をした結果、こういう振動が起こることがわかりましたので、新しい製造方法で三層構造になっているものに換えれば全然問題がないことがわかりましたので、そういうことをしております。
これについても、それまでは何でもなかったのが、製造中に金型を変更して以降、こういうことが起こっていることがわかったものですから、こういう製造工程の変更について設計部門にちゃんと報告させて、検討することが必要だということがわかってきましたので、こういうことも指示しております。
13ページは、LE-7Aエンジンのノズルスカートのところにある細い冷却管ですが、こちらのほうが確か0.5?の薄いチューブでできていますが、そこのろう付け部分からろう剤が流れ込んでいるわけで、母材の0.5?の部分の半分ぐらいまで侵食が起こっているのが見つかりました。これについては、確実な原因まではまだわかっておりませんが、ある程度は想像はついておりまして、現在、詳細な原因を究明中です。この結果を待って、今後どうするかを検討することになっております。
以上、品質強化の取り組みについて、前回に続いて少し補足させていただきました。
いまのご説明につきまして、ご質問とか、ご意見がございましたら。
NASDAの側から見て非常によく検討していらっしゃる面もあるかと思いますが、実際に物を作って、その作ったものがいいかどうかということをチェックして、完全なものを作るという立場から見て、2,3コメント申し上げたいと思います。
1つ目は、NASDAの立場ですと、スペックを完全なものにして、それで指示をなるべく完全なものにするという立場かと思います。しかし、そのとおり完全にやればいいということを決めるのは、いくら努力をしても、難しいと思います。そうしますと、その抜けたところは、できたものをチェックするシステムつまり、検査の標準とか、そのやり方とか、そこのところにもうちょっと力を入れる必要があるのではないかというのが1点あります。
作るほうについては、メーカーのほうでもうちょっと自主的な管理というか、例えば現場の小集団活動とか、あるいは改善提案とか、そういうことによって技術的な指示の不完全なところを補うというのが普通行われているわけです。そのためには、現場の人の教育、品質に関する意識の高揚とか、モラルも含めての教育体系がどうなっているかということがキーポイントになると思います。そういう報告がまだちょっと少ないように思います。製造メーカー側での対応についての報告です。
どちらかというとNASDAからのは性悪説に基づいたトップダウンというような態度ですが、実際のものはそれだけではなかなかいいものはできない。そうするとメーカーのほうから性善説に基づいたボトムアップというアクションがいっぱいあって、それがうまくバランスがとれて初めて本当にいいものができるというのが製造業の常だと思います。
そういう観点から、メーカー側のボトムアップ、そして提案を、どういうふうな体系でなされているのかということをトレースしたほうがいいのではないかと思います。
これだけを拝見しますと、NASDAの側からいろいろ検討していらっしゃいますが、メーカー側からのレスポンスの状況がもう一つよくわからない。あるいは不十分かもしれないという懸念があります。
NASDAの側からのアクションとしては、こういうものを作れとか、こういうふうにしろという他に、とにかくできてきたものをどうやってチェックするかという意味の品質管理つまり検査標準のようなものをもう少し重点的に取り組まれたほうがいいのではないかと思います。
中原委員、いまのは回答が必要ということではないですね。
本当は、対策をとって、後でまた報告していただいたら、もっといいと思います。
7ページの、プロジェクトチームを設けて、部門横断的に独立評価チームでチェックされることは大変結構だと思いますが、この内容について質問を含めた意見を申し上げたいと思います。
大きく分けると、設計関連と、製造関連と、購入品だけではなくて他のところも全部含めた検査関連と、3つに分けられると思います。
ここ全般に深い知識を持っておられる方というのは私の知っている限りはほとんどいない。ですから専門評価チームというのはある程度細かく分けてやられる必要があると思いますので、それがどうなっているかという質問も含めての意見表示です。
また特に設計については、我々がいろいろ経験している中でも、ある程度でき上がってから評価してくださいというのは、実際にはワークしないので、設計フェーズの中で幾つか分けて、かなり初期段階で基本的なものを見ることをしないと、時間的にもフィードバックがきかないということにもなります。従って、そういうところにも考え及んで、評価の段階を細かく規定しておく必要があると思います。
その辺の全体がどういうふうになっているか、あるいはこれからをどうお考えになっているか、質問を含めて意見表明したいと思います。
私からは、独立評価チームのほうは、専門を分けまして、例えば電子部品について専門家を集めて、H-IIAで使っている電子部品はどうか、その使い方はどうなっているかということを評価してもらうとか、構造系について評価してもらうとか、あるいはアビオニクスについてのプロジェクトは全然別の人ですが、そういう人が集まって、H-IIAのアビオニクスはどうなっているかということで評価してもらうというふうに、部門横断というのはそういう意味で、他の部門から専門家を集めて独立に評価するようなやり方をしております。
ただ、これは設計の問題についてやるのが主でありまして、我々としても製造部門についてそれほど意見を持っている人はそうはいませんので、製造については、先ほど申しましたように、メーカーもしくはNASDAのOBの人を招聘して、メーカーの工場に駐在してもらって、意見交換をしてもらって、製造上の問題、品質上の問題について意見をいただくようなやり方をとっております。
H-IIAのほうについては、渡辺のほうから。
H-IIAロケットの開発担当の、マネージャーをしております渡辺でございます。H-IIAロケットの開発のほうでも、NASDAで経験を積んだ人、それから企業で経験を積んだ人、これは設計の分野もありますし、製造現場の方、また研究所等で経験を積まれた方等もメンバーですが、招聘開発部員、あるいは現役の研究をされている方を、臨時に特定の目的のために来ていただいたり、そういうことも活用して充実を図っておりますし、これからもそういう工夫をしなければいけないと考えております。
追加ですが、「独立」というところに非常に意味があると思います。それであまり細かくやり過ぎると大きなところが抜けるという欠陥が出て来ますので、大きく3つとか4つに分けられて、製造のほうは現場に派遣して、とおっしゃっていましたが、現場で同化したら全く意味がないので、現場に直に入っていることは別の活動というふうに考えられて、製造ということを、ろう付けの問題とか、あるいはメッキの問題は、後で考えると非常に単純なことです。ですから、専門の方はそういうのはすぐわかるので、時間的には別軸で、「独立で」ということを強化されることをお勧めしたいと思います。
最初NASAから導入したのが形骸化したという認識と、新しく対処していかないといけないというのはよくわかりますが、では実際にどういうふうな考え方でやっておられるのかというのがよく見えないのです。アメリカのほうもどんどん大きく変わっていますし、NASAのシステムが基準にした軍のシステムも大きく変わっているし、ミルスペックというのが実質的になくなったという話も聞きます。
日本の宇宙の場合は、わずかなものをこそこそ作っているという形で、経験もデータも不足です。だから技術は自分で確立していかないといけませんが、そういうのをよく研究しておられるのじゃないかと思いますけど、どういうふうに変わったかだけではなしに、何でそういうふうに変わっていったかということもよく調べてやっていかれる必要があると思います。技術そのものは別として、こういうマネジメントというのはまだまだいけないところが多いように思います。
冒頭中原委員からもご指摘がありましたように、率直にいうと、私もよくわからないところがありますが、非常に悩んでいる問題であります。連続したロケットの打上げ失敗の後、いろいろなご勧告がありまして、それを受けてこの改革推進委員会をやっておりますので、品質保証の問題というのがご議論の中の最も肝要な問題の1つかと思います。
ところが、えてして、特に外部、最近の会計検査院、あるいは国会等において、極端なことをいうとプライム契約をするとすべてがうまくいくような論調がないわけではありません。私はそれをやること自体は必ずしも反対ではないですが、事はそれほど簡単ではないと思います。
まず、NASDAが徹底的に何もかにも全部見てチェックをするということになれば、マンパワーからいっても、知識からいっても、そんなことはあり得ない。日本はまだ遅れているといいながら、技術のレベルがどんどん上がれば上がるほど、ノウハウ、経験というのはメーカー側のほうにより多く蓄積されていくことは否めないと思います。
私がいた鉄道は、昔私が入った頃は監督員まで行ってやっていたのが、いまやほとんどメーカーにおまかせに近いです。やっぱりそれは必然的な流れのような気がします。
もう1つは、この監督員が機能するかどうかということについては、実はいろいろな方々からご忠告もあって、全く機能していないとか、あんなものはかえって邪魔とか。
この前畚野委員からお話がありましたが、事業団がお墨付きを出すと、かえってそれに頼ってしまって、あとはいいんだとなることもやっぱりあると思います。そういうふうになってきたら、どうするのがいいのか。
今日三浦からご説明したろう付けの不良というのは、実はうちの監督員が見つけて、メーカーと論争しながら、向こうの抵抗を押し切って調べてみたら見つかったということを見ると、一つの事象にはすぎませんけど、まだそういう部門があることは否めない。
だからここは非常に悩ましい話で、1か0かではなくて、また宇宙というのは、ましてや自動車の世界とは全く違いますし、PLもありませんし、こういう開発的な、国家的組織のある程度のチェックと、メーカー側の自主的なQC(品質管理)か何かの努力とのバランスをどの辺でとるかというのは、すごく悩ましいところなので、その辺は問題意識として是非認識していただければと思います。
複数のメーカーが部分を受け持って、合わせるようなときに、メーカー間でいろいろトラブルが起こるような問題については、プライムにすればかなり解決する部分が多いと思います。
ただし、いまのロケットのようなものは、メーカーが自分で完全にできるかというと、それはいま不可能です。ですからどうしてもNASDAとメーカーの複合チームでないとうまくいかないということになると思いますので、NASDAとメーカーがあたかも一つの事業体であるかのごとき管理が必要だと思います。
NASDAからメーカーへいろいろいっていますが、メーカーからNASDAへの善意に満ちた情報とかはまだちょっと少ないように思うので、完全なチームを設ける努力をする必要があるのではないかという感じがいたします。
NASDAとメーカーの関係と、メーカー間の関係と、いろいろあるかと思いますが、前回蛇川委員からかなり厳しいご意見もあったと思います。メーカー側から見て、さらにご発言がございますでしょうか。
自動車がよく引き合いに出されて、それはもちろん比較にも何もならない。しかし、物づくりという思想面では私たちは決して劣っていないというか、挑戦意欲といいますか、そういうことで申し上げただけで、この間から話題になっていて、今日挙がっている、これをやるだけでも大変ですから、これがやれれば、考えられることすべてのような気がします。
確かに今度はたぶん相手方の問題というところに移っているという、理事長のご指摘のとおりで、教育とかという次元から、向こうがこのレベルについて来る、あるいはついて来させるやり方は、我々も経験しているわけです。
あれほど悪かったメード・イン・ジャパンが、いま良くなったということは、「自動車だから」ということをいわれると、私たちは何も言えない。
そうではなくて、やっぱり世界のトップを目指そうという意欲が全般に伝わることで成し得るわけでして、どこかの1メーカーではなくて、日本中挙げてそういうことを目指すというところにあるものですから、NASDAではなくて、「NASAを追い抜く」という思想があるのかないのか。
まあこれは予算問題とか、体制問題があると思いますが、ここにあるような気がしていま考えているところです。いつ追い抜くのだろうか、いつ我々の有人飛行が出るのだろうかと、そういうものがどこかにないと、メーカーも研究の視点が違うのではないかという気がします。どこかで追い抜いてやろう、あるいは場合によってはNASAに納入してやろうというような意欲があるのかないのかというあたりは、私にはちょっとわからないです。
その目指すところが、10年でも、20年でも、30年先でもいいですけれども、そういう視点で、国家体制がどうあるのかと、そんなところを感じている最中です。
ですから、例えばISOといいますが、これは現場なり、設計者なりが、流動性がある中で、最低限の品質保証のことをマネジメントしようとする手法だと我々は思っているわけです。ですから、そこから世界一になる道のりというのは自分で考えるしかない、あるいはみんなで培っていくしかないという、このプロセスはなかなか紙に書き表せないだろうと思っています。
従って、まずは、これだけ出ていれば、これだけ成し遂げれば、どのレベルなのかというのは、ちょっと言いようがないですね。世界一なのか、肩を並べているのかというのは、どのレベルでこれをご判断されているのか。これは質問ではないですが、私自身にはまだ十分入っていないものですから、コメントがちょっと難しいですけれども。
今のご意見に関して、そういう大きな本質的なものというのは、競争がないということだと思います。ですから競争がないところで品質をいかに確保するかということは、世の中にあまり無いことととらえて行動を起こさないと、やはりうまくいかないと思います。今日いろいろ聞かせていただいて、これを全部本当に完璧にやったら、これだけですごい人とお金がかかるという実感があります。 ところが実際にはもう少しレベルの低いのが多々出ているということで、やはり先ほど話が出ましたように、メーカーとNASDAさんの一体感ということの裏腹に、お互いに責任を持ち合うという、ここの構築が非常に重要だろうと思います。 マクロにいうと私もメーカーサイドですから、どうもメーカーが甘えているのじゃないかという実感は非常にします。ただ、いじめればいいかというと、そうはいかないと思います。 ですから、いま蛇川さんがおっしゃったように、やっぱり共通の目的意識をしっかりして、お互いに努力するということだろうと思います。ここに様々書かれた内容の運営においては、そこを原点にやっていかれることをリコメンドしたいと思います。
具体的なトラブル例として3つのケースのご紹介がありましたが、この3つの例を伺って強く感じたのは、LE-7の開発の最終段階を捨ててLE-7Aに移った。そのときエンジンの条件としては、かなり楽になる、だから開発としても十分スムーズにいくつもりであると、そういうようなご説明があったときに、7Aに移ってこの3つのトラブルが出てきたわけです。
この3つがLE-7Aに移るに当たって何か新しいチャレンジができて、それに対応する過程として出てきたようなトラブルであれば、ある意味では開発に必然的に出てくると思います。しかし、この3つはいずれも過去においてすでに十分克服していたような問題が、今となって出てきたという感じがしておりまして、むしろ一歩下がったという感じがします。
ですからこの過程で、LE-7Aというのは、チーパーという言葉は使いたくないですが、コストダウンというのをかなり強く意識されたと思います。しかし、LE-7Aに移るに当たってコストダウンという指令が、気がつかない、あるいは意識に上がらない、いろいろ細かな変更をつくって、それがこういう小さいトラブルになって出てくるようなことがあったのではないかと、いささか疑ったわけですが、その辺の関係をちょっとご説明いただきたいと思います。
プロジェクトは答えづらい面があるかもしれませんので、まず最初に私の説明を行います。例えば12ページに「ベローズの振動が励起された」というのがありまして、これは金型を変更したというのですが、聞いてみますと、いままでの金型だと、あまり歩どまりがよくない、こっちのほうが非常によさそうだという現場の提案で変更して、非常に歩どまりがよくなったけれども、カーブのRがちょっと違っていて、そこに疲労が集中して壊れた。
右側にありますが、現場としては、ちょっとしたカーブの変更がこんなことになるとは起こるまで気がつかなくて、これの方がいいだろうと思ってやったことが、こういうふうになってしまった。これは、歩どまりが悪いのはコストに効きますので、もっとよくしようということが効いたのではないかと思われますが、プロジェクトはもう少し状況を知っているかもしれません。
それから11ページのメッキのほうですが、寸法を調整するのはよくやることではありますが、加工上の問題があった場合に、ほんの10μとか5μ、ちょっと太くするか細くするというのは、削るかメッキをやるかというのは、よくやることですが、そこでメッキでいいはずが、処理過程に少し問題があって、密着性がよくなかったということでこういうことになってしまった。
ですからこれも、何か起こったら、あらゆるものを全部作り直すということにすれば、こういうことは起こらないのでしょうが、コスト上そういうわけにはなかなかいきません。従って、できるものは手直しして、その代わり審査委員会にはかけますが、そういうところで救っていくというのがコスト上の問題としてあるかと思います。
三浦理事から説明があった通りです。ですから、直ちにこういう点はコスト低減が起因しているといえるのかどうなのかというのは、疑問があるというか、必ずしもコスト低減のためにこういうことが生じているということではないと考えております。
まず蛇川さんがご指摘の「世界一」という部分は、私は決してゼロではないだろうと思います。経験とか、予算規模からいうと、本当にケタがまるで違いますけれども。
例を挙げれば、今度のH-IIAが本当にうまく上がって商売になると、恐らくこの規模のロケットでは世界のトップクラス、あるいはちょっと肩を抜くクラスの性能になると同時に、それを狙ってやったなという実感があります。
今はまだ非常に苦しい段階にありますが、日本のこの限られた資源の中でH-IIAを見ていますと、単に値段を半分にするというだけではなくて、世界市場の中で十分に商売すると同時に、いろいろなパフォーマンスが、ヨーロッパを見ても、アメリカを見ても、ロケットについては負けないぞという意欲が明らかに感じられます。
それから衛星について見ても、ある部分については明らかに世界一の、世界にないものを狙っているし、現にそういう評価も受けています。
昨日も地球観測のシンポジウムをやりましたが、アメリカ側も高い評価をするようになった。あらゆるところで全部世界一ということはあり得ないと思います。しかし、各部門で日本が長年持ってきたような情熱は、私はここに来てまだわずかですが感じております。逆にそれが経験不足と実力不足のために、いま胸突き八丁にかかっている感じもしております。その程度の認識が間違っていなければ、お持ちいただいて、決してアメリカの後追いと、目標もなく真似をしながらやっているという状況ではないと私は認識をいたしております。
それからコストと今起きているトラブルについて言うと、奥の方の背景として全くゼロではないとは思いますが、メッキにしても、ベローズにしても、今度のはんだ付けにしても、コストのためにこうなったという印象を私はほとんど持たない。ケアレスか、あるいは良かれかしと思ったことが違ってしまったと。よくある話ですけれども、そういう印象が強いです。
だから責めるのは簡単ですし、また、おっしゃったとおり、あまりメーカーと喧嘩ばかりするのはよくないですが、見ていると、まあこれはあらゆる世界でありまして、ちょっとうっかりしたところで吹いてしまったとか、ここを直してみて、もっとよく慎重に考えればよかったけれども、良かれかしと思ったことが、こうなってしまったという印象が非常に強いです。
ですから、これを即マスメディア的に、コストダウンをするためにこんなことが起きたというふうに片づけるのは、きわめて危険であるという印象を私は持っております。
理事長の力強い言葉、決意をいただきました。
今日いただいたコメント、助言が幾つかあります。この品質保証の問題はかなり重要な問題なので、次回までに整理をしてきまして、こういう示唆があった、こういうリコメンデーションがあったということを次回に出して、さらに必要であれば、また第4回とか第5回でも少し検討していただくことにしたいと思います。
今の理事長の発言を聞いていて私が思い出したのは、零戦がいかに優秀な飛行機であったかという、その自慢話にかなり近い印象を受けます。実際H-IIAはいろいろな意味において非常に優れた点を持っています。それは、零戦が優れていたという意味において優れていたのであって、同時にまたいろいろな欠点を持っていて、その欠点が明るみに出たから、ちょうど零戦の欠点が明るみに出て敗戦に至ったようにです。
だから我々が今するのは、なぜあの零戦がだめになったかという視点からの分析をきちんとやらない限り、H-IIAがいかに優れているかという話をその方向からやったのではいけないと思います。
ここで失敗の分析がいろいろなされていて、これは大変重要なことで、是非とも更にやるべきことではありますが、今日のお話を伺っていますと、話が非常に流れてしまって、確かにそのとおりいろいろ改善策をやれば、それはいいに違いないけれども、本当にそれができるのかどうかという、そこの問題が非常に重要だと思います。
それと同時にもう1つは、この頭のところの「背後要因分析活動」というところが非常に重要だと私は思います。
東大の機械工学の畑村先生の『実際の設計シリーズ』の中の確か3冊目があらゆる失敗の分析になっているわけです。要するに個々の失敗ではなくて、いろいろな失敗の事例を挙げていったときに、どういうことが隠れるかという角度から、失敗の総合的な分析をやるわけです。その本を私は“失敗学"と名づけています。非常に専門的な本ですが、それが最近一般書になって出ています。
ここの幾つかの最近のトラブルについて、こういう分析は確かに必要ですが、こういうトラブルの様々な事例をもっと広げてみたときに、何がくくり出せて、そのくくり出したポイントを、我々のいまの対策がちゃんと潰しているかどうかという、そこが大事だと思います。
NASDAでは、最近は知りませんが、ずいぶん前、もっともっとたくさんの失敗があった頃、不具合の事例集ですごい本をつくっていました。あれは一般には出していないわけですが、古いものを見せてもらったことがあります。たぶんあの後もいろいろなトラブルがあるたびに、それを積み重ねて、あの事例集を纏めていると思います。
ちょうど畑村さんのあの本は、個々のそういう事例を踏まえて、さらに要因分析をどんどん積み重ねていって、様々なくくり出しをやるわけですが、そういう感じの過去の失敗のすべてをくくり出してやっていくという本当の背後の要因分析が、そういうポイントまでいっているのかどうか。そして、そういうことを踏まえて今度やっているのかどうか、それが1つ重要だと思います。
それをきちんとやるためにはどうすればいいかというと、実際に過去の主なトラブルを全部出して、こちら側に要因分析をやって、それでどのトラブルは実はこれだった、実はこれだったということをきちんとやって、それが個々の対策で潰れる。そういう総合的な過去の不具合、失敗の事例集の上に基づいた報告がたぶん必要だろうと思います。
ですから、もしやっていただけるならば、次のときまでに、そういう過去の主な不具合を出して、こちら側に要因を出して、これはこれによって起きた、これはその後こういう対策をとって、これでその後収まったと、そういうことをやればいいと思います。しかし、たぶんそういうことがきちんとできていなかったから、この不具合の積み重ねというのがいまでも起きていると思います。
もう1つは、今の状況に対して、NASDAだけではなく、この業界といいますか、世界の方々みんなの危機意識がまだ足りないと思います。私みたいに大部分外部にいる人間にとっては、本当に大変なポイントに立っていると思います。
恐らくもう一度本格的に大きなというか、事故の大きさという意味じゃなくて、内容においてばかげた事故が起きたらば、その失敗要因をきちんと積んだときに、何でこんなところで失敗したんだみたいな、新聞から総叩きに遭うような事例がまた出てきたら、もう宇宙にこんな金をつぎ込むことないんじゃないか、ロケットはアメリカに任せましょう、どこにまかせましょうみたいなことになって、あと日本は宇宙飛行士をときどき選抜してNASAに送り込んで乗せてもらって、それで終わりにするとか。とにかく金がかかり過ぎて、どう考えてもコストに合わないみたいな話になって、つまりNASDAの存続そのものが話題になるような時点が、そんなに遠くないうちに、今度同じようなことを起こしたら起きると思いますね。そういう意識がNASDAの内部にはまだ弱いのではないかということが一つあると思います。
今、自分たちが置かれていることに対する危機意識の大きさの1つは、今の問題というのは結局は金とか何とかの問題なのです。だからもっと予算があればとか、何とかいう話になるわけです。
もし事故がチャンジャー事故のように人命にかかわる事故だったら、本当にもっともっと厳しい危機意識を持って点検をやったと思います。アメリカはチャレンジャー事故のときに大変な点検をやるわけですが、我々が学習すべきなのは、あの点検だと思います。「あの点検」というのは二面ありまして、どういうことかといいますと、あのチャレンジャー事故の後に、チャレンジャー事故の原因を追及する特別委員会ができるわけです。あれがずうっと進行していく過程で、今みたいに、確かに表面的に立派な話は次々出てきて、それだけで流れてしまう傾向の中で、現場に入って本当の原因は何だったかを自分の目で追及した人が、物理学者のノーベル賞のファインマンです。委員会で彼一人があの中で頑張り抜いたために、あのチャレンジャー事故の検討委員会が出した結論はものすごく立派なものになったわけです。
要するにファインマンは何をやったかというと、本当に現場に行って、工場の現場で工員たちにまで話を聞くわけです。そうすると、何かが起きたときには、やっぱり下へ下へと下りると、現場の人はちゃんと気がついているわけです。本当の現場の人です。まさにそのトラブルのもとになったそのことをやっている人たちは、実は意外に「これはヤバイ」とか何とか、ちゃんと気がついて知っているわけです。しかし、それが現場の長に上がらない、長の上に上がらない、さらにはNASAに上がらない。
要するにいまいろいろなところで起きている失敗の原因のボトムアップの過程が、いろいろなところで崩れているわけです。この対策は、さっきも話がありましたように、トップダウンで監督を強化すればいいじゃないかみたいな話になっているけれども、それでは進まないというのが、あのチャレンジャー事故の検討の中できちんとわかってくるというか、ファインマンが現場に飛び込んで、工員レベルと本当に腹をぶち割って話をして初めて出てくるわけです。
ファインマンは純粋物理の人ですから、そういうロケット工学とか何かを知っているわけではないけれども、彼は実は原子爆弾の製造そのものにも関わっていたから、そういう意味では現場を結構知っているわけです。それでいろいろなトラブルが原爆の開発過程に起こったという経験がその場で生きてきて、現場にきっと何か問題があるに違いないということで飛び込んで行くわけです。つまりファインマンのあの経験をいま日本の宇宙関係者は学ぶべきだと思います。
たぶんある程度の人はご存じだろうと思いますが、岩波で出ている『ご冗談でしょう、ファインマンさん』の「ファインマンさんシリーズ」が5冊も出ていますが、2冊目か何冊目かの半分がチャレンジャー事故探求の過程を書いた本です。英語版では、その後にチャレンジャー事故究明委員会にファインマンが独自に提出した彼の個人的な見解が、その委員会のレポートのアペンディクスに入るわけです。それを入れるためにまたすごい苦労があります。つまり、ある程度上部に出たときの委員会では、どうしても表面的な話に流れるけれども、彼はすごく実質的な話をそこへ入れようとして、その悪戦苦闘がまたその本に出ているわけです。
重要なのは、そのアペンディクスそのものです。これが実は日本語版では抜けています。これは英語版では簡単に手に入りますし、たぶんNASAのアーカイブの中にあるはずですから、あれは是非NASDAの人たち全部に配って読むべきだと思います。そうすると、こういう場合にどこをあれしなければいけないかというのが相当わかってくると思います。ですから、本当の意味で“過去に学ぶ"ということをもう一度やってみる必要が基本的にあるのではないかという気がします。
今日の意見をまとめて次に、ということをおっしゃいましたね。
はい。
この業務改革委員会のほとんどの仕事は品質管理信頼性の問題だと私は思っています。だからこれは毎回やらないといけないぐらいで、いまここでサッと説明されて、私もよく呑み込めないところがいっぱいあるし、これだけで終わったのでは、さっきからもいろいろ出ているけれども、「本当にできるのか」というのがあると思いますし、いまの立花さんの意見もあって、ああいうのも勉強してもらわないといけないと思います。我々としても、「あ、そうですか。これでいいですか」とはなかなか言えないですね。
例えば企業とNASDAとの間の問題も、ここに「監督」や「検査」ばっかり書いてあるけれども、本当にそんな立場でいいのかというのがあるわけです。難しさがあるというのはみんな指摘しておられますが、もうちょっと腰を据えて、この問題を考えるのがこの委員会の主な任務のような気がします。
次回も議題に取り上げようかと思っておりますが、いま立花委員からご指摘があったようなことも、可能であれば調べて次回に出すということで、どうでしょうか。
それから、先ほど蛇川委員がたぶんおっしゃられたかったのではないかと思いますが、スタンダード、日本独自のものをつくるような観点で、山之内理事長が最初にチラッと言われましたジャパン・マネジメント・スタンダード(JMS)をいま蛇川委員が作られているようでして、そういうのが何か参考になるのではないかという感じもしましたので、ちょっとご紹介いたしました。
そんなのは恥ずかしいですが、NASDAのそういうものがあれば、あるいはそれを作って世界に問うというところに来ないと、なかなか世界一というところが見えてこない気がしました。
確かに理事長のおっしゃるように、いまトップを目指しておられるのは、ノッポビルのような気がします。富士山型にするにはどうするかということを申し上げたかったわけです。
畚野委員がおっしゃったことはもっともだと思いますので、今日の議論、示唆等も含めて整理をしまして、更にどういうことをしなければけないかということを次回の議題にも取り上げたいと思います。
この議題にかなり時間をとらせていただいたのも、実はそういうことがありましたが、今回はこの辺でいったん打ち切らせていただきたいと思います。
皆さんの意見を聞いていて、今回実際に起きた事故、ベローズの問題にしても、メッキの問題にしても、背後にある要因分析を是非次回きちっと示していただきたいと思います。
これで内容を拝見させていただくと、いかにNASDAとメーカーとの間で本質的なところを掴まえておられるかという一つの証にも、また確認ができる事項にもなると思うので、是非お願いをしたいと思います。そこにやはり本質が幾つもあると思います。
是非それを次回したいと思います。
2番目の議題に移りたいと思います。では、古濱理事からよろしくお願いします。
それでは配付資料3-2、信頼性、品質保証の立場から、衛星の開発強化の取り組み状況を報告したいと思います。2ページです。平成6年8月に打上げた技術試験衛星VI型(ETS-VI)以降、衛星の事故・トラブルが発生しておりまして、その背景にはNASDAとして以下の問題点があると認識しております。
第1に、自主技術による衛星開発を行えるまでに至りましたが、基盤技術研究への対応、先端技術開発の取り組みが十分ではなかった。2番目に、新技術に見通しをつけるための研究が重要になってきたが、十分なリソースが得られないまま開発に着手した。また開発段階以降においても、スケジュールやリソースの制約により、十分な事前実証が行えなかった。
3番目に、NASDAの業務の多様化に伴い、専門的技術及び監督・検査に係わる人材が不足するとともに、少ない人材がNASDA内に分散することにより、専門技術の継承が不十分となった。
以下、これらについてもう少し具体的にお話をしたいと思います。
3ページは、主な軌道上における事故です。1番目に、平成6年8月31日にアポジエンジンの故障が技術試験衛星VI型について起こりました。このETS-VIのアポジエンジンの二液式推薬弁が開閉動作不良に陥り、エンジン機能を喪失したということです。そのために静止衛星軌道への投入に失敗しました。本件は真空潤滑の知見の不足等の基盤技術が不十分であったということです。
なお、衛星そのものは静止軌道には投入されませんでしたが、運用において頑張りまして、例えば搭載ソフトウエアの書き換えをして一部の実験は実施しました。
2番目に、太陽電池パドルの破断が平成9年6月30日にADEOSで生じました。ADEOSの太陽電池パドルが軌道上で運用中に破断した結果、発生電力が「0」となり、衛星機能が停止しました。そのため約10ヶ月で運用停止となりまして、設計寿命を大幅に下回ったということです。
本件は解析/設計余裕の妥当性の検討が不十分で、また材料の温度特性に関する知見の不足等の基盤技術が不十分であったことによるものだと理解しております。
4ページは、これらに対してどういう対策を講じたかについて、7点あります。1.基盤技術研究の充実、2.研究開発段階の充実、3.事前実証機会の確保、4.専門的技術力の向上にむけての体制強化、5.リスク管理の徹底、6.品質保証の改善、7.高度情報化の推進ということです。
このうち、1.と2.については後ほど資料3-3で技術研究本部から説明します。6.の品質保証の改善は、先ほどの資料3-1の部分ですので、これもここでは省略して、ここでは3、4、5、7について報告します。
5ページは、改善点の3番目で、事前実証機会の確保についてです。確実な衛星の開発・打上げに向けて、地上検証実験の充実を図るとともに、地上での検証が困難な技術については、軌道上での検証を計画する等、できるだけ多くの事前実証機会の確保を図る。これについては、ADEOS-IIとETS-VIIIについてご説明します。
なお、これらの2つの衛星についてはパンフレットが資料でついておりますので、そちらのほうもご覧になっていただきたいと思います。
まずADEOS-IIの太陽電池パドルの地上検証実験ですが、これはADEOSの経験に基づいて改善を図りました。複数の部分モデルによる太陽電池パドルの試作試験。これまでADEOSではやらなかったパドルの部分の材質を2種類変えて検査するとか、また摺動部を2種類の材質で試験してみるとか、ヒンジ部を材料を5種類変えて試験してみるとか、そういうことをADEOS-IIではやっております。
2番目に実機相当部分のモデルによる線膨張係数の測定でございますが、ADEOSのときは1気圧で温度変化のみをかけて線膨張係数を測定しましたが、テンションもかけずに、非常に小さな、5×5?のフィルムで線膨張係数を測ったと伺っております。ADEOS-IIでは50×90?のフィルムでハーネスと一緒に温度変化を測定しました。真空中でテンションも80?かけて、実際の使用状況に近い段階で測定しました。
3番目に大型部分モデルによる熱真空中の機能確認試験ですが、これも実機は23mありますので、そんなに容易には熱真空試験ができませんので、10m部分について確認を行っております。
6ページは、ETS-VIIIの大型展開アンテナについて事前実証をやった件についてご説明します。これはスケールモデルを用いて航空機に搭載したものと、それからロケットの2段目に搭載して展開実験をやる。
航空機のほうは、その表の左側に書いてあるように、ETS-VIIIのほうは14モジュールで構成されておりますが、そのうちの1モジュールを取り出して、フルサイズ(鏡面精度)は同じで、展開力は2分の1サイズで試しました。航空機で20秒かけて鏡面精度の確認及び展開力を測定しました。
それから今年の12月、アリアンロケットVで予定しておりますが、7モジュールで、サイズは2分の1ですが、それをロケットの2段目に搭載して、実際に展開できるかどうかを試験します。そういう実績に基づいて実機で実際に14モジュールの展開を行おうということです。
これらについて7ページにその模様が書いてあります。六角形が7つついたようなものがロケットの最上段にくっついて、トランスファ軌道上で展開される。そういうことを12月の後半に実施します。
8ページは、その収納した状況と、それから展開した状況が書いてあります。この実験はLDREXというふうに呼んでおります。
9ページは、4番目の改善点です。専門的技術力の向上にむけての体制強化です。外部の専門家の招聘も含めて、技術専門家グループを設置するなど、専門技術力の強化及びプロジェクトチームとの連携強化を図っております。
これは、ADEOSのときの太陽電池の破断に際して、このときはJPLのセンサも載っていましたが、外国の専門家もADEOSのパドルの破断について経過を知っておりますので、ADEOS-IIの製作について様々な評価をいただきました。そして対象として、太陽電池パドルとか、姿勢軌道制御系の改善についていろいろコメントをいただきました。そういう意味で専門家による技術評価を行ってもらっております。
その他にETS-8の開発体制については、NASDA以外の有識者、関係機関による技術的なレビュー、技術試験も行っております。例えばアンテナの開発については技術委員会を設置しております。それから柔構造物姿勢制御アルゴリズムについては、航空技術研究所との間で共同研究をしております。それから太陽電池パドルの耐放電性については、100Vの電圧を使っていますので、従来のものと違っています。そういうことは九州工業大学のチェンバーなどを使って実際に放電試験などの共同研究をやっております。
10ページの5番目のリスク管理の徹底についてです。これについては先ほどもご説明がありましたが、各プロジェクトにおいてリスクを識別し、評価、対策を実施しております。そしてフェーズ毎に実施される審査会においてこれらを評価しております。
それから月に1回程度リスク管理会議を開催して、開発中あるいは運用中に発生した不具合等の水平展開、別なプロジェクトに対する経験の検証を水平展開でやっております。そういうこと及びそれに対する対策。このような横断的な展開を行っております。
それから特別点検を実施しております。これについては、詳しく事例を挙げて次のページで紹介したいと思います。
それからNASDA内外の有識者が参加して評価、指摘等の実施を特別点検の中でもやっております。
それから独立評価チームを設置し、開発全般について、その開発状況に対してのリスクマネジメントの観点から、さまざまな要因(技術的、資金的、スケジュール等)の点から要因を評価し、回避策等を提言していただいております。
11ページは、ADEOS-IIの特別点検です。メーカーと協力して開発の結果の見直しを実施しております。主要性能のトレンド評価。これはコンポーネントデータとシステムデータがどうなっているか、その相関関係を文書に基づいてチェックするということです。それから不具合処理の妥当性、他プロジェクト不具合の確実な反映。例えばスケジュール、コストなどで本来あるべきことが変えられていないかということをチェックする。それから既開発品の設計・製造履歴の確認。これは、データを再確認するとか、証拠がちゃんと残っているかとか、そういうことの確認です。
それから可動物の設計・検証結果の再確認。衛星にもホイールとか、ジャイロとか、スラスタとか、アンテナとか、不具合が起こるところは大体決まっておりまして、そういうもののチェック、再確認を行うということです。
ETS-VIIIについては、軌道上で発生した姿勢制御用のリアクションホイールの異常現象について、軌道上確認試験等によるデータの収集も含めて、現在原因の究明を行っております。
推定原因に基づいてスクリーニングの試験追加、製造工程改善等の対策を示すとともに、開発中の衛星プロジェクトに水平展開して、影響を分析し、開発フェーズ、要求仕様等を勘案して改修、別品への交換等の措置を実施しております。
12ページは、7番目の改善点で、高度情報化の推進です。これは多様化・複雑化する衛星開発を、効率的かつ効果的に進めるために、NASDA及びメーカーを含めた開発関係者間で情報を共有しようということです。
また、時代に即した研究開発手法(コンカレントな概念設計、三次元モデリング等)の高度情報化技術も踏まえて、これらを段階的に取り入れるとともに、搭載ソフトウエアの検証技術の充実をはかっております。
例えば最後の搭載ソフトウエアの検証ですが、ADEOS-IIの場合は、姿勢制御ソフトウエアがC言語で書かれておりまして、こういうものに対して第三者独立評価検証を実施して、具体的にはソフトウエアを第三者にC言語で作っていただきまして、左側の本番のソフトウエアが機能的にちゃんと正しく機能しているかということをチェックしたということです。
13ページは、ETS-8は開発の初期の段階にありますので、この例をとって、先ほど申しました高度情報化の手法を取り入れまして、データをメーカーとの間で共有しようということです。インターネットを使って衛星メーカーとの技術情報の電子化、共有化を行っております。
ラインが2つありまして、右側は、情報共有サーバと認証書発行サーバということで、認証書発行サーバはオフラインで、共有サーバはオンラインで情報が共有できるようになっております。こういうものを昨年度から進めております。
衛星の開発をどんなふうにやっているか、その開発強化にむけた取り組みということでご報告いただきました。これにつきまして、ご質問がございますか。
3ページ(1)の故障の中で、下の2行の「本件は真空潤滑等の特異な現象に対する知見の不足等の基盤技術が不十分」ということで、基盤技術が不十分という結論をしているわけです。
これは相当おかしな話でして、真空潤滑における特異な現象に対する「知見の不足」というのは、一体どのレベルで起きたのかという問題があります。つまり、真空潤滑におけるあの事故を引き起こしたようなことで、「特異な現象」と表現されていることは、実はあの真空の中で起きる当たり前のことです。
私はあのときちょうど先端科学技術研究センターにいまして、先端科学技術研究センターで真空状況下で金属の接着剤も何も使わない接着の研究をやっている先生と親しかったんです。それでその先生の意見もそうだし、それからあのときの所長がいま筑波の通産省の岸さんだったもので、彼ともこの話をしました。そしたら、「あんなことは常識ですよ。真空でああいう現象が起きるのはもう誰でも知っていることです。それを実際にやった連中が何でそんなことがわからなかったのか。むしろそっちに問題がある」と。
つまり、あれは確かに真空で起きる特異な現象ではあるけれども、技術者レベルでは、真空の世界を知っている人にとっては、特異でも何でもない、当たり前のことが起きて、その当たり前のことに対して、ちゃんとした設計上の対策をとっていなかった。つまり、金属の表面を真空の中で出してくっつけたら、くっつくのは当たり前です。そういう常識がなぜ無視された設計になってしまったのかという、そちらのほうの原因追及が本当の原因追及であるべきですね。真空でそういうことが起きることが全然知られていなかった、それでそういう現象に出遭った、そして事故が起きた、みたいなことにしか解釈されないです。つまり、こういうレベルの失敗の原因追及をやっていたのでは、全然だめなのであって、本来その知見がなぜ設計現場でその設計担当者にいかなかったのか。
ただ、対策としてここで盛んに強調されている地上あるいは宇宙での実際の検証試験をやれば、こういう失敗は明らかに防げるわけです。
だから、この例にしろ、確かにこういう対策をきちんととればいいということですが、ただ原因追及に当たっては、本当の原因まで追及すべきである。本当の原因というのは、その世界を知っている人にとっては常識であることが、なぜそちらの常識にならなかったのかと、そういうところをきちんと押さえる。
先ほど言った、これまでのいろいろな失敗の原因追及をするときの原因の振り分けを、そのレベルでやらないと全然意味がないということを申し上げておきたいと思います。
この件は、次の議題の技術基盤の強化というところで、対策等、説明があるのではないかと思います。
私は真空を使って仕事をしていましたので、いま立花さんが言われたことは、これは常識です。だから設計の人が知らなかったから悪いことは事実ですが、それをちゃんと一回やってみれば、こんなものはすぐわかります。
だから新しいものを熱真空の環境に出すときに、何をやらないといけないかということを理解していなかったのではないか、そういう手順をちゃんとやっていなかったのではないかと、私は今まで何度も言っていますが、そういう問題だと思います。
だから、設計も当然そうだし、初めてやるようなものは、最初にちゃんと何をやるかということをまず検討して実際やっていかないといけないだろうと思います。
12ページに「高度情報化の促進」というのがありますが、こういう場合に非常に重要な項目は、いわゆるデジタライゼーションということがあると思います。それも、全体の中で一番弱くて、名人芸に頼っているところを、どうやってデジタライゼーションするかというところが、高度情報化に対する基礎として一番大事なところではないかと思いますので、それも是非検討項目に加えていただきたいと思います。
いま立花先生から指摘されたことは、全くそのとおりだと思っておりまして、実はそれを感じたので、「特異な現象に対する」というところは読まなかったんです。しかし、そんなことでは全然だめだということがよくわかりましたので、どうもありがとうございました。
3番目の議題で「技術基盤の強化に対する取り組み」に移りたいと思います。いまご指摘のあったようなこともたぶんいろいろと含まれてくるのではないかと思います。これは狼特任参事からお願いします。
資料3-3の「技術基盤の強化に対する取り組み」をご説明したいと思います。 まず2ページに本資料のまとめがあります。これは先ほどから出ている特別会合等の指摘を受けて、プロジェクトを確実に実施するために、基礎的な技術データの取得・蓄積・継承を含めた技術基盤の形成が課題であるということを受けて、技術研究本部が現在実行している状態を説明したものです。(1)から6項目ありますが、これは4ページ以降に各項目について詳細な説明があります。
3ページは、技術基盤形成のために全体的にどういう考えで進めているかということを概念的に表した図です。従来のNASDAのやり方では、技術基盤は、各本部、つまり輸送システム本部、衛星システム本部等の中にそういうシステム技術を担当する部署がありまして、本部毎にやっておりました。
これの1つの大きな問題としては、各本部毎の横のつながりが、もちろんゼロではありませんが、希薄である。もう1つは、プロジェクト毎に技術が途切れてしまうという非常に大きな問題を抱えております。これを打破するために、技術研究本部を中心として、1.調査検討、2.研究/概念設計、3.試作・試験、4.宇宙実証計画、5.プロジェクト(搭載)/試験検証、6.実験参加及び運用データの取得をして、また概念設計に戻すという、こういう循環型の蓄積・継承の方式を採るべしということで進めているのが、技術研究本部のやり方です。
4ページです。1番は専門グループ制の採用でございます。4ページの図に示すように、右側の3つは一種のセンターで、システムエンジニアリングを担当するセンター、解析評価・ソフトウエア技術を担当するセンター、試験の実施並びに評価をするセンター、この3つのセンター、プラス左側の11のグループは各専門別のグループになっております。実際に専門グループとしてNASDAの中で組織化されたものが左側の4つで、他の7つについても現在準備中です。詳細は省略します。
5ページは、現在行われていることは、先ほどの準備中のグループについては、リーダーの確保及び技術者の確保、支援スタッフの充実を図っておりますが、なお先ほどの準備中の7グループについても、実際の活動は進んでおります。かなりアクティブな活動をしているグループも多いです。
2番目は、最近のロケット関係のトラブルを教訓として、流体・推進系、つまりロケットの推進系に関するグループを立ち上げました。この委員でいらっしゃいます大橋先生のご協力も得て、このグループを立ち上げたところです。
その他、能率的にこういう活動をするための、いわばIT関連の設備等を現在充実させております。
6ページは、2番目のプロジェクト支援の強化という項目です。対プロジェクトについて、プロジェクト支援をさらに強化すると同時に、H-IIAロケットプロジェクトの技術支援を昨年から開始し、逐次強化しております。
さらに「連携強化」と書いてありますが、これは各本部との内部的な連携を強化して、筑波宇宙センターに衛星システム本部を移設して、コロケーションによって情報の交流を深めております。
7ページは、プロジェクト支援の実態を表しているグラフです。平成10年、11年、12年と衛星、ロケット、宇宙ステーション関連で、プロジェクト支援の研究項目がどのように推移しているかを示したものです。ご覧のように、衛星、ロケット関係は年々飛躍的に増加していることがおわかりいただけると思います。
なお、具体的な例として、8ページに3例挙げてあります。第1回の本会合で数例挙げたものを除いて、比較的新しいところで、8ページのADEOS-IIのテンションコントロールシステムです。これは先ほどご説明がありましたように、太陽電池パドルの破断の原因になったテンションコントロールシステムを大幅に変更し、円筒型からここに示すようなパンタグラフ型に変えて、非常にスムーズな動きが確保できるような形に変えました。
一番キーとなる真空潤滑の部分、玉軸受取付部ですが、潤滑の試験を2万7,000回を2回繰り返して、軌道上で想定される回数の約2倍程度を、機構グループで実施しました。
なお、この設備は、先ほど立花先生からご指摘のありましたETS-VIの潤滑の問題を受けて、真空潤滑と振動環境の複合的な現象が生じた場合に、どういった問題が物理的現象として出るかということを解明するためにつくった新たな設備等を用いて、ここでは実際の試験を行っております。大変地味なところですが、非常に重要であると認識しております。
9ページは、H-IIAロケットの誘導制御系の心臓部をなす搭載コンピュータのソフトウエアの独立検証に係わる部分で、フルソフトウエア・シミュレーションを実施しております。
実際どういうことをやっているかといいますと、姿勢・軌道運動模擬のシミュレーターを行っています。これはすでに既存のものを用います。ハードウエア模擬計算部、これは実際に搭載するコンピュータの働きをソフトでシミュレートしたものとお考えいただきたいと思います。これを使って搭載用ソフトウエアをその中に組み込んで、センサ、エンジン、アクチュエータ等の動きをモデル化したものを入れて、当初はノミナルな運動、それから非常にはずれた状況における運動、あるいは各機器に異常が起きた場合どうなるかというところまで含めてシミュレーションできるような仕組みになっております。
現在すでにスタートしておりますが、本格的なアブノーマルな状況のシミュレーションは来年1月末から本格的にランニングをする予定です。
10ページは、H-IIAのプロジェクト支援です。打上げの瞬間における音響環境は大変シビアなもので、特に最近の衛星搭載機器のユーザ側からの要求がありました。中の環境は一体どうなっているかをできるだけ正確に、音場のレベルを推定したデータを提供してほしいということもあります。これは、私どもの試験室のチームが別チームを編成して、種子島の試験、あるいは田代のロケットの試験場に出向いて、実際の音場の測定をして、モデル化し、それの推定プログラムを作成するような活動をしております。
以上、典型的な例を示しましたが、もし今日お時間が許せば、技術研究本部の中心である研究開発棟で、この他の例についてもご覧いただけると考えております。
11ページですが、3番目のプロジェクト企画・立案機能の強化については、研究者、技術者のコミュニティを「宇宙インフラストラクチャ研究会」という名称のもとに昨年5月に立ち上げて、現在300名を超えるNASDA内外の研究者からの意見を総合して、さまざまな形で意見を吸収しております。なお、この研究会の下に約10のワーキンググループを設置し、独自にその活動をし、報告をいただいております。
プロジェクト前の検討の強化については、先ほどの組織表にあった概念検討チームが独立に検討を行うシステムになっておりまして、プロジェクト移行前ですが、GCOMという地球観測衛星の概念検討をしております。
12ページは、4番目の項目で、試作試験の強化、宇宙実証機会の確保という点について、先行的な試作を、例えば非常に重要な要素である衛星の搭載用バッテリーのリチウムイオン2次電池、それから電子部品の中枢である耐放射線ゲートアレイ等について試作試験を実施しております。
またNASDA職員によるピギーバックの衛星を自ら製作試験をすることによって、システム技術と要素技術の能力向上に努めております。これも確か見学のコースの中に入っているかと思います。
13ページは、試作試験の強化及び宇宙実証機会を確保することの重要性です。先ほどの衛星関連のご説明の中にもあったとおりです。これを非常に重視して、技術開発プログラムというものを実施します。これは大きなプロジェクトとは別に、技術実証するためのフライトのプロジェクトを創設すべきであるということで、動作試験の拡充、あるいは宇宙実証機会の拡大を目指し、中小型衛星、宇宙ステーションのきぼう船外実験プラットフォーム、あるいはピギーバック衛星等を利用した宇宙実証をしていきたいと思っております。14ページは、技術研究本部のリソースの重点配分についてです。プロジェクト支援が優先されるべきだろうということで、プロジェクト支援が人的配分及び資金的なリソースともに80%程度、先端ミッション研究センターが20%程度という比率を当面続けております。
15ページは、同じくリソースの配分です。先ほどの概念設計チーム、組織表の一番右にあった部分ですが、ここはNASDAの将来の中枢になるということも考えまして、現在1チーム5人体制を、2チーム10人体制に強化し、IT技術を利用した環境整備等に努めております。
なお、NASDA全般の研究予算は、技研本部及び他本部を含めて年間約50億円程度ですが、これを3年のうちに年間約100億に拡充するとともに、宇宙実証の予算を逐次増やして、5年後には宇宙実証だけで年間約100億を確保したく、NASDA内部の予算の配分をこのような形にしたいと思っております。
16ページは、大学及び国研、その他専門家集団との連携の状態を表しております。大学との共同研究も、それから他機関からの研究受け入れ状況も、大幅に増えております。
以上をまとめますと、17ページになります。NASDAが宇宙開発に関する研究開発組織として、国民の信頼を得るためには、基盤技術の形成が不可欠で、これはご指摘いただいている通りです。
そのために技研本部をNASDA全体の技術基盤の中核とするように、体制の改革、人材・資金の強化、研究開発環境の整備を進めております。
この技術基盤強化のための改革は、昨年度から本格化したわけで、まだ道半ばといいますか、1合目、2合目を登っている段階かと思われますが、引き続きこの方向で改革を進めるとともに、我が国として技術的な中核機能を果たしていけるように、外部との連携を一層強化した取り組みを進めていくつもりです。
この技術基盤の強化ということに関しましては、最初にご説明がございましたように、基本問題懇談会、特別会合の提言によっても進められているものですけれども、同時に、事業団内部でもこの技術研究及び技術基盤を強化しなければいけないという強いモティベーションがありまして、いま狼特任参事が言われましたように、いま改革が始まったばかりというところですが、かなり評価されることではないかと思っております。これにつきましてご意見がございますか。
前にも言ったと思うし、狼さんはよく理解しておられると思いますが、例えばこの4ページを見ますと、これはべらぼうな組織になるわけですよ。あまり細かいところまでやったのでは、とてもそんなにNASDAはやれないですね。「エキスパート」という言葉の意味は何かというのをよく理解してもらわないといけないだろうと思います。
私はEORCのアドバイザーリーボードみたいなところの委員をしておりますが、先ほど出て来たADEOS-IIの搭載センサのうちの一つでダイナミックレンジに問題が出て来ました。そうしたら、NASDAが自分のところで一つ一つのセンサのエキスパートを育てないといけないという話が出るわけです。しかし、これは違うと思いますね。宇宙観測センサというものは、スペックを出せば、外の専門家とやれば出るわけです。
だからNASDAは何をしないといけないかといったら、例えば宇宙観測センサの性能は何と何を押さえなければいけないかというのを、システムとして判断できるようなエキスパートだと思います。他のところもそういう意味のものが多いと思います。そういうふうにしていかないと、細かい部品の特殊なものまで、一つ一つ専門家を自前で持たないといけないというふうにこれを考えると、間違っていると思います。
ご指摘の点、ありがとうございました。大部分の点において、私は全く賛成でございますが、ただ一部につきましては、日本の他の分野ではとうていカバーし切れないというような専門的な部署もございますので。
例えば機構系と潤滑の問題とか、それから宇宙用バッテリー。バッテリーはどこでもやっておりますので、NASDAでやる必要はないという意見もございます。しかし宇宙用となると、全く別の観点からいろいろな検討を加える必要があります。システムメーカーがそれを担当できるかというと、必ずしもそうでもないという面もあります。そういった特殊な、特にバス系に関する技術については、この技術研究本部でカバーすべきだろうと思っております。
狼特任参事が言われた機構、潤滑などは、一つ一つの細かい技術ではなく、共通的な技術です。だからそれは当然やらないといけないと思います。
わかりました。ありがとうございました。
いまのに関連しまして、経営的にいえば、開発費の収支バランスというか、外へ委託しているもの、あるいは開発を受けているもの、それから特許とかノウハウの収支バランス、そういったマクロ的なものも取り入れられたほうがいいのではないかと思います。
商売するわけではないですが、やっぱり自分でやることと相手から得ることと、このバランス感覚は要るような気がします。
ご指摘、ありがとうございます。この点につきまして、正直申しまして、今まで非常に抜けていた部分かと思いますが、システムエンジニアリング担当の部署の者がこの辺に最近気づき始めまして、何らかの手を打つべきであるという動きが出てきております。
大変なシステムを考えておられると思います。目指すものが世界一流のものであるとすると、この研究本部が目指すものも一流であります。そうすると、NASDAだけではとてもできないので、どうしてもこの中に「開放的」という考え方を入れて、国内あるいは世界からエキスパートを集め、必要とする技術をまとめるということがどうしても必要だと思います。
そのときに、国防のようなものでしたらセキュリティが問題になると思いますが、これをどのくらい開放的にやっていいのかということの指針は何かあるのか、お伺いしたいと思います。
セキュリティ全般について、技術研究本部だけではなくて、特に情報化の問題、それから技術の流出の問題、そういう様々な側面がございまして、それそのものについては現在事業団の中に特別のチームをつくって、どのレベルで守るべきかという点について検討して、まだどちらかというと物理的なセキュリティのほうから入っているところがかなり多いですが、もう少しその範囲を順番に広げていって、いま懸念としておっしゃられているような範囲のところを、ルールをきちっと決めたいと思っております。いまはまだその途中の段階でございます。
技術研究本部でやらなくてはいけないことは非常にたくさんあると思いますが、人とかお金をどういうふうに配分して、何を優先して、どういう順序でやるかということが問題になってくると思います。
そうしますと、NASDA全体で、まずH-IIAロケットの打上げが成功しなければいけない。ここに「H-IIAのプロジェクト支援」と出ています。ロケットを打上げるために、設計とか、物を作るのを頼むとか、それを検査する、それから引き取って、輸送して、アセンブリーして打上げるという、一連のやり方の標準みたいなものがあると思います。それを「トータルシステム」と呼びますと、すぐやれといわれたら、それで動くわけです。その中で一番弱いところはどこなのか、一番問題がありそうなのはどこなのかというところを抽出して、それの基盤を強化するとか、レベルアップするにはどうしたらいいのかということから、優先順位や人の配分とかを決めていくという方法があると思います。ですから、H-IIAロケットは一例ですが、専門を全部集めてというよりも、まず何がNASDAにとって大事なのかということをピックアップしてやるようなアプローチをされると、効率がいいように思います。
その点につきましては、従来、技術研究本部は人工衛星を主体に基盤技術の研究を実施してまいりました。ではなぜロケットを中心にしなかったのかと申しますと、人工衛星とロケットの一つの大きな違いは、人工衛星は非常に多様な衛星のプロジェクトが同時に走るというところがございまして、各人工衛星で共通の問題になるような横断的な技術課題が存在しています。例えばホイールの潤滑の問題とか、バッテリーの問題とか。そういうこともありまして、人工衛星に主体を置いていました。
また一方、ロケットのほうは、H-IIAの開発、あるいはそれ以前のH-IIの開発ということで、一本になっておりました。そのため、宇宙輸送システム本部の中に独自の技術を担当するセクションがあり、そこで大体すべてカバーできるということがありました。また燃焼試験等については、航空宇宙技術研究所の非常に大きなサポートがございましたので、一つのクローズした枠組みでできました。
ただ、最近のトラブルの中で、基盤が弱いということをご指摘いただきまして、特にシミュレーション関係については全く弱体であるということも明らかになってまいりました。そういうことも含めて、技術研究本部の従来の知識・経験でカバーできる範囲につきましては、H-IIAの成功まではできるだけのことをすると昨年変わったばかりでございます。
ただH-IIAが成功しますと、人工衛星を次にどういうふうに上げて、今度はどういうことが問題になるかということが必ず起きてきますので、やはり先を見越して、人工衛星関係の研究の手を抜くことは全くできないと思います。
人工衛星の場合は、少し違うと思います。ただ、人工衛星にしても、次は何を上げて、その次は何というのは、ある程度プログラムがあるとしたら、それぞれの具体例について何が問題かというのを想定をして、優先順位や配分を決められるというようなことだと思います。
はい。ありがとうございます。
ピギーバック衛星とか、人材開発の点について申し上げたいと思います。私はしばらく衛星設計コンステトの審査委員をやっていたことがあります。その経験からいって、日本の若い人は本当にかわいそうというか、とにかくNASDAしかないわけです。それでNASAのような広い、いろいろなチャンスを自分たちの将来の前に持っていないわけです。それでも若い人たちというのは、ああいう設計コンテストをやると、ものすごく斬新なアイデアをいろいろ出してくるわけです。
あれは実際に予選と本選とを分けてまして、予選を通ったものに一回いろいろ注文をつけて戻して、それで本選のときに改良点をつけ加えたものを実際に選考するわけです。指導者の存在によってだいぶ違いますが、すごくレベルアップします。それで考えましたのは、NASDAの職員のピギーバック衛星という話がありますが、これを設計コンステトと連結して、予選から本選の間のあそこで、オープンに、誰でもボランティアで、「こういうアイデアがいま予選を通っているけれども、助けてやってくれないか」みたいなことをやって、それを助けてやったら、すごくいいものができると思います。それで今度はそれを実際にピギーバック衛星に載せて打上げてやる。
今度衛星設計コンテストから生まれたものとしてクジラ衛星が上がりますが、要するにああいう機会を実際に与えると、若い人に対してものすごい刺激になるわけです。だからあれをもうちょっと拡大すると、NASDAの存在自体がすごくアピールできるという面があると思います。
もう一つは、衛星設計コンテストを国際的に広げるべきだと私は思います。アメリカ人も応募できるようにする。そうすると、ものすごく集まってくると思います。ヨーロッパでも、アメリカでもどんどん応募して来て、NASDAの存在が国際的に認知されるというか、人気が出るようなことが考えられると思います。
大変貴重なアドバイスを本当にありがとうございました。私も全く同感でございまして、NASDAの内部で今のご意見を展開いたしまして、大学生を初めとする学生が自分の何かが宇宙に上がったという体験をさせられるような仕組みというのを考えたいと思っております。ありがとうございました。
いま策定中の宇宙開発基本戦略でも、宇宙を教育に使う、社会への還元として使う。単に道具ではなくて、むしろ教育として使うという指針も出ておりまして、まさにNASDAがどうやっていくかということと関連してくるのでないかと思っております。
その幅をもうちょっと広げて、プラットホーム利用のアイデアも募るということをやると面白いと思います。
ありがとうございました。
ロボットコンテストというのが盛り上がっていますから、それも必要だと思います。若い人材を育てるのは大事だと思います。ここ10年ほどで、日本の大学で原子力工学科が全部潰れて、その結果人材の供給がなくなり、ステンレスバケツに至ったわけです。全国で今かなりの大学に宇宙工学科とか、宇宙航空工学科というのがあります。実態はほとんど航空工学科みたいなところが多くて問題はありますが、そういう所の先生方が言うには、(久保田先生も航空宇宙工学科ですから、東大なんかは心配していないのかしれませんけど、)宇宙関係のところに就職がないんです。それで良い学生が来なくなって、潰れてしまうだろうと心配しています。だからそういうことも含めて、NASDAは何か考えないといけないような気がします。
大変深刻な問題だというふうに受けとめております。
今、畚野委員がおっしゃられたことで、関連して何か言おうと思っていましたが。大学との関連で、さっきコミュニティを広げるというお話がございました。研究機関間のコミュニティ及び大学との連携、例えば連携大学院とか、そういうところへNASDAからもどんどん出て行かれればいいかと思っております。
現在本格的な連携大学院、つまり文部省認可の連携大学院は3校に上っております。それから非公式といいますか、要するに出前講座的な連携をするというレベルですと、さらにそれに数校加わりまして、かなり連携を深めております。
ただ、これはNASDAの職員にとって大変な負担になりますし、また本格的な連携大学院の場合、学位を持っていることとか、様々な条件がつきますので、ヒューマンリソースの点からいって、やはり限界はございます。そういうことで、「できる範囲において」ということで協力、推進していきたいと思っております。
様々なご指摘、リコメンディーションがございましたので、これも今後の取り組みに入れていっていただければと思います。
もう1つ、アクションプランの階層別及び期間別整理という議題がありましたが、これは次回にさせていただいてよろしいでしょうか。あるいは、この中身はどういうものですということを数分でご紹介いただいて、それについてご意見がありましたら、文書で出していただくとか、また次回に持ち越しというようなところで、どういうことを言おうとしているかというのを、2、3分でよろしいでしょうか。
第1回の改革委員会で事業団のアクションプランが非常にわかりづらいというご指摘がありまして、それをもう少し階層別及び期間別に整理してほしいということで、まとめたものです。
2ページですが、階層別には経営レベル、それから実施レベルというのは、事業団で各本部が現在5つありますが、それぞれの本部及びプロジェクト、それから現場レベルは研究、製造は企業、運用は事業団でやっているものもありますが、そういう3つの階層に分かれます。
それから期間別でいいますと、アクションプランの中で書かれているのは、H-IIAの初号機の打上げ終了まで、それからその後の衛星を含むものというふうに、大きくはそういうふうになっておりまして、長期のものについては現在含まれておりません。
3ページで階層別を整理して、先ほどのところにしたときに、どちらかというと従来強調されていたのが、下の実施及び現場レベルは、3つの構成から成り立っておりますが、先端的な技術とかミッションの開拓、それからプロジェクトの確実な実施、それから成果の還元。
これらに対して、経営レベルでは、より全体を見て、こういう点を改革の柱にしていきたいというのが上のほうに書いてある項目です。事業の重点化、高度情報化の推進、リソースの充実、企業及び関係機関と関係の整理。
これらを柱として、先ほどのいろいろな品質問題とか、技術の開発の問題とか、いろいろな問題に当然リンクしてきますので、こうしたものを柱にしながら、実施レベル、現場レベルと共通的な形に改革をしていきたいということで、この上の項目については次回以降ご説明をさせていただきたいと思っております。
4ページ、5ページは、蛇川委員からトヨタ自動車の例を示していただいたときに、もし我々のほうが経営・技術・生産・販売というふうに分けたら、いま申しましたように、5ページにあるような形にも整理ができるのではないかということで、これはご参考です。
6ページは、時間的系列で書いたものです。すでに先ほど申しましたように、ロケット打上げまでと、それ以降を整理すると、こういうふうに分けられます。
7ページは、でももう少し各項目毎に実施レベルと現場レベルに分けたらどうかということで、品質保証について例を述べてあります。このような形で、最終的に次回以降アクションプランを最後にアップデートする際に、再整理をさせていただきたいと思っております。
8、9ページは、企業における確実な開発に向けての開発強化の取り組み状況についてご質問がありましたので、それぞれ各企業との対話というか、やっている中で出て来ているものを紹介させていただいております。それぞれ開発の体制問題、社内での設計・製造部門とのいろいろなコミュニケーション。
最後の9ページに、特殊工程とか、製造現場の教育とか訓練の項目ですが、一個ずつ紹介するのは省略しますが、そういう形でここに記述しております。必要があれば、次回またご説明させていただきます。
それでは、今日はこのご紹介だけということにいたしまして、ご意見がございましたら、文書で出しておいていただいてもよろしいですし、次回でまた議論させていただきたいと思います。今日の議題は以上で終わりにしたいと思います。
次回以降、項目が幾つかございまして、「高度情報化の推進に対する取り組み」、「企業との役割」・「責任関係の見直し」、「専門的人材の育成活用に対する取り組み」、「宇宙開発全般に関してNASDAがどう考えているか、リソースをどうするか、重点分野をどうするかという考え方」等についても、ここで議論したいと思います。
また、先ほど宿題が出ました。つまり「品質保証の強化に対する取り組み」ということもやりたいと思います。そしていまの「アクションプランの階層別及び期間別整理」等、まだやらなければいけない項目がたくさんございますので、次回はそのうちのどれかを取り上げます。少なくとも先ほどの「品質保証の強化」と、それからいまの「アクションプランの整理」というのは入れたいと思います。それ以外に、先ほど私がズラズラッ言いましたうちの幾つかを入れます。少なくとも宿題が出ておりますので、これはNASDAとしても回答をお願いしたいと思います。
それでは、今日の会合は以上で終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。