宇宙開発事業団
以下のとおり第5回宇宙開発事業団改革推進委員会が開催されました。
平成13年3月27日(火) 9:30〜12:00
宇宙開発事業団 本社第1〜4会議室
久保田委員長、坂内委員、土居委員、鳥井委員、中原委員、畚野委員
(1) | 品質保証の強化に対する取り組み(その4) -企業における取り組みの強化状況等- |
(2) | 高度情報化の推進に対する取り組み |
(3) | 専門的人材の育成活用に対する取り組み |
・ | 基礎試験/基礎データの充実 | 疲労強度、吸込み性能、加工残留応力、LOS低温作動 |
・ | 解析の強化/充実 | ポンプ系CFD解析、インデューサ疲労強度、 詳細3次元モデル解析 |
・ | 特性値トレンド管理強化 | 特性値の選別とトレンド管理(性能、軸系振動、各部クリアランス、軸系バランス量 等) |
・ | その他…コンフィギュレーション管理/評価の充実、リスクマネジメントの充実 |
・ | 納入前点検の充実 | 現物確認の強化 中間工程検査/製造完了レビューのチェック強化 |
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・ | 工程設計内容の充実 | 工程解析、製造工程審査 | ||
・ | 画像による記録の強化 | ディジタルカメラ、ファイバースコープ等による記録の充実 | ||
・ | 不適合事例に対するヒューマンファクタ分析とそれに基づく教育 | |||
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不適合再発防止、信頼性再確認、緊張感の維持
宇宙開発高度情報化推進委員会は、宇宙開発事業団(NASDA)の業務の推進に当たって、高度情報化技術を活用することにより、より確実で、効率的かつ迅速な開発活動および効果的な開発成果の利用を促進するための戦略、ならびにそれらを推進するための体制について調査審議し、必要に応じて理事長に意見を述べることを目的とし、平成11年12月に発足した。委員会、分科会、ワークショップ等において審議するとともに、NASDA職員との意見交換を重ね、NASDAの情報化推進の指針として高度情報化戦略を策定した。
本戦略策定に当たっては、宇宙開発情報化の観点から意識、体制、ITに関して、重点的に審議した。戦略の中心をなすものは、NASDAにおける意識の改革であり、また、次世紀においてNASDAが宇宙開発のフロントランナーとして留まるための経営陣に直結した情報化推進体制の確立である。
現在、政府はITによる産業・社会構造の変革(IT革命)に取り組み、国際的に競争力ある「IT立国」を目指している。NASDAはその一翼を担うべく、宇宙開発事業の効率的かつ確実な実施のみならず、情報技術革新においても、宇宙開発産業界さらには我が国を先導する自覚を持って戦略の実現にあたり、国民の支持を得て国益を確保した上で人類の叡智に貢献することを期待する。
NASDAの宇宙開発事業は、高度情報化推進の立場から、次の考え方に基づいて行うこと。
仮想モデルの構築、実験データによる検証等への取組みと共に、サイバー空間における開発設計とその現物化、実用化を推進
広く科学技術上の探検と発見を可能とする極限の基盤技術の開発
宇宙機の抱える諸問題・障害をブレークスルーするための小型・高機能化、軽量化、および、宇宙機の管制・支援基盤への先端的情報・通信・制御技術の開発・導入
国家主導によるサイバー空間での開発・設計及び検証と確認のための実物製作、ならびに民間主導による獲得技術の民生事業展開
NASDAが21世紀における高度技術産業への脱皮を図る中核として機能するために、ITの持つ特性を活かして、次の戦略に基づいて宇宙機開発環境を整備すべき。
国内外の叡智、技術を集めて、開発コスト・期間・マンパワーについて定量的な目標を掲げ、合理的な改善を目指すこと
開発支援システムは、宇宙機の機能、性能、信頼性等の実現をめざす設計・開発・維持に利用するだけでなく、そのままで研究者及び技術者教育、運用者教育等にも利用できるようにすること
開発に関する情報は、統一した概念のもとで一元的にかつ永続的に蓄積・管理し、情報間の時間的・空間的不一致をなくすこと
開発に必要な、またはそれによって得られた技術情報は、可能な限りディジタル化し、保存・加工・利用が容易に行えるようにすること
開発成果等は、理解しやすい動画像、3D画像で表現し、設計検証や工程点検の質的向上、および技術の蓄積・伝承を図る
あらゆる現象が時間的・空間的制約から解放され、局所的あるいは大局的に理解できるようにする
開発支援システムの信頼性保証と共に、それへの破壊攻撃、開発情報の悪用を許さない
上記の開発環境の構築は、以下の基本的観点から出発することが必要である。
我が国の産業発展の牽引車になる最先端技術を開発し、その技術が国益になり、人類の幸福に容易に利用できるようにすること
成果を原則公開するとともに、宇宙開発に関心のある国民が、開発状況を評価でき、新しい技術提案ができるようにすること
経営層トップが率先してIT化戦略を推進し、高度な専門指導者及び強力な情報技術者集団を配置すること
広く一般国民の審判に耐えうる規範の下で、最先端の情報技術を利用した開発支援体制を確立すること
NASDAが技術競争の場において生き残り、最先端技術集団として他を先導するITを発信するために、組織の最高責任者が主導権を持った情報化推進体制を構築。
(ア) | 理事長直結の組織として情報支援グループ(両三年で100人程度)を設置し、理事長指名のCIOにより実務遂行 |
(イ) | 大学等への先進ITの研究開発委託、情報化専門業者による先進的開発支援システムの導入等、外部情報専門集団の活用 |
(ウ) | 危険分散を考慮した上での情報の一元管理 (筑波宇宙センターへの集中化) |
(エ) | 外部専門家による常設委員会の設置 (先端情報の提供、情報化のフォローアップ等) |
政府情報セキュリティ対策推進会議の「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(平成12年7月策定)」に準拠した情報セキュリティポリシーを策定し、これに基づく総合的・体系的な対策を推進
業務情報を処理し、業務情報の持つ意味を理解して活動に活かす能力を技術者が習得するために、技術情報を管理するデータベース、技術情報を「知識」として容易に蓄積できる環境、および、豊かな経験と技術を持つ技術者のネットワークを構築
企業、外部ネットワーク、そして人間を含めたNASDA全体の情報システムと、全体システムの統合制御下で様々な目的を担当する複数のサブシステムを構築する。
実現のためには、まず次の点を念頭に進める。
(1) | 現状で電子化されていない情報を早急に電子化 |
(2) | 情報形式と図面の標準化 |
(3) | 現状システムの改善から目指すターゲットシステムの構築までのロードマップの明示 |
また、情報システムの構築にあたっては、NASDA主導の下、コンピュータ画面上でものづくりを実施する3次元ディジタル設計、シミュレーション、モデリングおよび製作をベースとした新しい生産方式(バーチャルエンジニアリング)をプロジェクトへ適用する仕組み作りを推進する。
NASDAと関連機関・企業間でマルチメディア仮想空間における共同作業を実現する高度なネットワーク環境の設備充実と、安全性、安定性の確保
データ操作・交換、セキュリティ等に関する一貫した情報管理ポリシーの策定、および、これに則った各情報管理システムの構築
仮想現実やマルチメディア表示等のインタフェース技術を利用し、高度化、大量化する情報処理の内容をユーザに効率的に伝えるシステムを構築
プロジェクトの記録・再現・分析を支援する環境を構築し、開発プロセスの解明および失敗の評価・予測・改善のための定量的システムを構築
開発で得られたノウハウ情報(ナレッジ)を伝承維持する技術、開発品の信頼性を保証するための品質保証技術、調達部品類を評価する技術、ソフトウェアの信頼性を独立して検証する技術(IV&V)等の整備および保持
宇宙機のライフサイクルを通した安全性、耐久性、維持・補修の容易さ、機能変更に対する柔軟さ等をも視野に入れた広義の信頼性(Dependability)を実現
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