プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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「きぼう」利用多様化のためのパイロット・プロジェクト選考結果について

平成13年6月13日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 国際宇宙ステーションサービスモジュールに本年7月下旬に搭載予定の高精細度テレビジョン(HDTV)カメラを利用した「きぼう」利用多様化のためのパイロット・プロジェクトの最終選考結果について報告する。

2. 経緯

(1)  国際宇宙ステーションにおける日本の実験施設「きぼう」の本格的な利用に向け、宇宙開発委員会宇宙環境利用部会報告(平成12年度)において、「きぼう」の初期利用フェーズの推進方策として、「軌道上研究所」という位置付けを維持しつつ、科学研究や技術開発以外の利用分野や、民間企業などの利用者負担による利用形態への「きぼう」利用の多様化を段階的に推進することが適当とされた。また、そのための推進方策の一つとして、利用の促進及びリスク回避のため、事業団が複数のパイロット・プロジェクトを試行し、その結果を評価した上で、順次、本格的な民間利用に移行するものとしている。
(2)  同報告を受け、本年3月9日に第1回「きぼう」利用シンポジウムを実施し、平成13年度に実施する第1回パイロット・プロジェクトとして、国際宇宙ステーションの一部としてロシアが開発・提供したサービスモジュールに宇宙開発事業団が搭載する高精細度テレビジョン(HDTV)カメラの撮影機会の一部を一般に開放することを発表した。  このため、映像・音声のリアルタイム通信、ビデオ撮影、及び事業団が保有する映像等を組み合わせて利用する事業を当事業団と共同で実施する事業提案を公募した(別紙1)。3月15日から4月20日まで募集を受け付けたところ、10件の応募があった(別紙2)。
(3)  事業団内外の委員から構成する選考委員会(別紙3)で各提案を検討した結果、1件を選定した。

3. 公募の選考方法

(1) 提案書類をもとに以下の観点による評価細目について評価した。
 ○利用拡大効果
 ○利用多様化効果(新規性)
 ○実現性
 ○発展性
(2) 書類選考結果集計及び事務局による技術評価をもとに、第一次選考を実施した。
(3) 一次選考の3テーマについて提案者による企画提案会を開催し、各委員が優先順位をつけた。
(4) 企画提案会による評価及び事務局による技術評価・パイロット度評価をもとに最終選考会を実施し、満場一致で1テーマを選定した。

4. 選考結果

(1)選定テーマ
「ISS映像を活用したCM制作実験・実施プロジェクト」
 HDTVを利用して、無重力状態で美しい映像を撮影し、宇宙のリアリティを感じさせる広告撮影の技術実験を行う。可能な限り実際の広告制作まで行い、具体的な産業利用例として社会にアピールして産業界での研究開発以外での利用のさきがけを狙うとともに、ISSの公共性を考慮して広く国民の賛同を得られる映像を心がける。
(2)提案者
(株)電通

5. 今後の調整事項等

(1)  今後、提案者と共同研究契約を締結する。本計画は「きぼう」を使った広告撮影という新しいタイプの利用に向けた実験であり、また、同時に「きぼう」の多様な利用方法を広報することをも目的とした共同研究であり、実施にあたっては相互に応分の貢献をするものとする。
 実施により得られた成果(映像)は共有とする。
(2)  提案者側は早期の実施を希望しており、実施時期等技術的事項についてロシア宇宙庁と調整を行う。
(3)  選考委員会の指摘を踏まえ、選考の過程で不採用となったその他の提案についても、可能な限り別途募集中の「きぼう」利用多様化フィジビリティスタディへの振替や宇宙開発事業団の他の計画での実施等引き続き可能性の検討を行い、利用拡大に配慮する。



事業提案の公募


1. 本パイロット・プロジェクトの目的

「きぼう」利用の拡大・多様化の主な目的として、
  ○科学技術分野だけではなく文化的利用等まで利用分野が広がること
  ○利用者が一部の研究者や専門家だけでなく広い層に及ぶこと
  ○民間資金による利用が広がること
等があげられる。これらを実現するためには、
  ○新しい分野の利用機会をより多くの人に提供すること(機会の提供)
  ○利用しやすい制度の導入や利用料金の設定及びこれらの団法上の整理(新制度の検討)
等が必要であり、これらに資するための先導的事業として、パイロット・プロジェクトを「きぼう」初期利用までの間複数回実施することを予定している。
 また、「きぼう」利用の多様化に的確に対応していくため、将来実施する可能性のある利用アイディアも募集しており、それらのフィジビリティ・スタディも平成13年度に実施する。

2. 第1回パイロット・プロジェクト実施要領

本年7月にサービス・モジュールに搭載予定のHDTVカメラ利用を中心とするパイロット・プロジェクトの提案を募集し,1事業者を選定して13年度に実施する。

(1)利用リソース(以下をパッケージ利用)
○国際宇宙ステーションクルーによる軌道上イベントのリアルタイム映像(最長10分)。
○国際宇宙ステーションクルー(最大2名)により撮影するビデオ映像(総計約30分)。
○その他、現在事業団が保有している、宇宙環境利用に関する映像データで第三者に提供可能なものも適宜活用。
(2)実施枠組み
共同研究実施規則により実施する。
○費用分担の考え方
 共同研究実施規則の「合理的な費用分担」の考え方に基づき、国際宇宙ステーションの利用促進を考慮しつつ個別内容に応じて提案者と調整する。
 第1回募集は既存のプロジェクトを利用して実施するので、先方の提案を採用することにより新たに発生する追加的な経費は先方負担となる。
○HDTVカメラで取得する映像の取扱い
 共同取得した映像は共有とし、著作権及びその隣接権(複製権等)に係る契約を別途締結する。


きぼう利用拡大・多様化パイロットプロジェクト
提案テーマ一覧(10件/受付順)


 提案内容提案者選考結果
1 ビデオ制作・販売 情報配信会社 一次選考で落選(△既存映像対象)*FSに振替
2 広告実験 広告代理店 最終選考テーマ(No.10と統合)
3 科学・教育イベント 重工メーカー、研究所、大学 最終選考で落選(△実現性)*広報実験での実施可能性を検討
4 宇宙での撮影技術向上のためのデータ収集 科学系出版会社 一次選考で落選(△アピール度)*広報実験で一部採用を検討
5 自社製品宣伝(食品(宇宙食)) 菓子メーカー 一次選考で落選(△実現性)
6 科学系の教育イベント 教育系の公共団体 書類選考で落選(△実現性)*FSに振替
7 医学実験 病院、研究所 一次選考で落選(△研究目的)
8 放送番組企画 番組企画会社、商社 一次選考で落選(△実現性)
9 放送番組企画 放送機関 最終選考で落選(△新規性)*広報実験で一部採用を検討
10 広告実験 広告代理店 最終選考テーマ(No.2と統合)


選考委員会委員


○委員長 
    池田  要   宇宙開発事業団理事(宇宙環境利用システム本部長)
 
○外部委員
中野 不二男  作家(ISS・JEM広報アドバイザー、シンポジウム準備検討委員会座長)
田村 和子   共同通信社 客員論説委員(ISS・JEM広報アドバイザー)
大島 まり   東京大学生産技術研究所 助教授(ISS・JEM広報アドバイザー)
的川 泰宣   宇宙科学研究所 教授
 
○宇宙開発事業団委員
堀川  康  
宇宙環境利用システム本部 副本部長
宇宙環境利用推進部長 
有人宇宙活動推進室主任開発部員
主任開発部員(ISS広報担当)
宇宙環境利用研究センター
次長
宇宙ステーション運用技術部長
JEMプロジェクトチームプロジェクトマネージャ
技術研究本部企画調整部長
小沢 秀司
三輪田 真
福田 義也
矢代 清高
吉冨  進
北原 弘志
白木 邦明
岩田  勉