プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

米国航空宇宙局(NASA)の国際宇宙ステーション(ISS)に関する
予算状況について(報告)

平成13年4月25日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

NASAのISS予算見直し状況について報告する。

2. 経緯

(1) 2月28日に米国ホワイトハウスは2002年度予算要求の指針を明らかにした。

(2) 4月4日ワシントンD.C.にて下院科学委員会公聴会が開催され、4月9日NASA詳細予算案が米国議会に提出された。

(3) 4月19日NASAとイタリア宇宙事業団(ASI)がASIによる居住モジュール開発に係わる二国間協力の枠組み合意を締結し、プレス発表を行った。

3. NASA予算要求の概要

2月28日にホワイトハウスから明らかにされた2002会計年度NASA予算要求の指針の概要を添付に示す。これに基づき4月9日に発表された2002年度NASA案におけるISS計画の予算概要は次の通りである。

(1) 2002年度のISS予算は約2,087百万ドルで、2001年度のそれとほぼ同額である。

(2) 昨年2001年度に計画された2002年度ISS予算と比べると、約230百万ドルの増額である。

(3) 2002年〜2006年の5年間のISS予算は、昨年2001年度に計画された予算と比べて、約1,000百万ドルの増額である。(約4,000百万ドルと見積もられていたコスト超過から、約3,000百万ドルの減額である)

4. NASAの予算見直し状況

NASAの今後5年間のISS計画におけるコスト超過問題は要求内容の拡大、運用の複雑化およびスケジュールの遅延が主な原因であるが、予算内に収まるよう下記のとおり予算の見直しの検討を行っている。

(1) 国際パートナーの主要ハードウェア要素の受け入れが可能となるノード2の打上げ(2003年予定)をもって、米国のコア部分の建設を完了とする。

(2) 米国推進モジュールは開発を中止する。
ISS軌道高度維持機能をロシアのプログレス機及びシャトルに依存することになるが、欧州宇宙機関(ESA)が開発している自動輸送機(ATV:Automated Transfer Vehicle)によるバックアップの可能性を検討する。

(3) 米国居住モジュールの開発は中断する。
NASAとASIはASIによる居住モジュールの開発に係わる二国間協力の枠組み合意を締結した。詳細については今後詰めの協議が行われる予定。

(4) 搭乗員帰還機(CRV:Crew Rescue Vehicle)の開発は中断する。
この場合、緊急時の搭乗員帰還機能は現在ISSにドッキングしているロシア・ソユーズ機に依存することになる。
また、NASAはCRVの開発についてESAによる協力を検討している。

(5) NASAのリサーチ・コミュニティの予算を40%削減する。

5. 今後のスケジュール

(1) 4月末 NASAによる具体案の検討
(2) 4月〜5月 NASA具体案について国際パートナーとの調整
(3) 6月 UF6までのISS組立スケジュール改訂(G改訂)
(4) 9月末 組立完了までのISS組立スケジュール改訂



NASA予算要求指針の概要

2月28日にホワイトハウスから明らかにされた2002会計年度NASA予算要求の指針の概要を以下に示す。

A. NASA全体の予算

NASAの2002年度予算として145億ドルを供給。
これは2001年度の2%増、2000年度の7%増となる。

B. ISS(国際宇宙ステーション)

ISSの建設・運用に係わる予算要求指針は次の通りである。

(1) ISSのコスト増分は2001年・2002年で約10億ドル、2003年〜2007年の5年間で約40億ドルが見込まれる。

(2) 次の最優先目標を維持しつつ、今後5年間の予算内に収まるよう予算案を策定する。
(a) 恒久的有人宇宙滞在
(b) 世界水準の宇宙研究
(c) 国際パートナー提供要素の組込み


(3) 国際パートナーの主要ハードウェア要素受け入れが可能になったところで、米国の基本部分は完成とする。

(4) コスト増分は、基本部分以外の米国要素(ハイリスクである居住モジュール、CRV、推進モジュールを含む)の資金で部分的に相殺する。

(5) 基本部分以外の米国要素の開発は、コスト見積精度や技術的問題の解決等に基づき将来判断する

(6) NASAは次の改革を実施
(a) コスト見積の信頼性向上
(b) ISSプログラム・マネジメント機能をジョンソン宇宙センターからNASA本部へ移転(新計画の承認までの間)
(c) ハードウェアやサービスの調達に競争原理を導入し、革新とコスト削減アイデアを受け入れる

C. スペース・シャトル

スペース・シャトルに関する予算要求指針は次の通り。


(1) 計画を維持できるレベルでの年6回

(2) 安全性向上には資金供給を継続

(3) 民営化を推進し、安全性と運営効率の改善