プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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大学との連携講座の実施状況について(報告)

平成13年2月7日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 宇宙開発事業団(NASDA)において実施中の、大学との連携講座の実施状況について

2. 経緯等

(1) 背景
ア) NASDAにおいては、宇宙開発委員会基本問題懇談会及び外部評価委員会などにおける議論(参考1)に基づき、広く外部機関との協力関係を構築することについて施策を検討してきた。
イ) これに関して、宇宙インフラストラクチャー研究会を通じた緩やかな連携、共同研究の拡充、研究者の招聘拡充などを通じて外部研究機関との協力関係の緊密化を図ってきた(参考2)ほか、新しい試みとして連携大学院制度を取り入れ大学との連携を強化することとした。
(2) 大学との連携の目的、意義等
ア) 専門性の高い教員、充実した実験設備などを有して宇宙開発の各分野に於いて教育研究を積極的に推進している大学と、それぞれの専門分野に応じて連携することにより、
i) 例えばロボティクス・構造系等の先端技術分野における理論研究(大学)と実践(NASDAでの技術開発)との連携
ii) 共同研究の構築などによる両者の補完体制の強化を図ることができ、これらを通じてNASDAの開発業務へのフィードバック、研究開発の活性化や人的資源の補強等が期待できる。また、大学に於いても人材の育成、研究課題の方向付けなどの効果が期待できる。
イ) NASDAの職員が連携教授又は助教授に任用されることを通じて、職員の技術能力強化が期待できる。
ウ) NASDA職員の専門性の高度化(NASDA構内に設置された連携大学院における教育を通じた博士号の取得等)が図れる。

3. 連携講座の概要

(1) 連携の態様
 NASDAが実施している大学との連携講座は、その形態により次の2つに大別できる。

ア) 連携大学院
教育、研究の高度化、学際化を図るため、NASDA職員が大学の教授又は助教授(併任教員又は客員教員)に就任し講義を行うとともに、NASDAにおいて学生に直接研究指導(修士論文等)を行う方式。当該教官は単位の認定も含めた指導を行う。
イ) 出張講義
NASDAと大学との共同事業として、NASDAから大学に非常勤講師を派遣して、NASDAが研究・技術開発活動の成果をもとにした専門的知見を紹介する方式。

(2) 大学別の実施状況
 大学別の連携状況は、現在、次のとおりである。

大学対象連携分野形式
東京工業大学大学院 大学院 宇宙環境利用、ロボティクス、構造系 連携大学院
千葉大学大学院 大学院 地球観測 連携大学院
鹿児島大学大学院 大学院 宇宙環境計測 連携大学院*1
東京都立科学技術大学大学院 大学院 機構系 連携大学院*2
早稲田大学理工学部 学部3〜4年生 (機械) 出張講義

*1)平成13年度から連携大学院発足予定。これまでは、オムニバス形式(学部学生対象)による出張講義を実施。
*2)平成14年度の連携大学院設置に向けて準備中。これまでは、オムニバス形式による講義(学部学生対象)を実施。

4. 今後の進め方

  1. 先端技術開発の推進等、連携の意義が大きいと認められる大学があれば、今後とも積極的に連携を進める。
  2. 連携の形式は、連携大学院形式を最優先するものとする。
  3. 出張講義に関しては、開始3年後を目処に評価を行い、その後の継続の有無(継続の場合の実施形態を含む)を決定するものとする。





外部機関との協力に関する提言等


宇宙開発委員会基本問題懇談会(平成11年5月)

第1節 資源に係る事項
2.技術開発能力と技術蓄積(技術開発のあり方-技術研究部門)
 前述にように外部機関との協力も重要である。このため、技術研究の中心的役割を果たすべき技術研究本部については、これまで述べたプロジェクト支援等の機能の強化に加え、研究者開放型とし、外部の研究者や企業の技術者等との連携のもとに、技術力強化を進めていくことも重要である。

宇宙開発事業団外部評価委員会(平成10年11月)

 7.2 提言-よりよい宇宙開発事業団のために
提言3:日本に於ける宇宙開発の利益をバランス良く拡大するための外部との関係の強化

宇宙開発委員会特別会合(平成12年5月)

第1節 改革の視点
2.宇宙開発事業団の組織・体制・業務運営
専門的人材の育成・活用及び宇宙機関等との連携・協力
 宇宙開発事業団が今後、信頼性の高い宇宙開発を推進していくためには、事業団職員の能力強化を図り、併せて外部の専門家の経験・能力を十分活かすとともに、航空宇宙技術研究所,宇宙科学研究所など関係機関との連携・協力を強化していくことが必要である。

宇宙開発委員会基本戦略部会(平成12年12月)

第3章 社会との調和ある宇宙開発
3.2 宇宙開発人材
 また、今後宇宙開発が人類に与えるであろう大きなインパクトを考えるとき、…(中略)…産学官は連携協力し、人材の交流を図るのみならず連携大学院の推進、インターンシップの拡大、若手技術者・研究者の登用等を図ることが重要です。宇宙開発機関は、宇宙実証機会の提供などを含め、教育プログラムを支援する体制についても検討する必要があります。



NASDAにおける外部機関との連携状況


 宇宙開発委員会等における議論を踏まえ、NASDAは外部機関との連携強化を次のとおり図っているところである。

1. 宇宙インフラストラクチャー研究会

 我が国の宇宙技術に関する戦略や研究構想を検討するため、平成11年4月に、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、通信総合研究所(CRL)や関連する大学、国立研究所などの研究者の緩やかな連携により設置された標記研究会に積極的に参画し、将来の技術シナリオや宇宙インフラ構想について議論を行っている。
 研究会には約300名の技術者、研究者が参加しているが、NASDAは全ての戦略ワーキンググループにおいて主査や幹事などとして積極的に関与している。

2. 研究者の招聘拡充

平成10年度 107名
平成11年度 169名
平成12年度 278名(平成13年2月1日現在)

3. 共同研究の実施件数

平成10年度 195件
平成11年度 197件
平成12年度 197件(平成12年12月1日現在)



東京工業大学大学院理工学研究科における連携(技術研究本部)


(概要)

講義題目 宇宙開発工学特論
対象 機械系専攻の大学院生約30名
講義回数 15回
実施時期 平成12年後期(平成12年10月〜平成13年1月)から
身分 連携大学院の教授、助教授。単位の認定を行う。
その他 修士論文及び博士論文の審査を実施。また、平成13年度から大学院生2名を宇宙センターに受入れ、修士論文の指導を予定。

(参考:教官)


小田光茂 技術研究本部 先端ミッション研究センター主任開発部員 博士(工学)
森野美樹 技術研究本部 制御・推進系技術研究部主任開発部員 工学博士
稲場典康 技術研究本部 先端ミッション研究センター副主任開発部員



東京工業大学大学院理工学研究科における連携(宇宙環境利用分野)


(概要)

連携講座名 物質科学創造専攻
NASDA側組織 宇宙環境利用システム本部 宇宙環境利用研究センター
実施時期 平成9年4月〜(継続中)
経緯/現状
  • 東京工業大学の"レベルの高い外部研究機関との開放的な協力体制の下で、博士後期課程を主体としたプロジェクト型教育の実践"を目指した物質科学創造専攻と連携を開始。
  • NASDA職員2名を客員教授として派遣し、大学院にて講義を行っている。
  • 東京工大の修士及び博士課程の学生がNASDAで進めている微小重力科学研究に携わり、修士論文及び博士論文の作成を行っている。これまで大学院生2名を宇宙環境利用研究センターに受入れ、1名が修士号取得、1名は現在修士論文の指導を行っている。
  • NASDA職員が本研究室の博士課程に籍を置き、微小重力科学関連研究を行っている。現在博士課程には3名が所属しており、平成12年3月にはNASDA職員1名が博士号を取得した。