宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
スペースシャトル・アトランティス号(STS-104/国際宇宙ステーション組立ミッション(7A))の運用結果について報告する。
スペースシャトル・アトランティス号(STS-104/7A)の打上げから帰還までの日程は、以下の通りである。第4項に示す不具合のためシャトルとのドッキング期間が予定より1日延期された。また天候不良により帰還も1日延期された。
●打上げ日時 | 2001年7月12日(木) 2001年7月12日(木) |
午後 6時 4分 午前 5時 4分 |
(日本時間) (米国東部夏時間) |
●ドッキング日時 | 2001年7月14日(土) 2001年7月13日(金) |
午後12時08分 午後10時08分 |
(日本時間) (米国中部夏時間) |
●ドッキング解除日時 | 2001年7月22日(日) 2001年7月21日(土) |
午後 1時54分 午後11時54分 |
(日本時間) (米国中部夏時間) |
●着陸日時(予定) | 2001年7月25日(水) 2001年7月24日(火) |
午後12時39分 午後11時39分 |
(日本時間) (米国東部夏時間) |
項目 | 概要 | |||||||||||||
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STSミッション番号 | STS-104 | |||||||||||||
オービタ名称 | アトランティス号(アトランティス号としては24回目の飛行) | |||||||||||||
打上げ日時 | 2001年 7月12日午前 5時 4分(米国東部夏時間) 2001年 7月12日午後 6時 4分(日本時間) ロンチウィンドウ(打上げ可能時間帯):5分以内 |
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打上場所 | フロリダ州NASAケネディ宇宙センター(KSC)39B発射台 | |||||||||||||
飛行期間 | 約13日間 | |||||||||||||
搭乗員数 |
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軌道高度 | 投入点高度:約226km (122海里) ランデブー高度:約398km (215海里) |
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軌道傾斜角 | 51.6度 | |||||||||||||
帰還日時(予定) | 2001年7月24日午後11時39分(米国東部夏時間) 2001年7月25日午後12時39分(日本時間) |
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帰還場所 | 主帰還地:フロリダ州NASAケネディ宇宙センター(KSC) 代替帰還地:カリフォルニア州 エドワーズ空軍基地 |
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主要搭載ペイロード | カーゴベイ | エアロック 高圧酸素ガスタンク・高圧窒素ガスタンク各2基 IMAX 3Dペイロードカメラ |
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ミッドデッキ | ISSへの補給品、実験装置等 |
(1) | スペースシャトル・アトランティス号によるSTS-104/7Aミッションは、シャトルによる国際宇宙ステーション(ISS)の組立フライトとしては10回目、ロシアのロケットによる打上げを含めると13回目の組立フライトである。(プログレス補給船による補給フライト4回を除く) | ||
(2) | エアロック及び高圧ガスタンク4基(窒素タンク2基、酸素タンク2基)が、3回の船外活動(EVA)の支援を受けながら、前回の6Aフライトで取り付けられたステーション・ロボットアーム(通称:カナダアーム2)を使って、取り付けられた。 注)このエアロックはNASAにより「クエスト」と命名された。 エアロックエアロックは、下図(図2-1)に示すとおり与圧された2つの円筒形の容器(装備ロックおよびクルーロック)から構成されている。 エアロックはISSでの船外活動の際の出入り口となり、宇宙服の保管・装着、バッテリの充電、水や酸素の補給に必要な設備を備えている。また、米国の船外活動宇宙服(EMU)に加え、ロシアのオーラン宇宙服の使用にも対応できる。 エアロック内には、ロシア製の減圧ポンプ、手動均圧弁、及び与圧調整装置があり、エアロック内を加圧/減圧することができる。スペースシャトルのエアロックでは、船外に出るときにエアロック内の空気を全て宇宙空間に放出しているが、ISSに取り付けるエアロックは内部の空気の90%を回収することができる。
装備ロックでは、宇宙服の脱着や整備が行われる他、EVA前に体を慣らすためのプレブリージングが行われる。内部には2つのシステムラックと収納スペースがある。 ![]() 図2-1 エアロック
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(3) | 3回目のEVAはエアロックから行ない、ISSから実施する初のEVAとなった。 | ||
(4) | アトランティス号のメインエンジン3基のうち、1基には新型のBlock-IIエンジンが初めて使用された。スペースシャトルの新型メインエンジンこのフライトで使用されるアトランティス号のメインエンジン3基のうち、1基には新型のBlock-IIエンジンが初めて使用された。他の2基のエンジンには現在主流のBlock-IIAエンジンが使用された。 Block-IIエンジンは、新型の高圧水素ターボポンプを採用し、精密鋳造技術を取り入れることにより、溶接個所を大幅に削減し、信頼性を大幅に向上すると共に、飛行後の分解点検作業の手間を大幅に減らすことができるため、運用経費の削減にも寄与することができる。 シャトルのメインエンジンは、Block-I(1995年から1998年)、Block-IIA(1998年から2002年)と段階的に改良が行われ、Block-IIで当初目標にしていた改良は一段落する。 ![]() 図3-1 アトランティス号に取り付けられる新型のBlock-IIエンジン |
大きな問題は起きなかったが、下記不具合対応のために約半日程スケジュールが遅れ、飛行6日目にシャトルドッキング期間の1日延長が決定された。
(1) | 飛行5日目にエアロックとユニティ間の冷却水の一つである中温ループ(MTL:Moderate Temperature Loop)配管の接続を行っていた際に、水漏れが発生。冷却ループの圧力低下によりセンサーが作動し熱制御系が停止した。熱制御系は直ぐに再起動されたが、水漏れの原因究明および対応に時間を要した。 |
(2) | 同じく飛行5日目にエアロックとユニティ間のモジュール間換気装置(IMV:Inter Module Ventilation)バルブから空気漏れが発生。バルブを予備品と交換したがリークが止まらないため、デスティニー内にあった同型のバルブ(2003年のノード2取付けまでは不要)と交換した。 |
本ミッションによりISSは次のとおりとなった。
(1) | ISSのエアロックが使用可能となり、シャトルがドッキングしていない期間でもISS組立や保全のためのEVAが可能となった。(米国及びロシアの宇宙服を使用可能。) |
(2) | エアロックの周囲に高圧ガスタンクを設置することにより、これまでロシアに依存していた空気の供給機能を米国側も持つことが可能となった。 |
ISS組立フライト(STS-105/7A.1)
次回ISS組立フライトである、スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-105 / 7A.1)の打上げが8月9日以降に予定されている。
STS-105/7A.1フライトでは第2次滞在クルーと第3次滞在クルーの交替が行われる。