プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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南インド洋亜熱帯海域にダイポール現象を発見 
〜大気海洋相互作用解明の新時代を開く〜

平成13年1月12日

宇宙開発事業団
海洋科学技術センター

 宇宙開発事業団(理事長・山之内秀一郎)及び海洋科学技術センター(理事長・平野拓也)の共同プロジェクトである地球フロンティア研究システムの山形俊男気候変動予測研究領域長(東大教授)、スワデイヒン・K・ベヘラ博士らは、太平洋のエルニーニョ現象やインド洋のダイポール・モード現象に匹敵する大規模な気候変動が南インド洋の亜熱帯域にも存在することを世界で初めて発見し、サブトロピカル・ダイポール・モード(SDM)と命名した。
 この成果は、平成13年1月15日発行の学会誌Geophysical Research Lettersに掲載される予定です。

 

背景

 平成11年9月に、地球フロンティア研究システムの山形領域長とサジ・N・ハミード研究員らはインド洋熱帯域のダイポールモード現象を発見し、ネイチャー誌に論文が掲載された。(9月22日発表)これにより、これまでエルニーニョ等では説明のつかなかったインド洋東部の干ばつや東アフリカ沿岸諸国の洪水が説明できるようになったが、中央アフリカや南アフリカの洪水など、依然として説明のつかないものも残されていた。

成果

 本研究で、過去40年間に及ぶ海面水温、風、降水量などの大気海洋データを詳しく調べたところ、南インド洋中央の亜熱帯海域においてもダイポール現象が数年の間隔で発生することを発見した。
 また、本現象は平成11年9月に発見されたダイポール現象とは因果関係のない独立した大気海洋相互作用現象であることが明らかとなり(図1)、(図2(c))、これまで大平洋のエルニーニョやインド洋のダイポールモード(DM)では説明ができなかったアフリカ大陸中央部や南部の洪水や干ばつに、特に大きな影響を及ぼすものであることが判った。(図2(a)、図2(b))(正のSDM年にはアフリカ大陸中南部における雨量が増し洪水、負のSDM年には干ばつの原因となる)
 今後、大気海洋結合モデルを用いてコンピュータ上でこれを再現する実験を実施し、それに基づいて気候変動予測の精度向上を測ることにより、複雑な大気海洋相互作用現象の解明および周辺諸国の気象災害の防止に貢献することが可能となる。