宇宙開発事業団
日本原子力研究所
海洋科学技術センター
宇宙開発事業団(理事長 山之内秀一郎)、日本原子力研究所(理事長 村上健一)及び海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)は、平成11年度から世界最高速のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の製作を進めて来ました。 この度、海洋科学技術センター横浜研究所(神奈川県横浜市金沢区昭和町)内にある「シミュレータ棟」へ計算機システム本体の搬入を開始しました。
本「地球シミュレータ」は、旧科学技術庁(現 文部科学省)が平成9年度に開始した『地球シミュレータ計画』の一環として、宇宙開発事業団、日本原子力研究所及び海洋科学技術センターによって設置された共同チーム「地球シミュレータ研究開発センター」が開発を進めているスーパーコンピュータであり、コンピュータ上に地球温暖化やエルニーニョ現象等の地球規模の様々な諸現象を映し出す、いわば「仮想地球」を実現することにより、地球環境の変動現象の解明と予測を目指すもので、平成13年度中の完成を目指して開発が進められてきました。
また、「地球シミュレータ」は、5,120台のベクトルプロセッサを強力なネットワークで結合し、最大性能40テラフロップス、主記憶容量10テラバイトの性能を持つ世界最高速の極めて大規模な計算機システムであり、このために、0.15μmCMOSテクノロジーによる1チップベクトルプロセッサの実現、筐体サイズの縮小化や低消費電力化を目指した高密度実装技術等最先端のハードウェアテクノロジーを駆使して製作されています。
さらに、シミュレータ棟は、「地球シミュレータ」を設置するために、海洋科学技術センターが横浜研究所内に建設した建物(設置面積;50m×65m)であり、「地球シミュレータ」の正常な動作を確保するため、電磁波シールドや免震装置等特殊な設備を備えています。
「地球シミュレータ」の稼動後は、地球規模の気候変動の解析・予測や長期間にわたる地球変動現象の解明等が可能となり、地球観測衛星やブイ等からの観測データ等を積極的に活用しながら、地球温暖化、大気や海洋の汚染、エルニーニョ現象、集中豪雨及び台風の進路予測等の複雑な現象を理解することができ、経済社会活動の発展や地球環境問題の解決への貢献できるものと期待されています。さらに地殻変動、地震発生等の現象の解明への貢献も期待されています。
・「ベクトルプロセッサ」
ベクトル(配列)演算をーつの命令で高速に処理するプロセッサ(処理装置)
・「テラフロップス」
TERA FLOating point operations Per Secondの略。性能を示す指標で、1秒間に処理可能な浮動少数点演算の回数を「テラ」(1兆)の単位で示す。
(teraはギリシア語で「怪物」の意味で、1兆(10の12乗)倍を表す接頭語)
・「テラバイト」
terabyte情報量の単位であり、TBと表記する。漢字1文字を表現する為に必要な情報量は2バイトである。(2の40乗、1TB=1000GB)
・「μm」
マイクロメートル。長さの単位。マイクロは、百万分の1を表す。
(髪の毛の太さの約100分の1程度の長さ)
・「CMOS」
Complementary Metal-Oxide Semiconductorの略。半導体回路の一種で、2種類のMOS FETと呼ばれるトランジスタをペアで使用する。日本語では相補型金属酸化膜半導体と呼ばれる。
現在のマイクロプロセッサの多くは、CMOSプロセスで製造されており、CMOSは小電力消費であり、広い範囲の電圧で作動するため携帯型の機器などに広く用いられている。
・「チップ」
ICの中に実装されているシリコン片のこと。この中に回路が搭載されている。複数のチップを1枚ウェハ上に作成し、これを切断/分割して用いる。
・「筐体」
コンピュータ本体を収納する入れ物(ケース)のこと。さまざまな大きさ、形のものがある。
・「エルニーニョ現象」
5〜8年に1度、クリスマスの頃ペルー沖の暖流が南下し、海面水温が平均より1〜5度も高くなる現象。世界各地に異常気象をもたらす。