プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-102/国際宇宙ステーション組立ミッション(5A.1))の運用結果について(報告)

平成13年3月28日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-102/国際宇宙ステーション組立ミッション(5A.1))の運用結果について報告する。

2. 飛行日程

 スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-102/5A.1)の打上げから帰還までの日時は、以下の通りである。

打上げ日時 2001年3月 8日(木) 午後 8時42分(日本時間)
2001年3月 8日(木) 午前 6時42分(米国東部標準時間)
ドッキング日時 2001年3月10日(土) 午後 3時38分(日本時間)
2001年3月10日(土) 午前 0時38分(米国中部標準時間)
ドッキング解除 2001年3月19日(月) 午後 1時32分(日本時間)
日時 2001年3月18日(日) 午後10時32分(米国中部標準時間)
着陸日時 2001年3月21日(水) 午後 4時31分(日本時間)
2001年3月21日(水) 午前 2時31分(米国東部標準時間)

(STS-102 / 5A.1フライト飛行概要を別紙1に示す。)

3. スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-102/5A.1)のミッションの概要

 スペースシャトル・ディスカバリー号によるSTS-102/5A.1ミッションは、シャトルによる国際宇宙ステーション(ISS)の組立フライトとしては8回目。ロシアのロケットによる打上げを含めると11回目の組立フライトである。(プログレス補給船による補給フライト3回を除く)

このフライトには、第2次ISS滞在クルー3人が搭乗し、第1次ISS滞在クルー3人との交替が行われた。第1次クルー3人は同フライトで帰還した。

 また、このフライトではHRF(Human Research Facility)実験ラック等を搭載した多目的補給モジュール(MPLM:Multi Purpose Logistics Module)「レオナルド」(別紙2に概要を示す)が打上げられた。HRF実験ラックは有人医学分野のライフサイエンス研究に使われるラックで、NASDAの中性子モニタ装置(BBND:Bonner Ball Neutron Detector)が含まれている。

本ミッションによりISSは次のとおりとなった。

(1) デスティニー内にシステムラックが追加されることにより、デスティニーは実験室としての機能が十分発揮できるようになった。
(2) 初めての実験ラックが設置され、本格的なISSでの実験の準備が整った。
(3) Kuバンドが使えるようになり、カメラ画像や大量の実験データをリアルタイムでダウンリンク出来るようになった。
(4) ISS外部に曝露機器の保管場所(ESP)が用意された。

4. 運用結果

ISSとシャトルの約9日間のドッキング期間中に下記の作業が行われた。

(1)船外活動(EVA)

合計2回のEVAが実施された。1回目は7時間の予定に対し作業の遅れから最長となる8時間56分にも及んだ。 2回目はほぼ予定通りの6時間21分で完了した。この結果ISS組立のEVAは合計18回で通算124時間となった。
シャトルのICC(Integrated Cargo Carrier)に搭載された次の曝露機器が2回のEVAでISSに取り付けられた
(a) LCA(Lab Cradle Assembly):デスティニー上部の結合機構
(b) RU(Rigid Umbilical):配線トレイ
(c) ESP(External Stowage Platform):外部保管プラットフォーム
(d) PFCS(Pump and Flow Control Subassembly):軌道上交換ユニット

(2)レオナルドの取り付け

1回目のEVAでレオナルド取り付けのための準備が行われた後、シャトルのロボットアームを使いISSの共通結合機構(CBM)に取り付けられた。レオナルドに搭載されていた実験ラックやシステムラックをISSへ運び込んだ後、今度はISS内の不用品等をレオナルドに積み込んだ。このレオナルドへの積み込み作業が予想以上に時間がかかった為に、滞在期間を1日延長することになった。
レオナルドはISSから切り離しシャトルへ搭載され、地球へ戻ってきた。

(3)リブースト

合計3回のリブーストが行われ、本ミッション中に合計約11.3km高度を上げた。
1回目は最初のEVA中に落としてしまった工具との距離を十分保つために予定より1日早く実施された。
リブーストはシャトルの小さなスラスタ(バーニアエンジン)を予め設定された方式で断続的に緩やかに噴射して行った。

(4)クルーの交替

第1次滞在クルー3人と第2次滞在クルー3人の交替が3段階に分けて実施された。第1次滞在クルーは11月2日に到着して以来137日に及ぶISSにおける任務をISSとシャトルのドッキング解除をもって正式に終了した。

(5)中性子モニタ装置BBND

本ミッションに於いてデスティニーに据え付けられたBBNDは、3月23日(金)にセットアップ及び起動作業が行われた。その結果、BBNDは正常に起動し、中性子計測実験が開始された。
第1回目の地上側へのBBNDデータのダウンリンクは4月3日を予定。
(5Aフライト後より5A.1フライト後迄のISSコンフィギュレーションを別紙3に示す。)

5. 次回ISS組立フライト予定

次回ISS組立フライトは、スペースシャトル・エンデバー号(STS-100 / 6A)であり、2001年4月19日(木)に打上げが予定されている。
次回フライトではカナダ製の遠隔マニピュレータシステム(SSRMS)が取り付けられる。また、実験ラック・保管ラックを搭載したイタリア製のMPLM「ラファエロ」も打ち上げられる。



STS-102 / 5A.1フライト飛行概要


項目概要
STSミッション番号 STS-102
オービタ名称 ディスカバリー号(ディスカバリー号としては29回目の飛行)
打上げ日時 2001年 3月8日午前 6時42分(米国東部標準時間)
2001年 3月8日午後 8時42分(日本時間)
ロンチウインドウ (注) 5分以内
打上場所 フロリダ州NASAケネディ宇宙センター(KSC)39B発射台
飛行期間 約13日間
搭乗員数 7名
コマンダー ジェームス・ウェザビー
パイロット ジェームス・ケリー
ミッションスペシャリスト アンドリュー・トーマス
ミッションスペシャリスト ポール・リチャーズ
ISS搭乗クルー ユーリ・ウサチェフ(コマンダー)
ISS搭乗クルー スーザン・ヘルムス
ISS搭乗クルー ジェイムス・ボス
ISS帰還クルー ウィリアム・シェパード(コマンダー)
ISS帰還クルー ユーリ・ギドゼンコ
ISS帰還クルー セルゲイ・クリカレフ
軌道高度 投入高度:約320km(173海里)
軌道傾斜角 51.6度
帰還日時 2001年3月21日午前 2時31分(米国東部標準時間)
2001年3月21日午後 4時31分(日本時間)
帰還場所 フロリダ州NASAケネディ宇宙センター(KSC)
主要搭載ペイロードカーゴベイ 多目的補給モジュール(MPLM)「レオナルド」
ICC(LCA、RU、ESP、PFCS等を搭載)
実験ペイロード(WSVFM、GAS、SEM-8)
ミッドデッキ ISSへの補給品、実験装置等
(注)ロンチウィンドウ:打上げ可能時間帯



多目的補給モジュール(レオナルド)の概要
(MPLM:Multi-Purpose Logistics Module)


MPLMはイタリア宇宙機関ASIが開発した、与圧補給品をISSへ運ぶモジュールである。今回の「レオナルド」に加え、「ラファエロ」、「ドナテロ」の計3機開発されている。
MPLMは、ロボットアームでISSの共通結合機構CBMに結合し、クルーがラックや補給品を搬入/搬出する。作業終了後は、CBM機構を外して再度シャトルに積み込み帰還する。
MPLMには、最大16台のラックを搭載できる。今回は、1台のHRF実験ラックに加え、6台のシステムラック、3台の補給品保管ラック、及び4台の補給品保管プラットフォームが搭載されている。


シャトル・カーゴベイ内にあるレオナルド(ISSから撮影)



5Aフライト後より5A.1フライト後迄の
ISSコンフィギュレーション



図3-1 5Aフライト終了時のISS



図3-2 3Pフライト後のISS



図3-3 5A.1フライト ミッション中のISS



図3-4 5A.1フライト終了時のISS