プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル・ディスカバリー号
(STS-105/国際宇宙ステーション組立ミッション(7A.1))の運用結果について

平成13年9月5日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-105/国際宇宙ステーション組立ミッション(7A.1))の運用結果について報告する。

2. 打上げスケジュール

 スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-105/7A.1)の打上げから帰還までの日程は、以下の通りである。

打上げ日時 2001年8月11日 (土) 午前 6 時10 分 (日本時間)
2001年8月10日 (金) 午後 5 時10 分 (米国東部夏時間)
ドッキング日時 2001年8月13日 (月) 午前 3 時42 分 (日本時間)
2001年8月12日 (日) 午後 1 時42 分 (米国中部夏時間)
ドッキング解除日時 2001年8月20日 (月) 午後11 時52 分 (日本時間)
2001年8月20日 (月) 午前 9 時52 分 (米国中部夏時間)
着陸日時 2001年8月23日 (木) 午前 3 時23 分 (日本時間)
2001年8月22日 (水) 午後 2 時23 分 (米国東部夏時間)

STS-105 / 7A.1フライト飛行概要

項目概要
STSミッション番号 STS-105
オービタ名称 ディスカバリー号(ディスカバリー号としては30回目の飛行)
打上げ日時 2001年 8月10日午後 5時10分(米国東部夏時間)2001年
8月11日午前 6時10分(日本時間)
   ロンチウィンドウ(打上げ可能時間帯):5分以内
打上場所 フロリダ州NASAケネディ宇宙センター(KSC)39A発射台
飛行期間 約12日間
搭乗員数
7名
コマンダー スコット・D・ホロウィッツ
パイロット フレドリック・W・スターコウ
ミッションスペシャリスト パトリック・G・フォレスター
ミッションスペシャリスト ダニエル・T・バリー
ISS搭乗クルー フランク・L・カルバートソン(コマンダー)
ISS搭乗クルー ウラディミール・N・ジェジューロフ
ISS搭乗クルー ミハイル・チューリン

ISS帰還クルー ユーリ・V・ウサチェフ(コマンダー)
ISS帰還クルー スーザン・J・ヘルムズ
ISS帰還クルー ジェームス・S・ヴォス
軌道高度 投入点高度:約226km (122海里)
ランデブー高度:約380km (205海里)
軌道傾斜角 51.6度
帰還日時 2001年8月22日午後
2時23分(米国東部夏時間)2001年8月23日午前 3時23分(日本時間)
帰還場所 主帰還地:フロリダ州NASAケネディ宇宙センター(KSC)
主要搭載ペイロードカーゴベイ 多目的補給モジュール(MPLM)「レオナルド」
初期アンモニア充填装置(EAS)、
材料曝露実験装置(MISSE)
実験ペイロード
ミッドデッキ ISSへの補給品、実験装置等

3. スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-105/7A.1)のミッションの概要

 スペースシャトル・ディスカバリー号によるSTS-105/7A.1ミッションは、シャトルによる国際宇宙ステーション(ISS)の組立フライトとしては11回目。ロシアのロケットによる打上げを含めると14回目の組立フライトである。(プログレス補給船による補給フライト4回を除く)

 このフライトには、第3次滞在クルー3人が搭乗し、2001年3月18日の着任以来約5ヶ月間ISSに滞在していた第2次滞在クルー3人との交替が行われ、8月13日にISSの指揮権が委譲された。

 スペースシャトルには下記を搭載した多目的補給モジュール(MPLM:Multi-Purpose Logistics Module)「レオナルド」が打ち上げられた。MPLMは過去に「レオナルド」と「ラファエロ」が1回ずつ打ち上げられている。

  1. 実験装置EXPRESSラック:2台
  2. 補給品保管ラック:6台
  3. 補給品保管プラットフォーム:4台

 EXPRESSラック2台はデスティニーに据え付けられたが、補給品保管ラックおよび補給品保管プラットフォームは搭載された補給品をISSに搬入した後、MPLMとともに地上に回収された。(別紙2参照)

 また、スペースシャトルには初期アンモニア充填装置(EAS)および材料曝露実験試料(MISSE)を収納した容器PEC(Passive Experiment Container)2個も搭載され、船外活動(EVA)にてISSに取り付けられた。(別紙3参照)

 (7A.1フライト前後のISSコンフィギュレーションを別紙4に示す。)

4. スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-105/7A.1)のミッションの意義

本ミッションによりISSは次のとおりとなった。

(1) 第3次滞在クルーの活動が開始された。
(2) 実験ラックが2台増え、計5台となった。(EXPRESSラック4台、HRF(Human Research Facility)ラック1台)
(3) 初期外部能動熱制御ループの媒体であるアンモニアが軌道上で補給できるようになった。

5. プログレス補給フライト(5P)

8月21日18:23(日本時間)にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、8月23日18:51(同)にISSとドッキングした。
このフライトには、食料・燃料その他の補給物資と伴にサービスモジュールを利用するNASDAの宇宙実験装置「微小粒子捕獲実験装置および材料曝露実験装置(MPAC&SEED)並びに映像取得実験(HDTVカメラ実験)装置」が搭載された。
ISSではHDTVカメラを用いた医学実験が開始された。(別紙5のロシアサービスモジュール(SM)を利用するNASDA宇宙実験の状況を参照)

6. 今後のフライト予定

ISS組立フライト(4R)
次回ISS組立フライトは、9月15日にソユーズ(4R)によりドッキング・コンパートメント1がバイコヌール宇宙基地から打ち上げられる予定である。



EXPRESSラック及び保管ラック(RSR)・保管プラットフォーム(RSP)


1. EXPRESSラック

EXPRESS(Expedite the Processing of Experiment to the Space Station)ラックは実験ラック(ISPR:International Standard Payload Rack)の一種であり、宇宙実験までの準備期間を短縮すると共に、インテグレーション作業を軽減するために開発されたラックである。

計8台のEXPRESSラックの内、6Aフライトで2台が運ばれ、今回更に2台がMPLM「レオナルド」に搭載され運ばれた。


図2-1 EXPRESSラック

2. 補給品保管ラック(RSR)及び補給品保管プラットフォーム(RSP)

補給品はクルーが運び出しやすいように布製バックに詰め込まれてRSRやRSPに搭載される。

  1. 補給品保管ラック(RSR:Resupply Stowate Rack)(図2-2参照)
    様々な補給品をISSに打ち上げる際に使用されるラックで、補給品のみをISSに搬入し、RSR自体はMPLMに搭載したまま回収される。
  2. 補給品保管プラットフォーム(RSP:Resupply Stowage Platform)(図2-3及び2-4参照)
    主に大型でかさばる荷物をバッグに収納してISSに運搬する際に使用される。RSP自体はMPLMに搭載されたまま回収される。

図2-3 MPLMに搭載したRSP

図2-2 MPLMに搭載されたRSR

図2-4 斜め前方から見たRSP


初期アンモニア充填装置(EAS)および材料曝露実験装置(MISSE)


初期アンモニア充填装置および材料曝露実験装置は、シャトルのカーゴベイに搭載される曝露カーゴ・キャリア(ICC:Integrated Cargo Carrier)に取り付けられ運ばれた。(下図3-1参照)

  1. 初期アンモニア充填装置(EAS:Early Ammonia Servicer)
  2. 外部熱制御システム(ETCS:External Thermal Control System)が起動されるまでの間、初期外部熱制御システム(EETCS:Early External Thermal Control System)及び太陽電池熱制御システム(PVTCS:Photovoltaic Thermal Control System)の冷媒であるアンモニアを緊急時に軌道上で充填する装置である。

  3. 材料曝露実験装置(MISSE:Materials ISS Experiment)
  4. 将来の人工衛星で使う可能性がある材料の曝露試験を行うことで開発リスクを抑え、費用を低減させる目的で実施される。これらの材料はPEC(Passive Experiment Container)と呼ばれる容器に収納された状態で運ばれ、船外活動でエアロックの外側に取り付けられた後、容器を開いて材料を曝露させた。


図3-1 シャトル・カーゴベイのICC上に搭載されたEASとMISSE(PEC)



7A.1フライト前後のISSコンフィギュレーション


図4-1
7Aフライト終了時のISS
図4-2
7A.1フライトミッション中のISS
図4-3
7A.1フライト終了時のISS


ロシアサービスモジュール(SM)を利用するNASDA宇宙実験の状況


8月21日(火): プログレス補給船(5P)が、日本時間8月21日(火)18:23にカザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。
8月23日(木): プログレス(5P)は日本時間18:51にISSとドッキングした。
8月24日(金): ISSクルーによりMPAC&SEED及びHDTVカメラがSMへ搬入された。HDTVカメラはSM内にて組み立てられた後、電源投入され動作確認が行われた。
8月25日(土): HDTVカメラを用いた第1回目の医学実験を17:02から約10分間、18:34から約10分間の2回に分けて行った。ヘッドセットを使って交信が行われ、画像は鮮明にダウンリンクされた。なお、実験開始前に代表研究者であるNASDA宮本招聘研究員とISSロシア人クルーとの挨拶が行われた。
8月26日(日): HDTVカメラを用いた第2回目の医学実験を16:02から約13分間、17:37から約12分間の2回に分けて実施。画像・音声ともに良好にダウンリンクされた。
8月27日(月): NASDA・ロシア側技術者間で今後の作業調整を行い、NASDA事務所を撤収した。
備考:
(1) 地上で録画した医学実験の画像はダビングして日本に持ち帰った。
(2) HDTVカメラで撮影した画像は軌道上にあり、本年10月下旬頃のソユーズタクシーフライト(3S)で地上へ持ち帰る予定。
(3) HDTVカメラ実験は今後1年間にわたり、引き続き実施される予定。(医学実験は約1ヶ月毎、広報応用実験は適宜行われる)
(4) MPAC&SEEDはSM内に保管され、10月に予定されている船外活動にてSM外壁に取り付けられる予定。