宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
宇宙開発事業団(NASDA)と米国航空宇宙局(NASA)は、継続したTRMMのデータ提供及びその利用に鑑み、TRMMのミッション期間を延長する目的で、TRMMの高度を現在の約350kmから約400kmに変更したので、その結果について報告する。
(1) | TRMMは3年以上にわたり、熱帯、亜熱帯域の降水データを取得し、これまでデータの殆ど無かった海洋上の降水分布を初めて明らかにしたほか、エルニーニョの消滅、亜熱帯反流のメカニズムに関する画期的な成果を生み出してきた。ミッション期間の延長によりさらにエルニーニョの発生等のメカニズムの解明、気候変動予測のための気候値データ生成が期待されている。 |
(2) | 気象庁はじめ世界の気象機関がTRMMデータを数値予報で現業利用するための準備を進めてきており、ミッション期間の延長が強く要望されている。 |
(3) | TRMMと今後打ち上げられる予定のNASAのEOS-PM1搭載改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)やADEOS-II搭載高性能マイクロ波放射計(AMSR)との同時観測により、降水の推定精度の向上が期待されている。 |
(1) | TRMMは1997年11月に打ち上げられ、2001年1月に定常運用を終了した。 当初、残推薬の量から2004年初めまでの継続観測が可能であると考えられていたが、その後の計算で、再突入に必要な燃料の量が当初想定より大幅に増加(68kgから157kg)することが明らかになり、ミッション期間が短縮されることが判明した。そのために、NASAより軌道高度を上げる(350kmから402.5km)ことで、ミッション期間を延長することが提案された。 |
(2) | 6月、TRMMの国内代表研究者(PI)会議及び日米TRMM共同サイエンスチーム(JTST)会合は、軌道高度を上げることをNASDA及びNASAに提言した。NASAゴダード宇宙センターにおいては軌道高度変更審査会が開催され、高度変更計画の妥当性が確認された。 |
(3) | 8月3日付けでNASAアスラー地球科学局長とNASDA古濱理事の間で合意文書の取り交わしを行った。 |
(4) | 8月7日より高度変更開始、8月24日に最後の微調整のための軌道制御(マヌーバ)を実施し、軌道高度は最終目標である402.5kmとなった。 |
(1) | 推薬を157kg残すとした場合のミッション期間の見積り 現状(高度350km)では、2003年2月頃に残推薬が157kgに達する。 |
8月初旬に400kmに高度を上げた場合のミッション期間については、2007年10月頃までであり、約4年半ミッション期間が延長できる。 | |||||||
(2) | 高度変更の影響 NASDAではNASAと協力して以下の検討を行った。
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高度変更実施の履歴を下表に示す。高度変更は,高度変更のためのマヌーバを、1日に2回行い、これを6回実施することにより実現する計画が立てられた。当初、8月7日にこの作業を開始し、6日後に終了する予定であった。しかし、3日目のマヌーバの後、高度変更に伴う地球センサのSN(シグナル対ノイズ)比低下による太陽捕捉モードへの移行、デブリ、シャトル等との接近回避などにより途中実施が順延された。最終的には、8月24日に第6回目のマヌーバを実施、目標高度である約402.5kmに到達した。なお、衛星は、現在、正常に観測を継続している。
月日 | 時刻(世界標準時) | 運用 |
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8/ 7 | 14:54 および15:40 | 高度変更マヌーバ#1 →マヌーバ後の平均軌道高度 360km |
8/ 8 | 16:50 および 17:36 | 高度変更マヌーバ#2→372km |
8/ 9 | 15:47 および 16:33 | 高度変更マヌーバ#3→383km |
8/13 | 02:21 | 太陽捕捉モード、全センサオフ |
8/17 | 17:10 | 太陽捕捉モードからの復旧 |
8/17 | 20:29頃 | 降雨レーダパワーオン |
8/17 | 20:46頃 | 観測モード |
8/21 | 14:24 および 15:10 | 高度変更マヌーバ#4→393km |
8/22 | 18:03 および18:49 | 高度変更マヌーバ#5→402.5km |
8/24 | 16:21 および 16:53 | 高度変更マヌーバ#6 (最終調整) 402.5km |
現在総合的なPRの性能確認作業を行っている。これまで高度変更中も含めてPRデータをモニターしてきたが、特に予想外の問題は発生していない。また、高度変更に合わせて改修を施したPRアルゴリズムもほぼ正常に動作している。今後は微調整を加えた後に、観測データを一般に公開する予定である。
9月4日 | PRリアルタイムデータの提供開始 |
9月中旬 | PR初期観測データ(校正済み)の提供開始 |
2002年3月 | PR観測データ(検証済み)の提供開始 |