プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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平成13年度夏期ロケット打上げ及び追跡管制計画書(案)

平成13年6月19日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 概要 2. 打上げ及び追跡管制計画 3. 打上げ結果の報告等

表リスト 図リスト 

1. 概要

宇宙開発事業団が行う平成13年度夏期のロケット打上げは、H-IIAロケット試験機1号機(H-IIA・TF1)の1機である。以下に、その打上げ及び追跡管制計画を示す。

1.1 打上げ及び追跡管制実施機関

宇宙開発事業団
 理事長   山之内 秀一郎
  東京都港区浜松町2丁目4番1号
  世界貿易センタービル

1.2 打上げ及び追跡管制の責任者

宇宙開発事業団
 理事長   山之内 秀一郎

1.3 打上げ及び追跡管制の目的

H-IIAロケット試験機1号機(H-IIA・TF1)の打上げは、新たに開発した標準型のH-IIAロケットシステムについて飛行試験を行い、その技術の実証を目的とする。

1.4 ロケット及びペイロードの機種、名称及び機数

・ロケット:H-IIAロケット試験機1号機(H-IIA・TF1) 1機
・ペイロード:性能確認用ペイロード(VEP-2) 1基
   (VEP2は、Vehicle Evaluation Payload 2の略)

1.5 打上げの期間及び時間

打上げの期間は平成13年夏期である。

ロケット機種 打上げ予定日 打上げ予備期間 打上げ時間帯 海面落下時間帯(打上げ後)
H-IIAロケット
試験機1号機
(H-IIA・TF1)
平成13年夏期 平成13年 夏期(打ち上げ予定日〜9/30) TBD ・固体ロケットブースタ
  約 6分〜 8分
・衛星フェアリング
  約18分〜20分
・第1段
  約16分〜32分

1.6 打上げ及び追跡管制施設

打上げ及び追跡管制に使用する宇宙開発事業団及び支援を受ける関係機関の施設の配置を図-1示す。

2.打上げ及び追跡計画

宇宙開発事業団が行う平成13年度夏期のロケット打上げは、H-IIAロケット試験機1号機(H-IIA・TF1)の1機である。以下に、その打上げ及び追跡管制計画を示す。

2.1 打上げ及び追跡管制実施場所

(1)宇宙開発事業団の施設
ア. 種子島宇宙センター
鹿児島県熊毛郡南種子町大字茎永
イ. 波宇宙センター追跡管制棟
茨城県つくば市千現2丁目1番1
ウ. 増田宇宙通信所
鹿児島県熊毛郡中種子町大字増田1897
エ. 沖縄宇宙通信所
沖縄県国頭郡恩納村字安富祖金良原1712
オ. 勝浦宇宙通信所
千葉県勝浦市芳花立山1-14
カ. クリスマスダウンレンジ局
キリバス共和国クリスマス島
キ. サンチャゴダウンレンジ局
チリ共和国サンチャゴ市チリ大学宇宙研究センター内
(2)外部支援機関の施設
レーザー測距装置(LRE)の測距については、国際レーザ測距サービス(ILRS)を通じて国内外の測距局の支援を要請しており、下記の局を中心に測距を行う。
ア. 小金井観測所(通信総合研究所)
東京都小金井市貫井北町4-2-1
イ. 館山観測所(通信総合研究所)
千葉県館山市大路犬石字北塚1397
ウ. グラース局(フランス コートダジュール観測所)
Grasse Observatioire de Calern Caussols F-06460 Saint Vallierd Thiey France 

2.2 打上げ隊

 打上げ整備及びロケット打上げ並びに追跡管制の業務を確実かつ円滑に行うため、下図のとおり打上げ及び追跡管制実施責任者を長とする打上げ隊を編成する。

2.3 ロケットの飛行計画

 H-IIAロケット試験機1号機(H-IIA・TF1)は、性能確認用ペイロード(VEP―2)を搭載し、種子島宇宙センター吉信射点から垂直に打ち上げられる。
 ロケットは、リフトオフ後まもなくロール旋回により機体のピッチ面を初期飛行方位角90度に向け、搭載誘導機器による誘導を行い、表-1に示す所定の飛行計画に従って太平洋上を飛行する。
 その後、固体ロケットブースタを打上げ約1分50秒後(以下、時間は打上げ後の時間を示す。)に、衛星フェアリングを約4分5秒後に順次分離し、更に第1段主エンジンの燃焼を約6分28秒後に停止し、第1段を約6分38秒後に分離する。
 引き続いて、第2段エンジンの第1回燃焼を約6分44秒後に開始し、搭載誘導機器による誘導を行った後第2段エンジンの燃焼を約12分24秒後に停止し、所定のパーキング軌道に投入する。
 その後、ロケットは赤道上空附近に至るまで慣性飛行を続け、この間にトランスファ軌道へ移行するための第2段第2回燃焼に備え姿勢の設定を行う。
 第2段エンジンの第2回燃焼を約24分51秒後に開始し、搭載誘導機器による誘導を行い、第2回燃焼を約27分50秒後に停止し、所定の静止トランスファ軌道に投入されたロケットから約39分35秒後にレーザ測距装置(LRE)を分離する。
 ロケットの飛行状況の監視及び動作状態の計測は、種子島の光学設備及び種子島、小笠原のレーダ設備によるロケットの追尾並びに種子島、小笠原、クリスマス、サンチャゴの各地上局でのテレメータ受信により行われる。
 ロケットの飛行計画を表-1に、また、飛行経路を図-2に示す。

2.4 ロケットの主要諸元

 ロケットの主要諸元及び形状を表-2及び図-3に示す。

2.5 性能確認用ペイロード(VEP-2)の概要

 H-IIAロケット試験機1号機(H-IIA・TF1)の性能確認用ペイロード(VEP-2)は、打上げ時に衛星がさらされる環境データについて、VEP-2上で、温度(4点)、加速度(3点)の計測を行う。また、ドップラー測距装置(DRE)、レーザ測距装置(LRE)を搭載することにより、H-IIAロケットの投入軌道を計測し、軌道投入精度を評価する。質量は約3.2tで、形状を図-4に示す。なお、LREは将来の高精度軌道決定のための事前実証に役立つ簡易な実験としても利用する。LRE単体での質量は約90kgで、形状を図-5に示す。

2.6 追跡管制作業の概要

 性能確認用ペイロード(VEP-2)の追跡管制作業の概要を以下に示す。また、追跡管制業務に使用する追跡管制システムを図-6に示す。

(1) ドップラ測距装置(DRE)の追跡管制
ロケット打上げから第4周回までの間、以下の作業を実施する。
(ア) 打上げ
筑波宇宙センター追跡管制棟において種子島宇宙センターから送られてくる打上げに関する情報により、ロケットの飛行状況を把握する。
(イ) 第2周回
増田宇宙通信所、沖縄宇宙通信所及び勝浦宇宙通信所のうち2系統を使用し、ドップラデータ及び角度データを取得する。
筑波宇宙センター追跡管制棟では両通信所で取得したドップラデータ及び角度データを使用して軌道決定及び評価を行う。
(ウ) 第4周回
増田宇宙通信所、沖縄宇宙通信所及び勝浦宇宙通信所のうち2系統を使用し、ドップラデータ及び角度データを取得する。
また、増田宇宙通信所または沖縄宇宙通信所において性能確認用ペイロード(VEP-2(DRE))に対しSバンドリンクの停波コマンド送信を行う。
筑波宇宙センター追跡管制棟では両通信所で取得したドップラデータ及び角度データを使用して軌道決定及び評価を行う。
(2)レーザ測距装置(LRE)の追跡

レーザ測距に関する国際的な組織であるILRS(International LASER Ranging Service)にLREレーザ測距支援要請を行い、同組織により得られたレーザ測距データを使用して軌道決定及び評価を行う。
気象状況や初期捕捉等を考慮し、レーザ測距、軌道決定まで3週間を目途としている。

2.7 打上げに係る安全確保

(1)打上げ整備作業の安全

 打上げに係る作業の安全については、打上げに関連する法令の他、別に定める射圏安全管理規程、危険物及び重要施設設備の取扱に関する規程に従って所要の措置を講ずる。
 なお、打上げ整備作業中は、危険物等の貯蔵及び取扱場所の周辺には関係者以外立ち入らないよう、要所に警戒員を配置して警戒を行う。

(2)射場周辺の住民への周知

 射場周辺の住民に対する安全確保については、地元説明会等によりロケット打上げ計画の周知を図り、警戒区域内に立ち入らないよう協力を求める。

(3)打上げ当日の警戒
(ア) H-IIAロケット試験機1号機(H-IIA・TF1)打上げ当日は、図-7に示す区域の警戒を行う。
(イ) 陸上における警戒については、事業団が警戒員を配置し巡回等必要な措置を講ずるとともに、鹿児島県警察本部及び種子島警察署に協力を依頼する。
(ウ) 海上における警戒については、事業団が海上監視レーダによる監視及び警戒船による警戒を行うとともに、第十管区海上保安本部及び鹿児島県に協力を依頼する。その細目は打ち合わせの上決定する。また、第十管区海上保安本部鹿児島海上保安部に連絡員を派遣し、射場と密接な連絡をとる。
(エ) 射場上空の警戒については、国土交通省大阪航空局鹿児島空港事務所及び種子島空港事務所に協力を依頼するとともに必要な連絡を行う。また、種子島空港事務所には連絡員を派遣し、射場と密接な連絡をとる。
(オ) 船舶に対しては、打上げ実施当日種子島宇宙センター内2カ所(図-7)に黄旗を掲げ、発射30分前には赤旗に変更し、発射2分前には花火1発をあげる。打上げ終了後には花火2発をあげ、赤旗を降ろす。

(4)ロケットの飛行安全

発射後のロケットの飛行安全については、取得された各種データに基づきロケットの飛行状態を判断し、必要がある場合には所要の措置を講ずる。

2.8 関係機関への打上げ情報の通報

(1)ロケット打上げの実施の有無に係る連絡等
(ア) ロケット打上げの実施については、打上げ前々日の15時までに決定し、別に定める関係機関にファックス及び電話にて通報する。
(イ) 天候その他の理由により打上げを延期する場合は、関係機関に速やかにその旨及び変更後の打上げ日について通報する。
(ウ) 東京航空局新東京空港事務所、大阪航空局鹿児島空港事務所及び種子島空港出張所、航空交通流管理センター並びに東京、福岡及び那覇の各航空交通管制部に対して、打上げ時刻の6時間前、2時間前及び30分前に通報するとともに打上げ直後にも通報する。

(2)船舶の航行安全のための事前通報及び打上げ情報の周知
(ア) 図-7に示す海上の警戒区域及び図-8に示す落下物の落下予想区域について、周知を図るため水路通報が発行されるよう事前に海上保安庁水路部に依頼する。
(イ) 一般航行船舶に対しては、水路通報の他、無線航行警報及び共同通信社の船舶放送(海上保安庁提供の航行警報)により打上げ情報の周知を図る。
(ウ) 漁船に対しては、漁業無線局からの無線通信のほか、NHK(鹿児島、宮崎)、南日本放送、宮崎放送及び大分放送各局のラジオ放送並びに共同通信社の船舶放送(海上保安庁提供の航行警報)により打上げ情報の周知を図る。

(3)航空機の航行安全のための事前通報及び打上げ情報の周知
(ア) 航空機の航行安全については、国土交通省からの航空路誌補足版及びノータムによる。このため、ロケットの打上げに係る情報について、国土交通省航空局より航空路誌補足版としてあらかじめ発せられるよう、航空法第99条の2項及びこれに関連する規定に基づき、事前に大阪航空局鹿児島空港事務所に依頼する。
 なお、ノータム発行に必要な情報については、これに加えて東京航空局新東京空港事務所にも通報する。

3.打上げ結果の報告等

(1) 報道関係者に対し、安全確保に留意しつつ取材の便宜を図る。
(2) 打上げ及び追跡管制の結果については、文部科学省等関係機関に速やかに通知するとともに、実施責任者等から報道関係者に発表を行う。
(3) 衛星の軌道投入後、速やかに関係政府機関を通じ、国際連合宇宙空間平和利用委員会、宇宙空間研究委員会等の国際機関に衛星に関する情報を提供する。



表-1 ロケットの飛行計画




表-2 ロケットの主要諸元



図-1 打上げ及び追跡管制施設の配置図




図-2 H-IIAロケット試験機1号機の飛行経路




図-3 H-IIAロケット試験機1号機の概要




図-4 性能確認用ペイロード(VEP-2)の概要




図-5 レーザ測距装置(LRE)の概要




図-6 性能確認用ペイロード(VEP-2)追跡管制システム




図-7 ロケット打上げ時の警戒区域




図-8 H-IIAロケット試験機1号機落下物の落下予想区域