宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
2001年3月、NASAはX-33、X-34計画に対して、今後、資金を拠出しないことを発表した。これは、米国における今後の再使用型宇宙輸送機の研究開発計画の見直しの中で決定されたものである。この新計画は統合宇宙輸送プログラム(Integrated Space Transportation Program) において、新たに再使用型宇宙輸送機の技術開発を進める計画において判断されたものである。以下に再使用型宇宙輸送システムの最近の米国の動向について述べる。
統合宇宙輸送プログラム(ISTP)は、より安全で信頼性にすぐれ経済的な宇宙輸送機を実現するための技術開発の総合的なプログラムで主に以下の計画から成っている。
現在のスペースシャトルをより安全で信頼性にすぐれたものに改善していく計画。現在も実施中。
スペースシャトルの後継として新型の再使用型宇宙輸送機を開発するための計画。輸送コストを1/10に安全性を100倍にすることを目標としている。ロケットエンジン推進を使用したシステム。
さらに効率的な輸送機をめざして、より革新的な技術をもとに、輸送コストを1/100に安全性を10000倍にする輸送機を研究する技術研究計画。主な技術研究に空気吸い込みエンジンや先進的熱防護システムがあげられる。
SLIはSpace Launch Initiativeの略で、上記の2)の第2世代の再使用型宇宙輸送機の研究開発計画である。ブッシュ新大統領が2001年2月28日に発表した2002年度予算要求の指針の中でも、前年比で大幅増額(64%増)が認められており、2005年までに約45億ドルを支出し、第2世代の要求仕様の決定、開発以前に必要な要素技術開発および技術実証機の開発等を行う計画である。その後、2005年から実機開発に移行し、2010年の運用開始を想定している。本計画においては、2001年から複数の提案に基づき、要素技術実証やシステム検討を行い、順次、開発候補を絞り込んでいく予定である。
X-33、X-34の計画中止はこのSLI計画立案における評価過程のなかで、これらの計画を継続することの意義が費用を正当化できないということで、SLI計画からはずされたことによる。評価過程における内容については公表されていないが、NASAは以下のように言っている。
1) | これらのX機においてはすでに多くの技術開発を実施し、多大の知見を得ている。 |
2) | 現在までの活動を通じて、新型RLVを成功裏に開発できるレベルまで技術が到達していない。従って、SLI計画という長期的、包括的計画を再設定し2005年まで実施する。 |
3) | これは、今までの経験をいかして、より集中的に技術開発を行い、より確実に新型の再使用宇宙輸送機を2010年代に実現可能とするものである。 |
すなわち、NASAの新計画では、X-33、X-34はすでに多大の技術貢献をしていることやコストオーバラン、現時点での飛行実証の意義を考慮し、より集中的にSLIを実施するため中止したものと思われる。
米国は2010年の第2世代再使用宇宙輸送機の運用をめざして、これまでの経験をいかして、広範に現実的に対応するため、より着実に技術開発をおこなうSLIをスタートさせている。
スペースシャトルの後継となる単段式シャトル(SSTO)の技術実証を行うことを目的とした無人試験機。全長約21メートル、全幅約23メートル、離床総重量約129トン、自重(乾燥重量)約33トン。
X-33計画は、1996年に、再使用型宇宙往還機(RLV)プログラムの一部として開始され、NASAは、これまで総額9億1200万ドル(1996年に算定された同計画予算額の範囲内)を投じてきた。また、開発を担当しているロッキード・マーチン社は、同計画に対し、2億1200万ドルを負担することになっていたが、計画実施段階でその額は3億5700万ドルまで増加した。(写真:X-33想像図)
GPSを使用した低コストナビゲーションシステムや複合材を用いた機体構造等の低コスト輸送手段としてのスペースプレーン技術を検証することを目的としたスペースプレーン実験機。全長17.8メートル、両翼を含めた全幅8.4メートル、重量8.2トン。
X-34計画は、1996年に開始され、6000万ドルの契約で、米国のオービタル・サイエンス社が開発を担当していた。(写真:X-34の想像図)