宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
平成12年9月に発出した第1回微小重力科学国際公募における日本の候補テーマの選考作業および選定結果について報告する。
微小重力科学国際公募は、日・米・欧・加が国際宇宙ステーション(「ISS」と略す)搭載実験装置の相互利用などを通じて、より広範なテーマをより効率的に実施し、最大限の科学的成果を得ることを目的として実施している。
(1) | 募集対象は、おおよそ平成16年から平成20年に、ISSに搭載される実験装置を利用して実施するフライト実験テーマ。(ただし、今回は候補テーマの選定であり、今後1〜2年の準備作業を実施した後、再評価をクリアしたものがフライトテーマとして選定される。) |
(2) | 対象分野は、流体物理、材料科学、バイオテクノロジー、燃焼科学、基礎物理の5分野。 |
(3) | 対象装置は、海外宇宙機関が開発を行っているものも含め、おおよそ40台の実験装置。(あらかじめリストアップされた上記実験装置の利用が前提となる。新規実験装置の開発は認められない。) |
(1)募集
平成12年9月から募集を開始し、平成13年1月に募集を締め切ったところ各国から115テーマの応募があった。このうち、日本の研究者が代表研究者を務める提案は19テーマ、海外提案において日本の研究者が共同研究者を務める共同研究提案*1は11テーマ19件*2であった。
(2)科学評価
平成13年1月〜6月にかけて科学評価を実施した。国際微小重力科学戦略会合*3(International Microgravity Science Strategic Planning Group:以下「IMSPG」)のもとに設置された国際科学評価パネルが、科学的な意義、長時間微小重力利用の意義を評価した。
(3)技術評価
平成13年7月〜9月にかけて技術評価を実施した。提案者が利用を希望している実験装置を開発している宇宙機関が技術的な実現性を評価した。
(4)プログラム評価
平成13年10月〜11月にかけてプログラム評価を実施した。宇宙開発事業団が、実施スケジュール、実験計画詳細化の可否、必要経費、微小重力科学研究シナリオとの整合性などを評価した。
(5)選定候補案の作成
上記の評価結果をうけて、平成13年12月、宇宙環境利用研究委員会において選定候補案の作成が行われた。
(6)候補テーマ選定
上記の選定候補案をうけて、平成14年1月、宇宙開発事業団理事会議において候補テーマが承認された。
添付1表1に示す5テーマを候補テーマとして選定した。また、海外テーマに参加する日本の研究者の共同研究提案に関しても、添付1表2に示す3テーマを候補テーマとして選定した。
選定後すみやかにフライトに向けた準備作業を実施する。(図2参照)準備作業の実施にあたっては、国内外のISS計画の状況を踏まえつつ、適宜再評価を行い、これをすべてクリアしたテーマが最終的にフライトに至る。
詳しくはこちらをご覧ください。
分野 | 代表研究者 (所属) | 利用希望装置 (開発機関) | テーマ概要 |
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流体 | 大高 雅彦 (宇宙開発事業団) |
FPEF*4 (NASDA) FSL*5 (ESA) |
マランゴニ対流の振動流遷移を起こす本質的な要因を調べる研究で、材料製造時のマランゴニ対流効果の解明に貢献することが期待される。 |
材料 | 伊丹 俊夫 (宇宙開発事業団) |
AFEX*6 (NASDA) DMI*7 (NASA) |
Geの拡散係数をシアーセルによって高精度に測定する研究で、新たな拡散モデルの構築を目指している。 |
材料 | 栗林 一彦 (宇宙科学研究所) |
MSL-EML*8 (ESA) |
Siの浮遊凝固による球状結晶生成時の界面不安定性の研究で、球状半導体を用いた新規デバイス開発に貢献する事が期待される。 |
結晶成長 | 木下 恭一 (宇宙開発事業団) |
GHF*9 (NASDA) |
地上では育成の難しいInGaAs均一組成結晶の新たな育成手法の検証を行う研究で、次世代の光通信デバイスの開発に貢献する事が期待される。 |
燃焼 | 藤田 修 (北海道大学) |
FCF-FEANICS*10 (NASA) |
火炎伝播メカニズムに関する仮説の検証を固体材料を用いて行う研究で、先端的な火炎伝播モデルの構築、宇宙船内環境における材料の燃焼性評価の向上に貢献する事が期待される。 |
分野 | 共同研究者(所属) | 代表研究者(所属) | テーマ全体の概要 | 共同研究者の役割 |
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流体 | 河村 洋 (東京理科大学) |
Hendrik C. Kuhlmann (ZARM) |
液柱のマランゴニ対流において、ある条件下に形成される特異な偏析現象が、微小重力下において、より広い条件下で構成されるという予測を確かめる | FPEFを用いた実験における主導的立場での実験実施・実験結果解析 |
材料 | 日比谷 孟俊 (日本電気株式会社) |
Konrad Samwer (Univ. Gottingen) |
電磁浮遊加熱装置を用いてシリコン融液の物性を高精度に測定する。 | シリコン融液を取扱う際の実験技術上のサポートとデータ解析 |
材料 | 塚田 隆夫 (東北大学) |
Konrad Samwer (Univ. Gottingen) |
電磁浮遊加熱装置を用いてシリコン融液の物性を高精度に測定する。 | 地上のシリコン単結晶育成を高度化する流体シミュレーションを宇宙実験のデータに基づき開発する。 |
*4 流体物理実験装置 *5 流体科学実験装置 *6 帯域炉 *7 拡散モジュールインサート *8 電磁浮遊炉:国際宇宙ステーションへの搭載が現状確定していない。装置の搭載化が確定した段階で利用調整を図る。 *9 温度勾配炉 *10 流体燃焼実験装置固体燃焼実験装置:装置の開発見通しが不確定。見通しがはっきりした段階で利用調整を図る。 |