プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

「地球シミュレータ」の完成について

平成14年3月8日

宇宙開発事業団
日本原子力研究所
海洋科学技術センター

 宇宙開発事業団(理事長 山之内秀一郎)、日本原子力研究所(理事長 村上健一)及び海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)が共同で開発を進めてきました、多目的用としては世界最速のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」は、2月末までに全システムの搬入・据付調整を終了し、開発目標である「全球大気モデルにおいて実効性能5テラフロップス(1秒間に5兆回の計算速度)」の性能を確認しました。これは、現時点でのシミュレーション性能としては世界最高となります。現在、運用前調整(運用開始に先立って行うハードウェア、基本ソフトウェア等の信頼性確認試験)を行っており、3月11日より運用を開始する予定です。
 「地球シミュレータ」は、平成11年度より製作が進められ、平成13年9月からは海洋科学技術センター横浜研究所(神奈川県横浜市金沢区)において計算機システムの搬入・据付を行ってきたところです。



参考1.開発経緯

 「地球シミュレータ」は、旧科学技術庁(現文部科学省)が、地球環境変動予測研究開発の推進を目的に平成9年度より開始した「地球シミュレータ計画」の一環として、宇宙開発事業団、日本原子力研究所及び海洋科学技術センターによって設置された共同チーム「地球シミュレータ研究開発センター」が開発を進めてきたスーパーコンピュータで、コンピュータ上に地球温暖化やエルニーニョ現象等の地球規模の様々な諸現象を映し出す、いわば「仮想地球」を実現することにより、地球環境の変動現象の解明と予測を目指している。

参考2.「地球シミュレータ」の概要

 「地球シミュレータ」は、5,120台のベクトルプロセッサを強力なネットワークで結合し、最大性能40テラフロップス(1秒間に40兆回の計算速度)、主記憶容量10テラバイトの性能を有する世界最速の極めて大規模な計算機システムであり、このために、0.15μm CMOSテクノロジーによる1チップベクトルプロセッサの実現、筐体サイズの縮小化や低消費電力化を目指した高密度実装技術等最先端のハードウェアテクノロジーを駆使して製作されている。

○ベクトルプロセッサ:
ベクトル(配列)演算を一つの命令で高速に処理するプロセッサ(処理装置)。

○テラフロップス:
性能を示す指標で、1秒間に処理可能な浮動小数点演算の回数を「テラ」(1兆)の単位で示す。「テラ」は1兆(10の12乗)倍を表す接頭語

○μm:
マイクロメートル。長さの単位で百万分の1メートル、1μmは髪の毛の太さの約100分の1の太さ。

○CMOS:
半導体回路の一種で、2種類のMOS FETと呼ばれるトランジスタをペアで使用する。日本語では相補型金属酸化膜半導体と呼ばれる。現在のマイクロプロセッサの多くはCMOSプロセスで製造されており、CMOSは省電力消費であり、広い範囲の電圧で作動するため携帯型の機器などに用いられている。

○チップ:
ICの中に実装されているシリコン片のこと。この中に回路が搭載されている。複数のチップを1枚ウェハ上に作成し、これを切断/分割して用いる。

○筐体:
コンピュータ本体を収納する入れ物(ケース)のこと。様々な大きさ、形態がある。

参考3.「地球シミュレータ」の利用目的

 「地球シミュレータ」稼働後は、地球規模の気候変動の解析・予測や長期間にわたる地球変動現象の解明等が可能となり、地球観測衛星やブイ等からの観測データ等を積極的に活用しながら、地球温暖化、大気や海洋の汚染、エルニーニョ現象、集中豪雨及び台風の進路予想等の複雑な現象を理解することができ、経済社会活動の発展や地球環境問題の解決への貢献ができるものと期待されている。さらには地殻変動、地震発生等の現象の解明への貢献も期待されている。