プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

H-IIAロケット3号機によるDRTS及びUSERSの打上げ計画について

平成14年6月19日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

H-IIAロケット3号機の目的

  • H-IIAロケットにより、データ中継技術衛星(DRTS)を所定の軌道に投入する。
  • 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)からの委託を受け、同ロケットによりUSERS宇宙機の打上げ並びに追跡管制支援を行う。
3号機打上げ軌道 USERS軌道投入時 DRTS軌道投入時
遠地点高度 450km 36,206km
近地点高度 450km 450km
軌道傾斜角 30.4度 28.5度


3号機の準備状況

概要

画像取得計画

■機体搭載のCCDカメラによる画像

打上げ後 取得画像   画像データ
取得時間
106 s SRB-A分離 97s 〜
107,144s SSB分離 92s 〜 132s
139s〜154s
250 s 上部フェアリング分離 245s 〜 260s
828 s USERS分離 823s 〜 838s
978 s 下部フェアリング分離 968s 〜 988s
1758 s DRTS分離 1753s 〜 1768s
2段LH2液面挙動 260s 〜 290s
386s 〜 412s
774s 〜 783s
838s 〜 853s
1322s 〜 1382s
1557s 〜 1597s
  • リフトオフ時のロケット挙動画像(地上カメラ)
    (1段エンジン、SRB-A結合部、アンビリカル離脱等)
  • 飛行中のロケット光学追跡(地上カメラ)



DRTSの概要

【データ中継技術衛星(DRTS)】

データ中継技術衛星(DRTS)は、静止軌道上に配備され、中〜低高度(約300〜1,000 km)を周回する衛星等と地上局との通信を中継する通信衛星。地上局のみで周回衛星等と直接通信するためには数多くの地上局が必要となるが、静止軌道上に配置されたDRTSを用いると、通信対象となる周回衛星等の飛行領域の内、約60%を中継範囲に収めることが可能となる。(DRTSはData Relay Test Satelliteの略)


データ中継衛星の通信概念図

地上局との直接通信

DRTSで中継した場合
通信範囲の拡大図

【DRTSの主な開発目的と背景】

■主な開発目的
COMETSの開発技術を発展させ、より高度なデータ中継技術の開発を行う。
ADEOS-II、ALOS等の地球観測衛星や「きぼう」、OICETS等との間で衛星間通信実験を行う。
衛星間通信実験を通して、宇宙ネットワーク運用技術向上のための実証実験を行う。
■開発の背景
   データ伝送需要の拡大
環境保護問題への取り組みの一環としての地球観測 :観測データの伝送
国際宇宙ステーション計画への参加
   :「きぼう」の実験データ伝送、双方向通信(宇宙飛行士の活動のTV中継など)
その他、顕在、潜在衛星等の通信要求に応える。

【衛星システム主要諸元】

寸法 本体 約2.2×約2.4×約2.2(高さ)mの箱形
太陽電池パドル 全幅約17m
質量 打上げ時 2,800kg
静止軌道初期 約1,500kg
寿命 7年
ミッション機器 Sバンド衛星間通信機器
Kaバンド衛星間通信機器
Kaバンドフィーダリンク機器
打上げロケット H-IIAロケット
軌道 静止軌道 東経90.75°(予定)(インド洋上空)

軌道上外観図



次世代無人宇宙実験システム
(USERS:Unmanned Space Experiment Recovery System)

SEM:サービスモジュール
REM:リエントリモジュール

【USERSの目的】
USERSは経済産業省及び新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けて、財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)が以下の目的で開発した宇宙実験システム。

1. 約8.5ヶ月間の軌道運用後、リエントリモジュールを自律的に大気圏に再突入させ、帰還させる我が国初の技術の開発・実証を行う。
2. 軌道上の微小重力環境下において大型高温超電導材料の結晶成長実験を行い、地上における生産に必要な結晶成長のメカニズムを解明する。
3. 民生技術・部品の宇宙環境下における機能を検証し、将来の衛星バス製造に適用するための知見を得る。

【衛星システム主要緒元】

寸法 3.5m(高さ)×15.5m(全長:太陽電池パドル展開時)
質量 約1,700kg
REM実験機器 超電導材料製造実験装置、再突入飛行環境光学計測装置
運用期間 約2.5年間(REMは約8.5ヶ月)
サービスモジュール:(SEM)
REM、実験機器等への電力、通信等のサービスを提供し、実験機器等の運用を行いデータを取得する。
リエントリモジュール: (REM)

  • リカバリビークル: (REV)
    超電導材料製造実験用電気炉及び再突入飛行環境光学計測装置を搭載しており、微小重力環境実験の後、大気圏に再突入し回収される。

  • プロパルジョンモジュール: (PM)
    再突入のための軌道離脱ロケット等を搭載し、軌道離脱後にREVから切り離されて大気圏に再突入し消滅する。