宇宙開発事業団
東京都大学管理本部
東京都立科学技術大学
このことについて、次のとおり開始することになりましたのでお知らせします。
東京都立科学技術大学と宇宙開発事業団は相互に連携し、大学の大学院博士前期課程・後期課程における教育研究活動の一層の充実と、宇宙開発事業団における宇宙技術の研究活動を推進するため、平成12年6月に教育研究協力に関する協定書を締結したところですが、これを受け、平成14年度から新たに、科学技術大学に連携大学院教授を受入れるとともに、宇宙開発事業団で大学院学生の研究指導をすることになりました。
1 科学技術大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻における連携大学院
(1)連携大学院教授 | 小原 新吾 氏 | ||
(2)講義名 | 「宇宙トライボロジー特論」 | ||
(3)専攻名 | 航空宇宙工学専攻 博士前期課程 |
2 事業団における大学院学生の研究指導内容
(1)テーマ名 | 「宇宙用機構部品のトライボロジー特性に与える打上げ振動及び宇宙環境の影響」 | ||
(2)内 容 | 人工衛星搭載のジャイロ、光学センサ等の機構部品の摺動部に対する大気中振動と真空中振動の影響の違いや超高真空での潤滑剤の摩擦摩耗現象の解明 |
本講義では、ロケットや人工衛星が遭遇する真空、極低温、高温、放射線などの特殊環境下での摩擦・摩耗現象を説明する。さらに、ロケットエンジン用ターボポンプ、人工衛星搭載機器、宇宙ステーション用マニピュレータなどの宇宙メカニズムの実例を紹介しながら特殊環境に対応するための潤滑油及び潤滑技術について講義する。
内 容(1) | 極限環境におけるトライボロジーの特殊性 真空、極低温、高温などの極限環境における摩擦・摩耗現象及び潤滑剤の挙動について講義する。 |
(2) | 宇宙潤滑技術 宇宙利用機器が暴露される環境とそれに対応した潤滑設計について講義する。 |
(3) | 宇宙トライボロジーの最前線 宇宙トライボロジーに関する国内外の最新技術、研究成果を解説する。 *トライボロジーとは、摩擦、摩耗、潤滑を総称した学問分野名 |
【東京都立科学技術大学におけるその他の連携大学院の設置状況】
《研究テーマ》
宇宙用機構部品のトライボロジー特性に与える打上げ振動および宇宙環境の影響
《概要》
この研究を進めることで、まだ未解明の部分が多い、宇宙環境における機構部品の挙動について知見を深めることができ、信頼性の高い宇宙用機器の設計・開発に役立つものと考えています。
人工衛星にはジャイロ、光学センサ、太陽電池パドル駆動機構といった高性能な機器が多数搭載されています。これらには、打上げ時に大気から真空にわたって厳しい振動を受けた後に軌道上で長時間作動することが求められます。それを確実に行うためには、可動部分のベアリング(軸受)などについて、その潤滑特性や寿命に対する特殊環境の影響を十分に把握しておくことが必要です。
本研究では、宇宙開発事業団 筑波宇宙センターの高真空機構系部品試験設備を使用し、機構部品の摺動部に対する大気中振動と真空中振動の影響の違いや、超高真空での潤滑剤の摩擦摩耗現象を明らかにしていきます。さらに、実験による評価が困難な打上げ振動中の機構部品の挙動や無重力下での作動状態などについては、東京都立科学技術大学の大型計算機による数値シミュレーションを行う計画です。
この連携により、事業団に受入れる学生は、最先端の宇宙開発現場でのチャレンジングな研究に参加して研究を行うという、貴重な実践的経験の機会を得ることができます。研究成果を修士論文としてまとめ、都立科学技術大学修士号を取得する予定です。
さらに、学生を指導するために高度な知識や経験が要求されるため、事業団職員個人の能力の向上も期待されます。
参考(宇宙用ジャイロとベアリング)
【宇宙開発事業団におけるその他の連携大学院の設置状況】
分野:宇宙環境利用 | 設置時期:平成 9年4月 | |
分野:ロボット、構造 | 設置時期:平成12年4月 |
分野:地球観測 | 設置時期:平成10年4月 |
分野:宇宙環境計測 | 設置時期:平成13年4月 |