プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

H-IIAロケットの今後の在り方について

平成14年4月17日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

基幹ロケットとしてのH-IIAの位置づけ

■試験機2機の打上げ成功により、標準型H-IIAロケットの基本的な機能・性能は実証完了

■今後とも、情報収集衛星等我が国の重要な衛星打上げに対し、これまでと同様の万全の体制で取り組むことが肝要

■一方で、H-IIAロケットを我が国の「基幹ロケット」として捉え、 我が国の宇宙輸送の自在性を確保するとともに、信頼性向上等を図りつつ、基幹ロケット技術を維持させることが重要

■これらを着実に進めるためには、宇宙関連機関及び民間企業の総合的な取り組みによるべきであり、具体的には、今後の打上げ実績を蓄積しつつ、打上げ事業について適切な時期に民営化することが望ましい



標準型H-IIAロケットによる打上げ計画

標準型H-IIAロケットによる打上げ計画


標準型H-IIAロケットのラインナップ

標準型H-IIAロケットのラインナップ
機 体 識 別 名 称 H2A202 H2A2022 H2A2024 H2A204
静止トランスファ軌道投入能力(ton) 4.1 4.5 5.0 6.0
打上げ予定の衛星例 ADEOS-II MTSAT-1R DRTS/USERS
IGS
ETS-VIII


H2A202型からH2A204型へ

H2A202型
H2A202シリーズ
H2A204型の主要改修項目

◇4本の固体ロケットブースタ(SRB-A)を装着する、第1段コア機体の構造体(液体水素タンク及びエンジン部)を改修(取付構造の追加と強度向上)

◇その他のコア機体の設計条件となる、飛行中の動圧及び機軸方向加速度をH2A202型と同等にするためSRB-Aの推力パターンを見直し

◇SRB-Aの4本装着に伴う射点設備の改修

矢
H2A204型
H2A204型
現H2A202型から、わずかの改修で実現可能
矢
標準型H-IIAファミリのひとつとして開発・運用


LE-7Aエンジンの信頼性向上

1.液体酸素ターボポンプの改良
(a)吸込み性能向上
(b)旋回キャビテーションによる軸振動の抑制

インデューサ形状等の変更
2.完全再生冷却(長)ノズルスカート開発
(a)比推力向上
(b)エンジン起動/停止時横推力低減
(c)ノズルチューブ内壁温度低減


運用段階における信頼性向上

■国家宇宙機関として、今後の重要な政府ミッションを高い信頼性をもって打ち上げるため、以下の施策に重点化

  • ロケット技術の根幹を支えるエンジン技術及び進化の著しいアビオニクス(ソフトを含む)等については、わが国の技術戦略アイテムとして重点的に高性能・高信頼性をキープ(例:エンジンについて、認定燃焼試験レベルの信頼性確認試験により信頼性を向上)
  • 開発、製造段階に見られた事象のメカニズム究明と対策
    例:LE-7Aエンジン液体水素ターボポンプ軸振動メカニズム  SRB-A局所エロージョンのメカニズム
    (参考)ESAのアリアン5ロケットでは、 年間約100億円の技術開発関連プログラム(ARTA5)にて、エンジンの信頼性・品質維持のための燃焼試験を実施


H-IIAロケットの民営化

1. H-IIAロケットの商業打上げの現状

■H-IIAロケットを用いた商業打上げは、NASDAと株式会社ロケットシステム(RSC)間の「 H-IIAロケットを用いた人工衛星の打上げに関する基本協定」の傘の下、以下の取決めを締結し実施。

  • 「 H-IIAロケットに係る技術移転取決め」及び「 H-IIAロケット技術移転実施契約」: H-IIAロケットに係る事業団の技術をRSCに有償で移転する旨規定。
  • 「受託打上げ契約」:「打上げ業務受託基準」に基づき、RSCから事業団が受託する打上げ業務に係る権利・義務を規定。
  • 「施設設備供用契約」:「施設等供用基準」に基づき、事業団がRSCに施設設備を供用する業務に係る権利・義務を規定。

■運輸多目的衛星新1号(MTSAT-1R)は、平成15年度に上記の枠組により打上げられる予定。

2.さらに民営化を進めた場合のNASDAのメリット

■商業打上げと合わせて打上げ機数が増加することによる品質の安定

■NASDAの資金的・人的リソースの再配分

3.民営化に向けた環境の整備

■民間の体制整備

■インフラ整備

■法整備