プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

標準型以降のH-IIAロケット開発の在り方

平成14年5月10日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

これまでの議論

 標準型H-IIAロケットの在り方について、平成14年4月17日の宇宙開発委員会においてNASDAより以下のとおり報告し、審議いただいた。

  • 標準型H-IIAロケットについては、情報収集衛星等我が国の重要な衛星打上げに対し、これまでの打上げと同様の万全の体制で取り組むことが肝要
  • 一方で、標準型H-IIAロケットを我が国の「基幹ロケット」として捉え、 我が国の宇宙輸送の自在性を確保するとともに、信頼性向上等を図りつつ、基幹ロケット技術を成熟・維持させることが重要
  • これらを効率的かつ着実に進めるためには、宇宙関連機関及び民間企業の総合的な取り組みによるべきであり、今後の打上げ実績を蓄積しつつ、打上げ事業について適切な時期に民営化することが望ましい



標準型H-IIAロケットのラインナップ

機 体 識 別 名 称H2A202H2A2022H2A2024H2A204
静止トランスファ軌道投入能力(ton)4.14.55.06.0
打上げ予定の衛星例ADEOS-IIMTSAT-1RDRTS/USERS
IGS
ETS-VIII



現行の増強型開発の目的

宇宙ステーション補給ミッションへの対応
さまざまな衛星打上げ需要への対応
将来、簡単な改修で更に大型の衛星にも対応可能
液体ロケットブースタ(LRB)を追加
LRBには第1段と同じLE-7Aエンジンを2基束ねる
標準型と極力部品を共通化
10 トン 低軌道打上げ能力 17トン
4 トン 静止トランスファ軌道打上げ能力 7.5トン
285 トン 打上げ時総重量 410トン
H-IIAロケット
 標準型
H-IIAロケット
 増強型



現行の増強型の開発状況

開発の状況
(1) 平成8年、標準型と増強型を極力共通化することで効率的に開発を行うこととして、H-IIAロケットの開発に着手
(2) 平成13年8月の宇宙開発委員会において、H-IIロケット8号機の失敗を教訓として、標準型の開発を最優先とし、増強型については確実に段階的に開発する必要があることが示された
(3) 現在の状況(概要)
- 開発完了 一部の構造系(コア機体部分)及び電気系
- 未完了 液体ロケットブースタ(LRB)
検討の必要性
宇宙ステーション補給ミッション及び将来の大型ペイロード打上げに対する拡張性と輸送コストの改善



H-IIAロケット打上能力向上の検討案(一例)


現行の増強型
(H2A212)
拡張型案
(H-IIA+)
機体形態
打上能力 GTO
HTV
7.5
15
8
16
LE-7Aエンジン数 3 2
技術課題 エンジン・クラスタ
非対称形態
-
エンジン・クラスタ
-
1段5mタンク



検討の前提

国際宇宙ステーションへの補給
(1) 国際宇宙ステーションへの物資の補給に対して、我が国の宇宙ステーション補給機(HTV)とH-IIAにより応分の貢献を行う計画
(2) 補給がある限り基幹ロケットH-IIAは不可欠かつ中核的な輸送手段
(3) 10年の運用を想定した場合、日本として約70トンの物資の輸送が必要である。
H2A標準型 H2A204(補給量3トン/回) 約23機相当
現行増強型 H2A212(補給量5トン/回) 約14機相当
H2A拡張型 H-IIA+ (補給量6トン/回) 約12機相当
大型衛星への対応
大型衛星の動向として、商業静止衛星は年々大型化
打上げコストのさらなる低減
今後台頭が予想される新型ロケットは、いずれも複数衛星打上げにより衛星1機あたりの打上げコストを大幅に低減する方向。我が国の基幹ロケット民営化後の重要な課題。



今後の検討方針

標準型試験機の打上げ成功によって検証されたH-IIAロケット技術に基づき、標準型に続くH-IIAロケットについては、システム及び開発方式等について一年をかけて検討することとしたい。
1. 国際宇宙ステーション補給ミッション、大型衛星ミッション、複数衛星打上げの大型化等今後の宇宙輸送計画に適切・確実に対応する輸送手段
2. 我が国のロケット開発技術力の維持を適切に行うこと
3. 民間の自主性を重視した開発方式



【参考】今後予想されるロケット群とH-IIA