プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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宇宙ベンチャー・ハイテク開発制度に係る13年度の研究成果概要及び
14年度の実施概要について

平成14年4月17日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

     宇宙ベンチャー・ハイテク開発制度に係る平成13年度の研究成果概要と平成14年度の実施概要について報告する。

2. 制度の目的

     宇宙ベンチャー・ハイテク開発制度は、ベンチャー企業の有する魅力的なアイディアやユニークな技術を将来の宇宙開発に活かしていくこと及びベンチャー企業が宇宙開発に積極的に参画することを通じた新技術創出を目的とし、平成12年から継続して実施している。

3. 概要

3.1 平成13年度の研究成果(別紙1)

    (1) 平成13年度は、宇宙応用化を目指し、1件当たり1〜2,000万円の研究経費をかけた戦略研究4件及び100万円程度の研究経費による芽出し調査研究(フィージビリティ・スタディ)11件を実施した。
    (2) 研究の結果、宇宙応用化間近の成果を得ることができ、また、特許も数件出願できる見込みである。
    (3) これらの成果については、今後、積極的に宇宙開発事業団の事業に活かしていきたいと考えている。また、NASDAニュースへの掲載やNASDA-iなどを通じて広く紹介することとしたい。

3.2 平成14年度の実施概要

    (1) 研究課題設定の考え方
     航空宇宙技術研究所及び宇宙開発事業団の重点研究を補完する研究、重点研究への協力テーマとなりうる研究、統合後の新機関に役立つ、以下の先端、新規の技術を対象とする研究項目を設定する。

    (a)具体的課題(別紙2)
        上述の考え方に基づいて次の4分野の重点項目を設定する。
       なお、その他のテーマとして、前年度採択の継続テーマ及び共同研究の見込みのたつテーマなどは、次の4分野にかかわらず可能とする。

    1
    2
    3
    4
    熱技術
    マイクロ化技術
    材料・部品技術
    誘導制御技術

    (2)研究形態
      ○ベンチャー企業との共同研究により実施する。
      ○研究テーマは公募により設定する。
      ○提案内容の段階に応じて戦略研究(研究費1〜2,000万円程度)と芽出し調査研究(研究費100万円程度)の2種類とする。

    (3)研究期間

      公募期間:平成14年4月〜5月末日
      研究期間:平成14年6月(予定)〜平成15年2月末日

    (4)その他

      ○中小ベンチャー企業と宇宙機関との架け橋として宇宙ベンチャー室を設置し、経験豊富なシニアコーディネーターが技術コンサルティングを実施する。
      ○本制度の趣旨を中小ベンチャー企業の方々に直接ご説明して意見を伺い、宇宙分野に活用できる技術を広く発掘することを目的として、全国各地で交流会を開催する。

    以 上

 

(担当:宇宙開発事業団研究総監 狼 嘉彰)



第2回宇宙開発ベンチャー・ハイテク開発制度の成果概要(戦略研究)



■ベンチャー大賞:
集積化加速度計・ジャイロによるマイクロセンサシステムの開発 
((株)大日電子)

<1チップジャイロの開発>
■特別賞:超耐熱材料SiNBCセラミックスの宇宙材料への応用((株)化研)
<2000℃以上の耐熱材料の開発>



4つの戦略研究の成果概要

番号企業名研究テーマ主な成果概要宇宙応用化、民生利用の可能性
1 (株)大日電子 集積化加速度計・ジャイロによるマイクロセンサシステムの開発 シリコンマイクロ加工テクノロジとアナログ/デジタル混載周辺回路の密結合により、高性能な加速度及び角速度検出システムを構築するため、1チップセンサデバイスの設計開発等を行った。 小型軽量化、均一な特性を持つ製品を大量生産できる工程より単価の劇的な低減が図られ、加速度計・ジャイロシステムの超小型化による人工衛星の超小型軽量化の実現、また小型ロボット等にも適用可能性がある。
2 (株)化研 超耐熱材料SiNBCセラミックスの宇宙材料への応用 超高速飛行体の機体断熱材や燃焼器材料として利用できる高温(2000℃以上)の耐熱性を実現するため、SiNBCセラミックスの機械的、熱的特性など基礎物性の評価、各試料の試作、宇宙材料としての必要な基礎的評価を行った。 再使用型宇宙往還機の再突入耐熱システムへの適用、宇宙開発のコスト低減、質の向上を図るための使用材料の軽量化、先進耐熱材料や先進複合材料の開発に応用可能の他、化学プラントや高温ガスタービンなどの耐高温部材への適用も期待できる。
3 クラスターテクノロジー(株) 軽量TiBNセラミック多孔質材料の開発・応用 燃焼合成反応の新規技術により新素材の開発と、耐熱・軽量・耐薬品に優れた多孔質材料を合成し、その中で、ヒートパイプや流体ループとして使用可能な機能性成形品を提供するため、燃焼合成試験及び特性評価を行った。 人工衛星の軽量化や耐食性の実現。宇宙ステーション内の空気や水質浄化にも応用分野が広がり、自動車の排ガス用触媒としての浄化システムへの応用が期待できる。
4 (株)新生工業 超音波振動を利用した非磁性型アクチュエータの宇宙仕様化と宇宙応用に関する研究 超音波振動を利用したアクチュエータ(超音波モータ)の宇宙仕様化に向け、試験装置の開発と環境試験データの収集、課題の抽出及び評価を行った。 超音波モータの小型軽量化、回転角度の維持可能により、新しいアクチュエータとして期待。動作域が可聴範囲外のため、宇宙ステーション内の飛行士に静かで快適な作業、生活環境も提供可能となる。


平成14年度 ベンチャー事業 募集分野

No 募集分野 概  要

小区分
1 熱技術 マイクロ・チャンネル型ヒートシンク 長尺・薄板(特殊金属、非金属材料)に周期的な加工を施したヒートシンクの開発
フレキシブル・ラジエータ 高伝熱性フィルム材料の開発、熱輸送・放熱機構の一体成型の技術開発
2 マイクロ化技術 超小型コンポーネント、部品 50〜200g程度の人工衛星構成部品の開発(GPS受信機、展開機構、ホイール、通信機器、データ処理系、カメラ等)
IC等の少量多品種生産技術 特定用途向けの少量多品種ICの開発に必要な電子ビーム露光技術、マイクロファクトリー等
マイクロマシン技術 マイクロマシン技術(Micro Electro Mechanical System;MEMS)を用いた小型光スキャンニング素子および光波面制御素子
フォトニッククリスタル技術を用いた高機能光素子 フォトニッククリスタル材料を用いた集積化光機能素子の開発
3 材料・部品技術 ナノ・テクノロジー  人工衛星等の小型・軽量化、省エネルギ化、高性能・高機能化、長寿命・高信頼性化等への寄与が期待される、ナノ・テクノロジーの適用により自己修復性等の画期的な特性を付与した、部品・材料等の開発
軽量耐熱材料 1000℃を超える表面温度環境から内部機構を熱的に保護する耐熱材や、更に過酷な環境で使用するアブレーション耐熱材の開発
先進複合材料 将来型輸送系に必要な金属材料に代わり得る軽量材料の開発
稼動・展開確認技術 リモートコントロールする機器の簡易・軽量な稼動・展開確認技術の開発
ダスト除去・付着防止技術 土壌の付着防止技術、もしくは付着してしまった土壌の除去をする技術の開発
4 誘導制御技術 小型/高性能GPS受信機 カーナビや携帯電話に組み込まれているGPS受信モジュールを応用した小型/高性能なGPS受信機の開発
小型軽量電波高度計 小型且つ軽量の電波を使った高度・速度の計量
衝撃吸収技術 地面へのソフトランディングに必要な衝撃吸収技術の開発