プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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高速飛行実証フェーズI 第1回飛行実験の結果について

平成14年10月23日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

第1回飛行実験の概要

【目的】
気象条件が穏やかである時に、離陸後、脚を格納し、急激な機体姿勢角変動を採ることのない比較的低高度の経路を飛行し、着陸することにより、以下の項目を確認する。
(1)自律飛行性能確認
(2)搭載機器の基本性能確認

【結果】

(1)発進日時: 平成14年10月18日(金) 午前5時50分(現地時間)
(18日(金) 午前0時50分(日本時間))
(2)飛行時間(発進から停止まで): 約9分30秒
(3)着陸時の天候: 晴れ、南東の風、風速 約1m/s(瞬時値)
(4)停止点
 滑走路*端からの距離:
 滑走路中心線からの距離:
約1225m (滑走路*:長さ1800m)
約0.8m
(5)高度保持時の高度: 約600m (計画値:600m)
(6)高度保持時の対気速度: 約80m/s



第1回飛行実験の飛行経路




主要シーケンス・オブ・イベント

イベント実績(暫定値)計画
発進 0秒 0秒
機首上げ開始 13秒 13秒
離陸 17秒 16秒
脚上げ 23秒 24秒
上昇終了 48秒 46秒
第1回旋回開始 1分24秒 1分24秒
最終旋回開始 6分30秒 6分18秒
脚下げ開始 7分55秒 7分43秒
主脚接地 9分07秒 8分56秒
ブレーキ開始 9分18秒 9分05秒
停止 9分35秒 9分23秒



自律飛行性能確認結果

区分確認項目結果(カッコ内はノミナル値)
離陸 ・滑走路上を加速し、適切な速度で、機首引起しを出来ること。
・引起し後、離陸速度まで加速し、離陸できること。
・機首上げ時の速度:40m/s(40m/s)
・離陸時の速度59m/s(60m/s)
・滑走距離:450m(455m)
上昇 ・脚を適切に収納できること。
・目的の経路を適切な上昇率で上昇できること。
・適切な高度で水平飛行に移行できること。
・EAS(等価対気速度)保持モード終了時のEAS:91m/s(92m/s)
・脚収納開始高度:13m(12m)
・水平飛行高度:600m(600m)
巡航 ・目標のポイントに向かって適切に飛行できること。
・旋回が出来ること。
・適切な速度制御が出来ること。
・ポイントの位置
(-5950m,3970m)(-5940m,3970m)
・旋回半径:2.0km(2.0km)
・巡航速度:80m/s(80m/s)
進入/着陸 ・正しく進入経路に載ることが出来ること。
・適切な速度制御/降下率制御が出来ること。
・脚出しが確実に実施されること。
・接地後の機首下げを正しくできること。
・適切な着陸滑走の方向制御ができること。
・適切な制動制御ができること。
・目標進入経路からのずれ:2.6m
・脚出し高度:250m(250m)
・接地時降下率:1.8m/s(1.5m/s)
・接地点(滑走路端より):285m(300m)
・接地後ピッチレート:20deg/s(1deg/s)
・左右方向のずれ
 接地時:-4.7m(-1.6m)
 停止時:+0.8m(+0.5m)
・滑走距離:940m(890m)



搭載機器の基本性能確認結果

・航法精度
飛行中の統合慣性センサの位置誤差は以下のとおりであり、要求値(各方向とも1m以下)を満足

 最大位置誤差位置誤差の1σ
滑走路方向 0.41m 0.08m
滑走路横方向 0.23m 0.05m
垂直方向 0.81m 0.11m
誤差:キネマティックGPS値との差

・データ取得状況
電波リンクは全飛行領域に対し良好であった(一部瞬断あり)。
全ての技術データが予定どおり取得できた。(項目数:263項目)

・その他の搭載機器の状況
全て良好に作動した。






特記事項(着陸時のバウンド現象)

【現象】
 着陸時にバウンド現象が認められた。バウンド現象は、事前のシミュレーションの一部のケースでも確認されているが、これに比して大きめであった。
 なお、バウンド時の衝撃加速度については、最大3G程度であり、規定値(主脚:4G、搭載機器:15G)に比べ小さく、かつ実験後の脚部、搭載機器の機能点検の結果も良好であった。

【原因】
 接地時の頭下げ角速度が予想より大きく、その結果、空力舵面による頭上げが過剰に作動し、再浮上が生じたものと推定している。頭下げ角速度の予想が異なったのは主として脚からの反作用の扱いにおいて考慮されていないパラメータがあったためと考えている。

【対処】
 バウンド現象を緩和するため、脚の反作用のモデルを改善した後、接地後の姿勢制御パラメータなどを調整し、次回試験に臨むこととしたい。




飛行実験当日作業状況


機体搬出前点検

機体搬出

飛行前準備(管制棟内)

飛行状況(発進直前)

飛行状況(着陸直前)

着陸後点検



まとめ

■第1回の飛行実験において、予定どおりの基本機能が確認できた。

■次回試験については、着陸時のバウンド現象緩和の処置を講じた上、10月28日の週を目処に「経路追従試験」を実施する方向で詳細を検討中である。