プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

高速飛行実証フェーズI飛行実験結果について

平成14年11月20日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

高速飛行実証フェーズIの目的

  • 再使用型宇宙輸送系用進入・着陸システムの検証
    再使用型宇宙輸送系に特有な急角度の進入降下を伴う進入・着陸システムの検証を行う。


  • 自律飛行技術の蓄積
    自動離着陸を含む自律飛行可能な機体の開発をとおして、再使用型宇宙輸送系に必須な自律飛行技術の蓄積を図る。



飛行実験結果一覧

実験
番号
発進日時
(日本時間)
実験項目評価項目評価結果
第1回 10月18日
午前0時50分
基本機能確認 ・自律飛行性能確認
・搭載機器の基本性能確認
・着陸時のバウンド現象を除いて、全ての基本機能を確認した。
第2回 11月5日
午前0時22分
経路追従
(その1)
・経路追従性能確認(緩経路角)
・着陸時バウンド対策の確認(追加)
・経路角13度の経路追従性能を確認した。
・着陸時バウンド対策の有効性を確認した。
第3回 11月16日
午前0時40分
経路追従
(その2)
・経路追従性能確認(急経路角)
・ダウンレンジ局との電波リンクデータ
・経路角25度の経路追従性能を確認した。
・ダウンレンジ局との電波リンクデータを取得した。

(注1) 空力データ同定手法確認は、3回の飛行実験により、必要なデータが取得できたと判断される。
(注2) 第2/3回の飛行実験において、強い上空風等の厳しい気象条件下での実験が行われ、良好な再現性が確認できた。



離陸性能

【結果】

評価項目第1回第2回第3回要求値
離陸対地速度 (m/s) 59 58 60 71以下
離陸距離 (m) 448 457 488 1800以下
最大横変位 (m) -0.9 -1.2 1.4 ±14以内
離陸時姿勢角(ピッチ角) (度) 15 15 16 24以下
離陸時姿勢角(バンク角) (度) 1.5 1.0 1.7 ±10以内

【1次評価】

 要求値に対して十分余裕を持って離陸しており、また再現性も良く、良好な離陸性能を持つと考えられる。




着陸性能

【結果】

評価項目第1回第2回第3回要求値
接地横位置 (m) -4.7 -1.8 -0.7 ±14以内
接地時対地速度(m/s) 63 59 62 71以下
沈下率(m/s) 1.8 1.4 1.4 3以下
接地時姿勢角(ピッチ角) (度) 16 15 15 17以下
接地時方位角 (度) 0.2 1.1 0.0 ±6以内
停止位置 (m) 1229 1133 1260 1800以下
停止横位置 (m) 0.8 1.6 1.0 ±14以下

【1次評価】

 第1回飛行実験においてバウンド現象が確認されたが、その後の飛行では抑制されており、さらに各飛行実験において要求値に対して十分余裕を持って着陸していることから、良好な着陸性能を持つと考えられる。




経路追従性能

【結果】

確認項目第2回第3回要求値
経路角 (度) 13 25 -
直線経路横変位最大値:
 (位置指令に対して) (m)
11 -13 ±50以内
平衡滑空模擬時の高度誤差最大値:
 (高度指令に対して) (m)
-3 -4 ±15以内
垂直荷重倍数 1.1 1.3 2.5以下
引起し後高度 (m) 300 300 300目標

【1次評価】

 要求値に対して十分余裕を持って設定経路に追従しており、また、飛行速度が高くなる平衡滑空模擬後半の姿勢も安定しており、良好な経路追従性能を持つと考えられる。




まとめ

  • 第1回飛行実験において、基本機能確認飛行を、第2/3回飛行実験において、再使用型宇宙輸送系経路追従飛行を実施し、それぞれ良好な実験結果を得た。


  • これまでの飛行実験の結果より、フェーズIは所期の飛行実験目的を達成できたことから、フェーズIの飛行実験を終了し、今後データの詳細解析を行うとともに、フェーズIIの準備に移行する。



【参考】
第3回飛行実験結果




第3回飛行実験の概要

【目的】
 高度5kmから経路角25度の進入経路への経路追従能力について確認する。
【結果】
(1)発進日時 平成14年11月16日(火) 午前5時40分(現地時間)
   (16日(火) 午前0時40分(日本時間))
(2)飛行時間(発進から停止まで) 約18分08秒
(3)着陸時の天候 晴れ、東の風 風速 約2m/s(瞬時値)
(4)停止点 滑走路端からの距離: 約1260m(滑走路長:1800m)
滑走路中心線からの距離: 約1.0m
(5)高度保持時の高度 約5000m(計画値:5000m)
(6)高度保持時の対気速度 約75m/s
(7)経路追従時の経路角 約25°  (計画値:25°)
(8)経路追従時の最大速度 約135m/s



第3回飛行実験の飛行経路




第3回主要シーケンス・オブ・イベント

イベント実績(暫定値)計画(ノミナル風)
発進 0秒 0秒
離陸 18秒 19秒
第1回旋回開始 1分23秒 1分24秒
上昇終了 5分26秒 4分37秒
第2回旋回開始 5分55秒 5分39秒
経路追従開始 7分07秒 6分42秒
第3回旋回開始 10分07秒 9分42秒
再上昇終了 11分47秒 11分22秒
最終旋回開始 15分02秒 14分30秒
脚下げ開始 16分29秒 15分54秒
最終引き起こし 17分38秒 17分04秒
主脚接地 17分41秒 17分08秒
停止 18分08秒 17分33秒



第3回飛行実験状況



発進直前


最終引き起こし直前




接地直後


着陸後



ダウンレンジ局との電波リンクデータ特性

【結果】

 クリスマスダウンレンジ局での実証機テレメータデータ受信状況は、アンテナ仰角が低くなり、受信が困難と予想された着陸時においても、2波とも飛行高度約25mまで受信できた(第3回飛行実験結果)。



クリスマスダウンレンジ局におけるテレメータ受信状況