プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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国際宇宙ステーション(ISS)計画の進捗状況

平成14年5月22日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

国際宇宙ステーション(ISS)計画の概要・経緯

(1)概要

日本、米国、欧州、カナダ、ロシアの計15ヶ国が共同して行う平和目的の国際協力プロジェクト。
低軌道(約400km)の地球周回軌道上で組み立てられる有人ステーション。
搭乗員は日本人搭乗員を含め7名(本格運用時)。
我が国は、日本の実験棟(JEM:愛称「きぼう」)をもって参加。JEM並びに搭載実験装置の開発及び運用施設の整備・運用、JEMのスペースシャトルによる打上げの代わりとして生命科学実験施設(セントリフュージ)の開発、共通的運用経費の代替として打ち上げる宇宙ステーション補給機(HTV)の開発を実施。

(2)経緯・スケジュール

昭和59年1月 レーガン米大統領が有人宇宙ステーションの建設を提唱。日本、欧州及びカナダに参加を招請。
昭和63年9月 日、米、欧、加の4極の間で宇宙基地協力協定を署名。
平成5年12月 日、米、欧、加4極はISS計画への露招請を決定。露はこれを受諾。
平成10年1月 日、米、欧、加、露5極間で新しい宇宙基地協力協定を署名。
11月 最初のISS構成パーツを打上げ。
平成12年11月 第1次搭乗員によるISS長期滞在開始。
平成13年2月 米国実験棟打上げ。
3月 我が国初の実験装置(中性子モニタ装置)打上げ、実験開始。



ISS計画の意義

従来、我が国のISS計画は、

■有人宇宙技術等の先端技術開発
■宇宙環境利用

を2つの柱として推進。



ISS計画の進捗状況




有人宇宙技術開発の進捗状況






JEM開発の進捗状況
JEMの開発は最終段階。
フライト実機の全体システム試験を完了。
2003年頃KSC向け出荷予定。
今後、軌道上での検証・運用等を通して関連技術開発の検証を行う。
有人宇宙技術の達成状況
JEM開発を通じて、大規模有人宇宙システムの開発技術を修得。例えば、
  • 安全性設計・検証技術
  • 軌道上保全性設計(搭乗員の船内・船外活動、ロボットによる保全)及び検証技術
  • 搭乗員との協調による故障検知・隔離・回復機能の設計技術
  • 与圧空間の環境制御(空気調和、与圧制御、火災検知)技術
  • 軌道上組立技術、宇宙ロボティクス技術
  • 人間・機械系総合システム機能に係る要求基準等の確立、など







JEM運用の準備状況
管制要員候補者をNASAに派遣するなど養成訓練を実施。
JEMトレーナを整備しISS搭乗員の訓練を実施中。
JEMの全体システム試験に合わせて管制システムの適合性試験を実施予定。
搭乗員の健康管理、宇宙医学研究を実施中。
有人宇宙技術の達成状況
JEM運用準備を通じて、宇宙空間で人間を安全かつ健康に
活動させるための管理技術を修得中。
例えば、
  • 有人宇宙機の運用管制技術
  • 宇宙飛行士関連技術として
    • 微小重力環境下での搭乗員の動作や操作手順の検討・検証技術
    • 宇宙飛行士の選抜、養成訓練、健康管理に関する技術、など







HTV開発の進捗状況
基本設計を終了し、詳細設計段階へ移行。
コンポーネントの製作試験を実施中。
サブシステムレベルの試験を開始。
有人宇宙技術の達成状況
HTVは有人安全性が要求される無人システム。HTV開発を通じて、我が国独自の補給システムに係る技術を修得。例えば、
  • ISSへのランデブー及びバーシングに必要な誘導・制御・航法技術及び管制を含む安全飛行に係る技術など
  • 軌道上ロボットによる交換技術







生命科学実験施設開発の進捗状況
基本設計を終了し、詳細設計へ移行。
生命科学グローブボックスはフライト実機を製作中。
重力発生装置並びに搭載モジュールは開発試験モデルによる試験を実施中。
有人宇宙技術の達成状況
JEM開発を通じて得た取付型多目的実験モジュールの開発技術を基盤としてCAMを開発し、さらに大型回転装置の制御やバイオアイソレーション等の新規技術を修得する。
  • 回転システムの制振、制御技術
  • 流体伝送技術
  • 微小重力制御技術
  • 生物実験作業環境制御技術





宇宙環境利用の進捗状況

ISS初期段階の目標は、科学的利用の有効性を早期に提示すること。そのために人的・技術的基盤の整備、研究者コミュニティの育成、領域の開拓を実施中。
現時点までに、宇宙環境利用の有望分野の絞込み、国際的コミュニティでの日本のサイエンスのプレゼンスの達成、実利用の潜在ユーザーの発掘などを実現。



-科学研究

  • 国際的な実験テーマ公募に参加し、国際水準のテーマとして16テーマが選定済み。
    (生命科学11、物質科学5、内NASDA自主研究4)
  • 公募地上研究として8分野について実施中。延べ460件の地上研究を実施。
  • 我が国の宇宙環境利用の推進の牽引力となる研究について自ら計画的に推進。
  • JEM曝露部を利用した科学研究テーマとして、全天X線監視装置(MAXI)、超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)を開発中。また、宇宙環境利用のための基礎データ収集として、宇宙環境計測ミッション装置(SEDA-AP)を開発中。

-技術開発

  • JEM曝露部を利用した理工学・通信、宇宙インフラストラクチャ整備のための基盤的・先端的な技術開発テーマとして、超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)、光通信実験装置(LCDE)を開発中。

-先導的応用化研究

  • 宇宙環境利用の有効性実証を目的とした先導的応用化研究制度を整備。実利用の潜在的ユーザとして、製薬企業、国家的タンパク質構造機能解析プロジェクトと宇宙利用について協議中。その他分野の実利用に向けた予備的な活動を実施中。

-教育・文化(一般利用)

  • 従来の科学研究や技術開発の分野に加えて、それ以外の新たな利用分野について、公募による提案者と共同でパイロットプロジェクトを試行、民間利用等を段階的に推進中。
  • JEMを利用した青少年教育プログラム(簡易な宇宙実験等)などの国民参加プログラムを積極的に実施。



船内実験室 共通実験装置の開発状況

JEMの打上げ・組立検証後に開始される初期運用段階での軌道上実験に用いる共通実験装置について、プロトフライトモデル(PFM)の製作・試験を実施中。
今後、軌道上での運用を通じて、共通基盤的な実験技術の検証を行う。
温度勾配炉 画像取得処理装置 細胞培養装置 クリーンベンチ


溶液・蛋白質結晶成長実験装置 流体物理実験装置 帯域炉



我が国の参画意義