プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

国際宇宙ステーション(ISS)計画の進捗状況に係る補足説明

平成14年5月29日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

5月22日に宇宙開発委員会において、国際宇宙ステーション(ISS)計画の進捗状況の報告をした際、ご指摘のあった以下の点に関し、補足説明を行う。

● 進捗状況
- 有人宇宙技術の蓄積の状況
- 宇宙環境利用の推進の状況
● 予算状況
- 開発・運用利用準備段階
- 定常運用経費の試算
● 米国ISS計画見直しに伴うJEM利用へのインパクト

有人宇宙技術の蓄積の状況

項目 技術的内容 進捗状況*)
1.JEM開発
安全性、保全性、与圧空間の環境制御、軌道上組立など、大規模有人宇宙システムの開発に係る技術
全体システム試験を実施中 (95%)
2.JEM運用    
 ■ 運用準備
運用手順の検討・検証、有人システムの運用管制など、宇宙空間で人間を安全に活動させる管理技術
管制システム整備/運用要員訓練を実施中 (62%)
 ■ 搭乗員養成
宇宙飛行士の選抜、養成訓練、健康管理、宇宙医学に関する技術
・これまでに日本人宇宙飛行士8名を選抜、養成訓練を実施。
 うち4名が延べ7回の飛行(約1〜2週間)を経験(長期滞在は未経験)。
アドバンスト訓練を実施中 (77%)
 ■ 打上げ・軌道上検証
打上げ・運用フェーズでの技術検証の実施
準備段階 (0%)
3.JEM打上費/共通経費のオフセット    
 ■ セントリフュージ開発(JEMシャトル打上費)
JEM開発技術を基盤に、回転システムの制振制御、流体移送、生物実験作業環境制御技術などの新規技術
基本設計終了 (29%)
 ■ HTV開発(共通運用経費)
ISSへのランデブー及びバーシングなど、有人安全性が要求される無人補給システムの開発・運用技術
詳細設計を実施中 (37%)
課題: JEM開発はほぼ終了したが、今後は打上げ・軌道上組立・運用を通じた技術の検証が必要。
今後の取組みロードマップの検討が必要。
*) %=FY13までの予算額/プロジェクト資金



宇宙環境利用の推進の状況

項目 進捗状況
1.科学技術における利用の拡大
90年代からのシャトル実験、小型ロケット実験、公募地上研究などを通じて、研究者コミュニティとの連携を推進し、科学利用の裾野を拡大。
関連学会員数:約1400名 (3学会)
公募地上研究:460件(H8から合計)
 
船外プラットフォーム初期利用ミッションとして4テーマを選定し、ミッション開発を実施中。
 
国際的な実験テーマ公募に参加し、国際水準のテーマとして16テーマが選定され、実験準備を実施中。
 
 
FMPT、IML-2等のシャトル宇宙実験に参加し、実験技術、利用運用技術の開発を実施。
フライト実験:148テーマ
参加研究者:延べ500名以上(共同研究者含)
 
有望な分野、国際競争力のある分野が見極められつつある。
2.利用の多様化
民間企業による利用の促進活動を実施中。本年7月のSTS-107での蛋白質結晶成長実験を準備中。
STS-107:5テーマ準備中
研究会:8分野、延べ71回、109社が参加
パイロットプロジェクト:1テーマ(広告)、フィジビリティスタディ:17テーマ(13、14年度)
 
研究開発以外の分野については、教育、文化、ビジネス等ISS/JEMの新たな利用についてパイロットプロジェクトを実施中。
3.JEM実験装置開発・運用
物質科学、生命科学分野での与圧部利用の有効性を幅広く検証するため、汎用の船内実験装置を開発中。
実験装置開発費:69% *)
*)%=FY13までの予算/プロジェクト資金
 
宇宙科学、地球科学、技術開発の分野の船外実験装置を開発中。
 
打上げ・軌道上運用を通じて実験技術等の実証を行う。
準備中(0%)
(参考)NASA等のJEM利用
NASAは船外での低温物理実験などを計画中。
課題: JEM打ち上げ後の確実な装置/利用運用技術の検証、シャトル実験や地上研究を踏まえた重点化、利用の多様化への対応が必要




予算状況(開発・運用利用準備段階)

参考:平成14年度のISS計画の認可予算額は約378億円。



定常運用経費の試算(搭乗員7人体制の場合)

JEM利用

  • 実験運用
  • 実験準備
  • 実験装置開発 等
    JEM運用

  • JEMシステム運用
  • 搭乗員育成、訓練
  • 安全に係る業務 等
    HTVによる物資の補給経費

  • ISS物資補給(共通運用経費負担分)
    (年間10トン)
  • JEM固有物資補給(年間2トン)



    米国ISS計画見直しに伴うJEM利用へのインパクト

     NASAは当面、米国居住棟、搭乗員帰還機の開発を見合わせ、米国基幹部分(搭乗員3人体制)に限定した開発を進めることを検討している。
     3人体制が継続する場合、JEM利用に及ぶ影響は以下の通りである。


    利用資源
    電力 クルータイム
    搭乗員7人体制 日本
    (12.8%)
    4.5KW 15.4時間/週
    ロシアを除く
    4極
    35KW 120時間/週
    搭乗員3人体制 日本
    (12.8%)
    4.5KW 2.6時間/週
    ロシアを除く
    4極
    35KW 20時間/週

    3人体制の場合、電力には影響はないが、クルータイムは約1/6に減少する。




    研究コミュニティの現状

    1. 関連学会の状況

    マイクログラビティ応用学会:約350名
    宇宙生物科学会:約500名
    航空宇宙環境医学会:約500名
    その他関連が深い学会
    結晶成長学会
    放射線影響学会
    植物学会
    骨代謝学会
    物理学会

    2. これまでの研究公募への応募状況

    公募応募数選定数
    第1回船内実験室テーマ公募(平成5年度選定) 208 50
    船外実験プラットフォームテーマ公募(平成8年度選定) 72 4
    第2回ライフサイエンス国際公募(平成11年度選定) 46 5
    STS-107蛋白質結晶成長実験(平成11年度選定) 14 6
    第3回ライフサイエンス国際公募(平成12年度選定) 25 1
    第1回微小重力科学国際公募(平成13年度選定) 19 5
    第4回ライフサイエンス国際公募(平成13年度選定) 15 6
    ラットサンプルシェア実験公募(平成13年度選定) 17 8



    宇宙ステーションでの実験テーマ数の現状

    スペースシャトル実施予定テーマ
     
  • STS-107蛋白質:6テーマ
  • STS-R2結晶成長メカニズム:3テーマ
  • 先導的応用化研究:5テーマ
  • STS-R2ライフ国際公募:2テーマ
  • STS-107ラットサンプルシェア:8テーマ

    米国実験棟中性子計測: 1
    露サービスモジュール利用: 2
    きぼう船外プラットフォーム:4
    利用多様化パイロットプロジェクト: 1

    平成5年選定船内テーマ:18
    国際公募(微小&ライフ):14




    宇宙開発事業団におけるフライト実験実績(1991-2000)

    手 段回 数
    スペースシャトル 12
    ミール 2
    SFU* 1
    小型ロケット 7

    *Space Free flyer Unit: 宇宙実験フリーフライヤー




    先導的応用化研究の現状

    テーマ応募/選定状況

    分野応募数選定数
    蛋白質 13 6*
    材料 9 0
    燃焼 2 0
    その他 6 0
    合計 30 6
    *:うち1件については進捗状況評価の結果、フライト実験を取りやめ、地上研究のみ実施。

    研究会活動状況

    研究会開催回数参加企業数
    蛋白質結晶構造解析 8 8
    高機能性材料 33 32
    燃焼 12 32
    その他  色材香料
     環境
     再生医療
     無接触凝固プロセス
     気泡制御
    18 37
    合計 71 109



    新たな利用アイディアについての検討状況

    テーマ名 概 要

    パイロットプロジェクト

    国際宇宙ステーション映像を活用したCM制作・実施プロジェクト 宇宙ステーションでシナリオに基づいた本格的なCMを撮影し放映するプロジェクト

    フィジビリティスタディ(平成13年度選定)

    宇宙ロボットコンテスト 無重量下でロボットに競技を行わせるロボットコンテストを、教育面での利用拡大も考慮の上実施する
    スターメール ISSを経由するメッセージサービス(14年度継続)
    宇宙ガーデニング 宇宙飛行士のヒーリングなどを目的とした簡易な植物栽培
    利用拡大のための宇宙における食文化の検討 宇宙食に係るデータ整理、宇宙食・パッケージの提案・開発等
    利用拡大のための宇宙における服飾の検討 素材や機能やデザインの観点から宇宙での日常着の検討・提案(14年度継続)
    宇宙VIマーク作成&ブランド化プロジェクト 宇宙VIマークの開発とNASDAの提供可能なリソースとのリンケージをはかりミニスポンサーシップに向けたモデルを考察する(14年度継続)
    搭載カメラを利用した宇宙教育システム JEM搭載カメラを活用したリアルタイム教育システムなど複数のアイディアを含む(14年度継続)
    無重量環境における東アジア古代舞踊の試み/敦煌・飛鳥舞踊図(飛天図)との比較研究 古代の飛天図を無重量の視点から再考察し、無重量下で芸術的に古代の飛天図を再現して演技する試み
    アートの効果的活用に関する試行的プロジェクト 宇宙とアートの融合やアートを通じたJEMのイメージ表現の試み(14年度継続)

    フィジビリティスタディ(平成14年度選定)

    きぼうに関連する画像、ビデオ、音声等を一般国民に広く利用を普及させるための手法 NASDAの保有する画像等のデータを一般に広く利用して頂くための制度の検討
    Space Ram(新しい宇宙食の開発・宣伝・地上事業への展開) 宇宙食としてかねてから要望の高い麺類を保存、パッケージ、調理方法、喫食方法等を検討し開発。医療、保存食としての応用も。
    スターメール発展型サービス(スター・キャンプ) 第1回フィジビリティスタディで実施基盤を確立した「スターメール」(ISS(JEM)を経由するメッセージサービス)をアミューズメントシアターに発展させる検討



    JEM利用におけるNASA準備状況

    :NASAペイロード
    船内実験室(5ラック)
    多目的実験ラック(3ラック) 開発中
    先端的支援実験装置(AHST) 見直し中
    バイオテクノロジー装置 見直し中
    船外実験プラットフォーム(5ポート)
    低温物理実験装置 開発中




    NASA諮問評議会(NAC)勧告の概要