宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
例) |
物質科学分野 「結晶成長等の自己組織化研究」、「液体構造と物性の相関の研究」 |
生命科学分野 「生体の重力応答機構の研究」、「宇宙医学の実践的研究」 |
例) |
科学観測分野 「全天X線観測ミッション」、 「成層圏大気中の微量気体成分の3次元観測ミッション」 |
例) |
利用領域単位での集中利用(キャンペーンモード)の実施 自動運機能を持つ実験装置の活用 |
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初期運用段階では、開発した有人宇宙システムの軌道上検証を行い、基盤技術開発の達成度を確認。 |
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定常運用段階では、今後の有人技術開発に向け、JEMを宇宙実証テストベッドとして利用して技術開発を実施。(そのための目標設定とロードマップ作成を重点的に実施。) |
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初期運用段階では、JEM船外実験プラットフォームのテストベッド機能の検証と技術データの取得に重点を置く。(宇宙環境計測ミッションの実施など。) |
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定常運用段階では、搭乗員の技術支援が得られる実験環境を活用し、JEMならではの先端技術開発を実施。 例) 搭乗員に代わり曝露環境で作業を行う宇宙ロボットの技術実証ミッション |
重点領域 | 当面の目標 | 期待される成果/意義 |
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結晶成長等の 自己組織化の研究 |
○対流擾乱の無い微小重力環境のもとで、結晶成長の形態・溶液相の濃度・温度場を観察することにより、素過程と結晶成長形態との相関を定量的に把握。 (結晶成長は、(1)結晶表面への溶質の輸送、(2)結晶表面での溶質の取り込み、(3)凝固に伴う潜熱放出の3つの素過程で支配される。地上では、対流擾乱により過程が複雑系化し、素過程の分離観察が不可能。) |
○多様な結晶成長形態(パターン形成)の理解。 ○異方性結晶成長に対する数理モデルの構築とその実験的検証。 ○数理科学の発展への貢献。(自由境界問題とパターン形成の数理に対する理解促進への貢献。) ○結晶成長の素過程の理解。 (新規材料創製やナノテクノロジーの発展への貢献) |
液体構造と物性の 相関の研究 |
○対流擾乱の無い微小重力のもとで顕在化する様々な熱・物質の輸送過程を高精度計測によって定量的に把握。 ((1)化学ポテンシャルの勾配によって引き起こされる粒子輸送としての拡散、(2)熱流が物質流を引き起こすソーレ効果、(3)濃度勾配が熱流を駆動するデュフォー効果、並びに、(4)表面張力対流による熱・物質輸送などの定量化) ○融液の拡散係数の高精度測定(拡散係数の温度依存性)を通して、液体構造と物性の相関に関する基礎データを取得。 |
○微小重力環境で顕在化する物質輸送過程の体系的理解とその数理モデル化。 (微小重力環境を工学的に利用するための基礎確立への貢献) ○複雑な構造を有するゲルマニウム、シリコンなどの融液について、構造と物性の相関を体系的に理解するための基盤の構築。 (工業的にも有用な物質について、原子・分子レベルでの固液界面のダイナミクスの知見を、鋳造や結晶成長などの材料プロセッシングに応用) |
高品位蛋白質の 結晶育成 |
○ポストゲノム研究や創薬応用で重要な蛋白質のうち、構造解析に必要な高品位結晶が得られにくい蛋白質に対し、微小重力環境での結晶育成の実施。 ○蛋白質のユーザーと協力して、高品位蛋白質の結晶育成の分野で、微小重力環境の産業利用プロセスを構築。 |
○蛋白質の構造解析・機能解析のための蛋白質結晶育成の分野を、宇宙環境利用における応用利用の代表的分野として確立。 ○応用利用への早期のスピンオフの例示。 ○国内企業・研究機関と協力して成果を創出。 (欧米との競争) |
生体の 重力応答機構の研究 |
○環境情報の一つである重力に着目し、重力からの 信号受容体分子と重力情報を生体信号に変換する機構、生体信号に変換された重力情報が特定遺伝子を発現させるまでの伝達経路を解明。 ○特に長期宇宙滞在を睨み、骨・筋・神経等の顕著な機能的・形態的変化が観察されている組織を中心に研究。 (生命現象の解明には、生物が生きるために必要とする環境情報の検出と、そのシグナル伝達機構の総合的な解明が不可欠。) |
○「生化学情報」に起因するシグナル伝達機構に相対して、(重力に代表される)「機械的刺激」に起因するシグナル伝達機構を解明。(機械的刺激ゼロの状態維持の実現が地上では困難。) ○ISS利用による重力応答メカニズムの解明によって、従来の生化学情報に対する生物応答との統合的な理解が進展。 |
宇宙医学の実践的研究 | ○長期宇宙滞在における人体の適応の理解と対策法 の確立。 ○軌道の生体情報モニターによる遠隔治療法の確立。 ○長期宇宙滞在における宇宙飛行士の精神心理の課 題をヒューマンファクターの視点から体系的に検討。 ○宇宙環境におけるストレス応答メカニズムの解明。 |
○宇宙飛行士の健康管理・臨床対策の確立への貢献。 21世紀型医療(予防医学・健康維持)の実現 ○遠隔医療法の実現 ○様々な人間集団・労働環境における危機回避、ストレス対処、パフォーマンス向上への応用 。 ○進化における重力の役割、ストレスに対する生理メカニズムなどの生命科学知識の拡大に貢献。 |
宇宙科学研究 (全天X線観測) |
○ISSの軌道周回(90分周期)上で、全天のX線天体を今までにない高感度で体系的に観測し、その短期的/長期的変動を明らかにする。 |
○超新星、銀河核、ブラックホールなどのX線天体の動的変動を系統的観測することにより、X線天体の謎を解明に貢献。 ○高精度の全天X線観測を行い世界に先駆けてX線背景放射のゆらぎを観測し宇宙構造や宇宙創成の謎を解明。 ○謎の現象であるγ線バーストなどの観測のため、突発的な現象の発見とその変化の観測を行うとともに、全世界の宇宙望遠鏡や天文台に通報。 ○国際協力の観点からも、早期に観測開始することが重要。 |
地球観測/科学 (サブミリ波リム放射サウンダ) |
○オゾン層破壊及び、地球温暖化の原因となる成層圏大気中の微量気体の3次元グローバル観測(場所・時間的制約の無い、多種類の微量気体の同時観測)
○この観測を可能とする 「サブミリ波観測」、「超伝導を利用した高感度受信技術」、「4K級機械式極低温冷凍技術」などの宇宙における新しい諸技術の創出を目指す(超高感度・高分解能を持つという特徴を持つ優れたセンサーの開発) |
○成層圏大気中の微量気体の3次元グローバル観測により、オゾン層破壊、地球温暖化のプロセスの解明とその対策立案に貢献。 ○微量気体(ClOx、NOx、Hox、BrOx)の成分観測はミリ波・サブミリ波帯が唯一の観測手段。特に地上からの観測が困難なサブミリ波帯の宇宙からの観測は世界に先駆け。 ○オゾン層解明への貢献には、早期観測開始は必至。 ○超伝導超高感度受信機、機械式極低温冷凍機(4K)等は、世界に先駆ける最先端技術。通信・材料など広範囲な分野への応用が期待されるので早期軌道上実証が重要。 |