プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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「こだま」の状況について

平成14年9月18日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

「こだま」(DRTS)のリフトオフ以降の主要イベントを下記に示す。9月15日にクリティカルフェーズは終了し、静止化に向けての作業及び初期機能確認を進めているところである。

イベント日時近地点高度の推移
()内計画値
リフトオフ
地上設備のトラブルが生じたが、増田経由筑波からのコマンドに切り替えて予定通り打上げ。
(別紙1参照)
10日 17:20 0
DRTS分離 10日 17:49 449km
(450km)
太陽電池パドル展開・太陽捕捉確認
(別紙3参照)
10日 17:59 -
第1回アポジエンジン噴射 11日 9:21開始
(約60分)
7,397km
(7,791km)
第2回アポジエンジン噴射 12日 11:21開始
(約59分)
32,392km
(32,279km)
第3回アポジエンジン噴射 注:酸化剤枯渇による自動停止
(別紙2参照)
13日 10:26開始
(222秒噴射予定のところ 103秒で停止)
33,855km
(35,786km)
20Nスラスタによる軌道変換 14日 9:21開始
(約39分)
35,833km
(35,787km)
フィーダリンク用アンテナ、衛星間通信用アンテナ展開運用
(別紙3参照)
15日 8:40開始
  〜10:25終了
-
ノーマルモード移行(三軸確立、パドル太陽追尾開始、ホイールランアップ) 15日 14:15開始
  〜17:28終了
-
静止化 打ち上げ約1ヶ月後に完了 -
初期機能確認終了、定常運用へ移行 打ち上げ約4ヶ月後に完了 -

(参考)USERSの運用追跡管制支援状況
 NASDAの新GN(地上ネットワーク)の5局(沖縄、勝浦、マスパロマス、キルナ、パース)によるネットワーク支援を予定通りに実施している。




Y-0衛星パワーオン作業におけるテレメトリ・コマンド異常について

1.不具合発生状況

打上げ6時間前の衛星パワーオン作業において、以下の不具合が発生した。

(1)テレメトリ異常 衛星をパワーオンしたところテレメトリデータの大部分が「0」を示した。
(2)コマンド異常 その後、衛星を一旦オフし、再度パワーオンしたところ、Sバンド送受信機(STR)送信部オンのコマンドが実行されなかった。

2.推定原因
(1) テレメトリ異常
TT&C(テレメトリコマンド系)データの処理を行うセントラルユニット(CU)が通常とは異なるモードで起動していることが判明。
上記現象は、射場電源によるバッテリー充電と衛星パワーオンを同時に実施した時に発生する可能性が大であると推定している。
(2) コマンド異常
Sバンド送受信機(STR)受信部は、起動直後は周波数が安定しないため、地上からのアップリンク信号へのロックに時間がかかることがある。この時、地上からSTR送信部オンのコマンドを送信しても実行されない。
コマンド運用は衛星パワーオンから10秒後を目安に開始していたが、本現象発生時では、十分なタイミングに至らなかったものと推定している。

3.対策・処置
(1)、(2)に対して上記推定原因の対策として下記の処置を施すと同時に、射場にある衛星系地上装置の故障の可能性も考慮して、RF回線を増田局経由に切り替えて再立ち上げを実施。
(1) 射場電源によるバッテリー充電を一時中断して、衛星をパワーオン操作する。
(2) STR受信部のアップリンク信号へのロックを容易にする(アップリンク信号周波数を掃引)手順とし、衛星を正常に起動した。
上記処置による衛星パワーオン後の詳細なヘルスチェックにより衛星が正常であることが確認されたため、打上げ可能と判断した。なお、不具合発生時の起動異常は、(1)(2)ともCU及びSTRにストレスを与えないことも確認済である。

4.今後の予定
射場電源をメーカに持ち帰り、電圧立ち上がり速度の変化等を詳細に調査して原因を更に究明する。
上記の結果を含めFTA解析を実施し、今後の衛星の射場作業については必要により手順の見直し等の措置を講じていく。



「こだま」第3AEF時の酸化剤枯渇について

1.状況
トランスファ軌道からドリフト軌道への、第3回のアポジエンジン燃焼(AEF)による軌道変換において、早期に燃焼が停止された。

2.現象
テレメトリデータから、下記が判明している。
(1) #3AEF早期燃焼停止は、酸化剤が枯渇した為であること。
(2) #1〜#3でのAEFにおいて、アポジエンジン燃焼圧が約3%計画値より低かったこと。
(3) #1〜#3AEFによる姿勢外乱が予測に比べ小さく、その結果20NスラスタによるAEF時の姿勢制御により得られる増速量への寄与分が予測の約1/4であったこと。

3.対策処置
必要増速量不足分を20Nスラスタを用いて補い、所定の軌道に投入した。

4.ヒドラジン残推薬量
軌道計算結果および衛星テレメトリから、ドリフト軌道に投入した時点での残燃料を推定したところ、少なくとも7.6年分の運用を行える燃料があり、設計寿命の7年を上回っている。

5.今後の予定
今後、#3AEF早期燃焼停止に至った原因について更に究明を行う。



こだま画像

太陽電池パドル・南面(展開状態)




太陽電池パドル・北面(展開状態)




フィーダーリンク用アンテナ(展開状態)




衛星間通信用アンテナ(展開状態) 注:右上は地球センサタワーの陰