宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
輸送系にとって、推進系はもっとも重要な基幹技術 | |
推進系技術を維持・発展させることは、宇宙開発の自在性確保の観点から、欠くべからざる重要な戦略 | |
LE-5/LE-7に見る水素推進系技術は、世界でも最高性能の推進系として国内に技術を蓄積しつつあり、今後はさらなる信頼性向上に向けた取り組みが重要 | |
一方、近年の研究により、液化天然ガス(LNG)推進系は、水素推進系との組み合せなどにより、多様な輸送系での性能向上を果たす有望な候補 | |
推進系の戦略としても、水素推進系のみのピンポイントな取り組みではなく、LNG推進系等幅広く取り組むことが、今後の多様な宇宙活動に対応するために必要 | |
なお、世界で初の実用化を行うことにより、世界をリード可能 |
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LNG推進系の特徴を生かし、水素推進系技術と組み合わせることで、将来輸送系の実現に向けてさらなる多様性を確保可能
1. 高い推進薬密度、比較的高い比推力 | ||
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→ 大推力エンジンの実現が比較的容易 | → サブシステム数の削減 |
→ 機体の低コスト化、高信頼性化 | ||
→ ブースタ段への適用による機体の小型化 | → 機体の低コスト化 | |
2. 低コスト | ||
→ 推進薬単価が安い、取り扱い性が良い | → 推進系開発コスト、実機運用コストの低減 | |
3. 高い再使用性 | ||
→ すす発生が少なく、エンジン再使用が容易 | → 再使用型輸送系への適用が容易 | |
4. 宇宙空間での貯蔵性 | ||
→ 液体水素に較べて蒸発率が小さい | → 長期間運用する軌道間輸送機の高性能化に寄与 | |
5. 高い安全性 | ||
→ 漏洩・引火の危険性が低い | → 有人活動も含めた運用リスクの低減に寄与 |
LNGを適用した場合の利点(一例)
使い切りロケット液体ブースタ(LRB)へLOX/LNGを適用した場合の利点について検討した。
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全備重量 530トン 打上能力 低軌道20トン以上 液水ブースター適用型 |
全備重量 670トン 打上能力 低軌道25トン以上 LOX/LNG適用型 |
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◆ | LNG推進系の研究開発は、段階的なアプローチにより、必要性能やコスト等のトレードオフが可能となるよう水素と同等レベルまで技術を蓄積し、多様な将来輸送系のシステム選定に際して、推進系の最適解の選択を可能とすることを目指す。 |
◆ | 段階的なアプローチとしては、まず簡易なガス押し式システムにより、効率的にLNG推進系の基本特性取得を行い、その後将来の大型化や高性能化に向けたターボポンプ化や信頼性向上のための研究開発に取り組む。 |
◆ | 第一ステップとして以下の基盤技術の確立を目指し、簡易なガス押し式エンジンの開発を進める。 ○ LNG推進系の基本特性取得及び設計手法の確立 ○ 複合材の極低温推進薬タンクへの適合性評価 |
◆ | 効率的に飛行実証を実現するために、民間が開発を行うGXロケットの開発スケジュールと整合を取る。 |
◆ | NASDA単独での開発・実証に比べ効率的
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◆ | 新機関に期待されている産業化支援の施策として有効
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◆ | 国内での基礎研究成果を反映し、低コストで信頼性が高く実用に供せる推進系を目指すため、簡易なガス押し式のLNGエンジンの研究を実施
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★ | LNG推進系技術は、将来輸送系の研究開発の多様性を確保する上で必要な技術である |
★ | LNG推進系に関しては、基盤技術確立に向けた研究取り組みとして、ガス押し式エンジンの試作試験を進めており、現在までに成立性の目処を得ていることから開発移行できる状況である |
★ | 民間開発ロケット(GXロケット)と連携協力して、飛行実証を行うことで、効率的に必要なLNG推進系技術を修得する |
◆ | メタン (LNG)推進系について、研究レベルでの活動は各国(特にロシア)で古くから行われており、国内試験データ及び文献等による限り、実現に関して特に重大な技術課題は無いとの認識 | ||||
◆ | これまで、メタン(LNG)推進系が世界的にも実用化されなかった最大の理由としては、
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◆ | これに対して昨今、再使用型ロケットや軌道間輸送機、有人火星探査等の広範な輸送系の検討をきっかけとして、メタン(LNG)推進系の優位性/将来性が再認識されるようになり、米国・欧州での研究開発活動が盛んになりつつある。 |
◆ | ケロシンは、高密度で取扱い性に優れるが、性能が低く、上段エンジンには不向き |
◆ | 水素は、性能が高く、再使用性にも優れるが、低密度で高コスト |
◆ | メタン(LNG)は、ケロシンと水素を補完する燃料として注目すべき燃料 |