プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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民生部品・コンポーネント実証衛星(つばさ)の初期運用段階報告

平成14年2月27日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1.概 要

平成14年2月4日にH-IIA試験機2号機で打ち上げた民生部品・コンポーネント実証衛星(つばさ)の初期運用段階を終え定常運用段階に移行したので、つばさの機能確認結果並びに現状を報告する。

2.初期運用段階の運用結果

(1) クリティカルフェーズの運用
つばさは、平成14年2月4日12時32分(JST)にチリのサンチアゴ局(AGO局)の可視域でH-IIA2号機から分離され所定の軌道に投入された。投入直後の第1周回のAGO可視域でパドル展開を実施し、引き続き第2周回における太陽捕捉及び第4周回におけるマストの伸展等の一連の運用を順調に実施し、2月6日の第4周回の可視終了を持ってクリティカフェーズを終えた。主要イベント及びその結果を表1に記す。
(2) 初期の機能確認運用
平成14年2月6日の第5周回から2月13日にかけてミッション機器を含む全搭載機器の機能確認を実施し、実験開始に問題の無いことを確認した。2月12日の第18周からミッ ション機器全ての電源を投入した。バス機器及びミッション機器の機能確認結果を表2に示す。この間に取得した画像及び観測したミッションデータ例を図2ー1から図4に示す。
(3) 定常段階への移行
平成14年2月14日、定常段階移行前審査会を開催し初期運用結果を審査し、シャントの高温現象に関し検討を継続する必要はあるものの初期段階から定常段階に移行出来ると判断し2月15日から定常運用に移行した。
表1:クリティカルフェーズの主要イベント
周回イベント確認時刻(JST)結 果
1 ・ロケットからの分離 2月4日 12:32頃
・正常   ・太陽角: 6度 (40度以下)
・スピンレート: 5rpm (1.9〜6rpm)
・ニューテーション角: 約1度以下 (5度以下)
1 ・太陽電池パドル展開 2月4日 13:42頃
・正常: ・発生電力1056W等及びカメラで確認ラッチ信号一カ所確認できず(*1)
2 ・スピンアップ 2月5日 1:23頃 ・正常:5.3rpm(5±1rpm)
2 ・初期太陽捕捉 2月5日 5:35頃 ・正常:9.8度(10±2度)
4 ・磁力計マスト伸展 2月6日 1:52 ・正常:ラッチ信号及びカメラで確認
*1: 太陽電池パネル展開については、発生電力値等により展開を確認した。このとき6個のラッチ信号の内の一つが確認出来なかったが、その後のモニタカメラ画像で展開は完全であると確認。
表2-1:初期運用段階の機能確認結果(バス機器)
機能確認対象機器確認日(JST)確認結果
・通信データ処理系(C&DH) 2月4日〜
正常: テレメトリー、コマンド、測距機能及び周波数等全て仕様を満たしていることを確認。
・太陽電池パドル系(SAP) 2月4日〜
正常: 所定の電力(1.056W)の発生を確認。
シャントー1の温度がリミット値を越えた為対策を検討し ,2月20日に姿勢を約20度変更し発生電力を下げた結果、温度は正常値となった。詳細は継続して調査中。
姿勢変更は実験には影響しない。
・姿勢制御系(ACS) 2月4日〜
正常: スピン制御、姿勢制御、ニューテーション制御等を正常に実施できたことを確認。
・推進系(SPS) 2月4日〜 正常: ACSと連動し正常に制御を実施できた。
・電源系(EPS) 2月4日〜 正常: バッテリー充放電及び電力制御を確認
・熱制御系(TCS) 2月4日〜 正常: 所定の温度範囲への制御を確認。
・モニターカメラ 2月4日〜 正常: パドル及び伸展マストの展開を良好に撮影
表2-2:初期運用段階の機能確認結果(ミッション機器)
機能確認対象機器確認日(JST)確認結果
・民生半導体部品実験装置(CSD) 2月7日 正常:
・地上用太陽電池実験装置(TSC) 2月7日 正常 (図2-3に取得データ例を示す)
・CPV型バッテリー実験装置(CPV) 2月8〜11日 充電機能は正常であることを確認した。尚、初期段階は日照域にあった為放電機能は確認していない。3月中旬以降の食入り時に確認する。
・半導体データレコーダ実験装置
(SSR)
2月8〜9日 正常
・並列計算機システム実験装置(PCS) 2月11日 正常
・宇宙環境計測装置(SEDA) 2月10日 正常 (図2-4に取得データ例を示す)

太陽電池パドルー1 太陽電池パドルー2
図2-1: 太陽電池板展開状況





図2-2:磁力計マスト伸展状況





図2ー3:太陽電池特性変化データの例(TSCで取得)





図2ー4:メモリー用半導体デバイス誤動作データの例(SEDAで取得)



3.まとめ

つばさは2月4日に打ち上げられた後、当初計画通り10日間の初期段階期間中に、パドル等クリティカル機器の展開及び姿勢制御等の実施並びに全ての衛星搭載機器のチェックアウトを行い、実験実施に問題の無いことを確認し定常段階に移行することが出来た。この間、パドルラッチ信号の異常及び太陽電池パドルのシャント温度異常等が発生したもののいずれも衛星運用及び実験実施に影響するものではない。
つばさは2月15日以降ミッションデータの取得を順調に実施しており今後の実験の成果が十分に期待できるものである。