プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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「みどりII」(ADEOS-II)の運用状況について

平成14年12月18日

宇宙開発事業

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

12月14日午前10時31分に種子島宇宙センターからH-IIA4号機により打ち上げられた環境観測技術衛星「みどりII」(ADEOS-II)の運用状況は以下のとおり。

1.衛星の現状

衛星は計画通りの軌道に投入され、衛星状態は正常である。

投入軌道: 遠地点高度:
近地点高度:
軌道傾斜角:
周期:
約820km
約803km
約98.7度(極軌道)
約101分
パドル発生電力: 約6200W (計画値: 5700W以上)
姿勢制御モード: 定常制御モード・・・ リアクションホイールにより 姿勢制御をするモード

なお、打上げ直後から見られた特異事象の検討のため、定常制御モードへの移行を2日延期し、17日午前11時8分定常制御モードへ移行した。

2.現在までに確認された主な特異事象と今後の対処方針

(1)ロール軸まわり姿勢制御スラスタ噴射頻度の超過
  • ロール軸(衛星の進行方向)まわりの姿勢制御を行う1N(ニュートン)スラスタの噴射頻度が予測値の1.5〜3倍となっていた。
  • リアクションホイールを用いた定常制御モードの試行運用を16日22時35分頃から翌17日5時30分頃まで実施し、取得したデータの評価を行った結果、定常制御モードへ移行しても問題のないことを確認した。
  • 一旦スラスタ制御モードに戻して軌道間通信系(IOCS)アンテナ展開を実施し、その後定常制御モードに移行した。
  • なお、噴射回数が多くなった要因については引き続き検討する。
(2)太陽電池パドル張力モニタ値の規格外れ
  • 太陽電池パドルの張力をモニタするデータの一部が規格を外れた。(規格値5kgf〜8kgfに対して、日陰時1kgf、日照時8kgf〜10kgf)
  • 張力機構のストローク値が正常であること、太陽電池パドルの温度が正常であること、太陽追尾が正常に行われていること、発生電力が正常であることから判断して、太陽電池パドル本体の問題では無く、張力センサの温度特性である可能性が高いと考えられる。
  • データの監視を継続するとともに、同様のセンサを用いて地上試験を実施することを検討中である。
(3)高性能マイクロ波放射計(AMSR)の信号異常
  • AMSRの信号処理時刻タイミングに異常があったことを示す信号が見られたが、コマンドを送信しリセットしたところ正常に復帰した。

3.今後の予定

12月23日〜1月2日頃 観測軌道投入のための軌道制御
1月2日〜1月8日頃 AMSR回転増速
1月9日頃 GLI冷却機電源オン
1月下旬〜2月上旬 センサ初期観測画像の公開
4月中旬 定常運用/校正・検証期間へ移行



添付


みどりII(ADEOS-II) 現在までの運用経過

日時(JST)運用経過備考
12月14日10時31分 打上げ  
10時47分 ADEOS-II分離  
11時36分 太陽電池パドル展開完了確認  
12時14分 パドル張力をモニタするデータの一部に規格を外れる事象を確認  
12時24分 高性能マイクロ波放射計(AMSR)の信号処理の時刻タイミングに異常があったことを示す信号を確認  
18時頃 画像モニタ装置(VMS)の再生を行い、パドル全展開時の画像データを受信  
一周回分のテレメトリデータを取得、評価したところ、ロール軸まわりの姿勢制御を行うスラスタの動作量が予測値を超えていることを確認  
22時半頃 海上風観測装置(SeaWinds)アンテナの保持部を解除したことを確認  
23時33分 衛星間通信システム(IOCS)のアンテナの保持部4個のうち3個を解除  
12月15日10時10分 スラスタB系遮断弁閉での運用を実施しスラスタ動作量モニタ スラスタB系推薬弁からのリーク確認のため
16時45分 AMSR信号処理の異常事象に対しリセットコマンドを送信し、正常復帰  
19時50分 スラスタをA系からB系へ切り替えて運用を実施し、スラスタ動作量モニタ  
12月16日22時35分 定常制御モードへの試験移行を実施。(翌17日5時30分まで約4周回分実施。)  
12月17日5時30分 スラスタモードへ再移行。  
9時25分 軌道間通信アンテナの未解除のアンテナ保持部を解放し、展開完了確認。  
11時8分 定常制御モードへ移行