プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

通信衛星を利用した日本科学未来館の遠隔学習の実施について

平成14年1月16日

宇宙開発事業団
科学技術振興事業団

 文部科学省メディア教育開発センター(NIME)と宇宙開発事業団(NASDA)は、共同実験として、科学技術振興事業団 日本科学未来館と、宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校を通信衛星で結んだ遠隔学習の実験を、1月30日(水)に実施します。
 本実験は通信衛星の広域性や、NIMEが取り組んでいる高臨場感技術等を活かし、屋外の学習環境(遺跡や博物館等)と教室を連携させる「フィールド教育」の実現を目指したもので、NASDAが推進中のi-Spaceパイロット実験の一環として実施するものです。
 今回は、五ヶ瀬中等教育学校の教室側から日本科学未来館を見学体験する内容で、本パイロット実験の実施結果はNIMEのスペース・コラボレーション・システム(SCS)の高度化、並びにNASDAが研究開発を進めている通信・放送分野の技術試験衛星等の利用技術開発に活かす予定です。

実施概要
(1) 日   時 平成14年1月30日(水)  13:35〜15:25(予定)
(2) 実施場所 日本科学未来館 (東京都江東区青海)
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校(宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町)
(3) 実験概要 別紙1




(実施概要)


(背景)

 文部科学省メディア教育開発センター(所長 坂元昂)は、メディアを用いた教育改善のシステム、方法等に関する研究を行っており、衛星利用については大学間教育交流ネットワークである、スペース・コラボレーション・システム(SCS)の開発運用を行うほか、実際の「もの」や、社会・現実の状況を教室に持ち込むことによるフィールド教育についてのシステム的、運用的検討等を行っています。
 一方、宇宙開発事業団(理事長 山之内秀一郎)は、超高速インターネット社会実現に向けた宇宙インフラ研究開発の一環である「i-Space利用実験計画」を開始しています。i-Space利用実験計画は、現在開発中の技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)や、新たに研究開発に着手した超高速インターネット衛星(WINDS)等を用いて、超高速のマルチキャストサービスや、医療・教育・防災などの幅広いアプリケーション分野における衛星利用のための技術開発や、利用実験を行うものです。それら利用実験の前段階として、商用衛星を利用して実施するパイロット実験は、教育の分野においては平成12年度後半から着手し、平成13年度も継続して実施しています。

(実施概要)

 今回実施する科学技術振興事業団(理事長 沖村 憲樹) 日本科学未来館(館長 毛利 衛)の遠隔学習は、上記ETS-VIIIの教育利用に必要となる要素技術や、フィールド教育の教育的効果を事前実証することを狙いとして実施するパイロット的な実験で、「フィールド教育パイロット実験(*1)」の年間計画のひとつです。これまでにも、従来の遠隔教育システムでは実施が困難な山間部、河川敷、天文台、船上、等、様々なフィールド環境の下で実験を実施し、実験システム及び教育効果の両面から実験評価を行っています。今回は、教室に居ながらにして如何に日本科学未来館をバーチャル的に見学体感が出来るかについて実験評価するものです。
 実験システムの評価ポイントとしては、全周カメラ利用による臨場感の演出効果、フィールド側機器の設置容易性・操作性、マルチ画面の伝送効率化、等があります。なお、教育内容には、毛利館長の参加により、高校生からの質問に答えるなどの企画も予定しています。
 本実験の実施に際しては、中高一貫校である宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校(校長 隈元正行)の協力を、教育観点の評価に関しては、宮崎大学教育文化学部(学部長 岩本俊孝)の協力を得ています。

(*1: フィールド教育パイロット実験の概要を参考として添付)


フィールド教育パイロット実験の概要

 通信衛星はその広域カバレッジ性から、地上回線が届かない海上、山間部、島嶼、へき地、海外、被災地等との通信が可能であり、また大容量のデータを同時に配信出来る等の特徴を有しています。そのため、教育分野においてはフィールド(屋外)と教室を結んだ遠隔教育や、高精細な映像や広帯域音などによる、美術品映像や音楽などの配信による「ホンモノの美」といった、教育の質の深さを実現させるための遠隔教育を実現させることが可能になります。
 現在実施中の教育分野のパイロット実験は、衛星通信の広域カバレッジ性や、高臨場感技術等を活かして、屋外の学習環境(例えば野外や遺跡、海外など)を教室に持ち込む「フィールド教育」の実現を目指した実験で、メディア教育開発センターと宇宙開発事業団との共同研究として、平成12年度後半から実施しています。フィールド教育は、「総合的な学習の時間」等に活用されるものと期待しています。また、本実験の成果は、同センターのスペース・コラボレーション・システム(SCS)の高度化、並びに事業団が平成16年度打ち上げ予定のETS-VIIIの利用実験に反映させる予定です。(本フィールド教育実験の特徴を下図に示します。)

 平成12年度から13年度前半におきましては、実験協力校である宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校に実験機器を設置し、そこを拠点校として、以下のフィールド教育実験を実施しました。

課外授業として実施:

  • 宇宙開発事業団・筑波宇宙センター展示館のリモート見学
  • 宮崎県日向市立富島中学校(校長 田口廣昭)の協力で、宮崎県北部・潮見川からの汽水域生態レポート
  • 熊本県南阿蘇ルナ天文台(館長 宮本孝志)からの天文教室
  • 熊本県阿蘇火山博物館(館長 池辺伸一郎)からの火山教室

授業の一環として実施:

  • 宮崎県五ヶ瀬町の二上山から、「生物1B」授業
  • 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)の協力で、茨城県大洗町から、有人潜水調査船「しんかい6500」をテーマにした海洋科学授業

 平成13年度後半におきましても、引き続き同校を拠点校として、以下を実施することを予定(一部実施)しており、14年度前半の計画についても現在調整中です。

課外授業として実施:

  • 国際宇宙ステーション訓練設備のリモート見学

授業の一環として実施:

  • 科学技術振興事業団 日本科学未来館の遠隔学習
  • 奈良女子大学文学部附属中等教育学校との研究レポート発表交換会(調整中)