プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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信頼性向上のための部品プログラムの進め方について

平成14年6月12日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

部品プログラムの必要性

  • 我が国が宇宙開発利用を自在に展開するための能力を保持し続けるためには、宇宙機器を構成する高信頼性の電子部品や材料などの基盤的な技術について戦略的な取組みが必要。
  • 基幹システムの徹底した信頼性向上と自律性を確保するための信頼性向上策の一環として基幹部品の開発・利用、国産部品の利用促進、部品評価技術の向上を「部品プログラム」として体系的に実施。

宇宙用部品にかかる現状

  • H-IIロケット開発では、純国産開発を目指し、NASDA認定部品を中心に活用。
  • H-IIAロケットでは、低コストを実現するために、輸入部品を大幅に採用。
  • 衛星については、ETS-VI開発では、純国産開発を目指し、多数の高信頼性宇宙用部品の認定を行ったが、その後、徐々に輸入部品が増加。
  • 輸入部品の増加にともない以下の状況が生じつつある。
    • 国内の高信頼性宇宙用部品の認定辞退の増加。
    • 輸入部品の製造中止などによる開発への影響拡大。
    • 輸入部品の不具合情報の入手制約による品質保証への影響

現行のプロジェクトへの影響

  • 事業団が現在開発中のプロジェクトでは、部品の入手性については、必要な部品入手の目処が得られており、当面影響はない。
  • H-IIAロケットについても当面見通しが得られている。
  • 今後、新たな宇宙機器の設計・製造にあたって、大多数を輸入部品に依存した場合、自律性の確保、品質の確保に支障が生ずる。

事業団による国産部品開発の必要性

  • 国内の宇宙用部品開発能力の低下は、宇宙開発の国内基盤の弱体化に直結。
    • 高機能部品を用いた先端宇宙開発利用の弱体化
    • 輸入部品購入に際する部品評価能力の低下
    • 部品選択の自在性の低下
  • 宇宙用高信頼性部品は、耐放射線等の特殊な要求に加え、少量生産であることから、最大ユーザである公的機関が高信頼性部品の安定的確保および国内技術の確保を積極的に進めることが必要。

部品プログラムの実施方針

  • 我が国の宇宙活動の信頼性向上、自在性確保のために不可欠な部品を検討・選定し、国産開発を実施。
    • 企業との連携による部品戦略の設定と体制づくり
    • 一定規模の継続的な国産部品開発を実施
  • 民生用部品技術を宇宙利用するための評価、研究開発を進め、国産宇宙用部品を拡大
  • 国産部品の積極的利用促進
    • 部品認定制度の改善
    • 部品情報の集約と共有(部品情報システム)
  • 部品に関する国際協力の促進

具体的方策(案)


  • 重要な部品については国産化を進める。

  • 国家レベルの部品戦略策定のため、宇宙開発委員会や関係府省のご指導も頂きつつ、宇宙機関及び産業界メンバー等により構成される委員会を設け重要部品の選定等、基本方針を検討する。

  • 部品供給者と購買者が双方受け入れ可能な現実的な部品の開発・供給計画の検討を進める。

  • 宇宙用部品の専門製造企業を育成する。

  • 国際的優位性を持った日本の民生部品技術を宇宙利用するための評価、研究開発を進め、国産宇宙部品を拡大(以下具体例)

  • マイクロプロセッサ

  • 特定用途集積回路   等

  • 部品の評価について継続的な研究を行い、品質の向上を目指す。

  • MDS等の成果を利用し、民生部品の宇宙転用のための基準作りの促進

  • 認定部品制度の改善

  • 認定継続に係る企業の負担軽減

  • 企業の提案する部品を部品登録することを推奨

  • 部品情報システムの構築・利用

  • 部品評価、部品開発、放射線試験などの技術情報をデータベース化し、部品メーカ、部品ユーザ等がタイムリーに利用できる仕組みをつくる。  

  • 海外宇宙機関との連携を推進

  • NASA、ESA、CNES等と部品に関する技術情報の交換

  • 各国の得意な分野で部品開発の相互補完を提案

    まとめ

    • NASDA認定部品の認定辞退が増加していることは事実。
    • 現在開発中のプロジェクトについては前倒し生産により当面の影響はない。
    • 宇宙活動における信頼性向上、自律性確保のためには、部品に関して継続的な研究開発を行うと共に、部品の利用促進に目を向けた部品プログラムの見直しを行う。