プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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部品プログラムの推進における「つばさ」の役割について

平成14年8月28日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

部品プログラムの実施方針

我が国の宇宙活動の信頼性向上、自在性確保のために不可欠な部品を検討・選定し、国産開発を実施。
企業との連携による部品戦略の設定と体制づくり
一定規模の継続的な国産部品開発を実施
民生用部品技術を宇宙利用するための評価、研究開発を進め、国産宇宙用部品を拡大
国産部品の積極的利用促進
部品認定制度の改善
部品情報の集約と共有(部品情報システム)
部品に関する国際協力の促進



部品基盤技術の強化

★宇宙開発の自律性、自在性の確保が必要
★国内の部品認定辞退の増加
★製造中止などによる開発への影響拡大 



部品基盤技術の強化へ「つばさ」の成果が反映される事項

宇宙放射線性に弱い民生部品を使いこなす技術を実証
1. 放射線の予測精度を向上させ、放射線耐性の閾値を下げる →→→ 民生部品の実力を確認
(民生LSI、太陽電池)
2. 放射線の蓄積効果に対して、シールド保護を行い耐性を高める
(シールド効果の確認)
→→→ 宇宙環境計測
3. ある程度の誤動作を前提にシステムで救済する設計を行う
(1) 符号誤り訂正技術を活用する →→→ 半導体レコーダ
(2) 異常発生に強いシステムをつくる →→→ 並列計算機システム
無重力環境下における動作確認
1. 無重力環境下における大型容器の気液分離実験 →→→ CPV型バッテリー



(1) 半導体に及ぼす放射線耐性の評価技術の精度向上

同一ロット部品について、地上における宇宙放射線耐性評価試験と軌道上実験の結果を比較照合し、地上における評価技術の精度向上を目指す  (例:メモリ素子、太陽電池などの半導体素子の特性値評価実験、放射線シールド効果の実験)
地上評価技術の精度向上に伴い、放射線耐性の設計余裕度を正確に把握し、宇宙機設計に反映する
部品の放射線適用基準等の見直しを行い、放射線耐性要求の閾値を下げる(重要度によってレベル分けが必要)
民生部品の優れた技術を宇宙に適用する手法を開拓し、部品供給の選択肢を広げる




地上実験と軌道上実験との関係


(用語説明) SEE (Single Event Effect ) 単一の高エネルギー粒子の効果により、下記のSEE、SEL等の現象の総称。
SEU (Single Event Upset ) 単一の高エネルギー粒子の効果により、回路素子が誤動作することをいう。
SEL (Single Event Latch up ) 単一の高エネルギー粒子の効果により、永久的損傷に至ることをいう。
TD (Total Dose ) 素子又は材料が特定の時点まで受けた放射線吸収線量の総和をいう。



(2) 民生部品の弱点をシステムで救済する方策を実証

放射線耐性を充分に満たさない民生部品も、場所を特定することにより、民生部品の高機能な部分を活用することが可能
システムを特定し、民生部品の優れた技術を活用できる機器の有効性を軌道上実証する
民生半導体メモリー素子は宇宙用に比べ3世代近く進んでいるため、信号の誤り訂正技術と併用し、記憶容量、重量等を大幅に向上することができる  (例:半導体レコーダ)
民生高速プロセッサは宇宙用に比べ1桁高い動作特性(周波数)を持つため、多数決原理などと併用し、民生高速プロセッサの高機能な部分を活用(制御部分除くデータ処理等)する   (例:並列計算機システム)



(3) 機器設計技術の軌道上実証

将来性のある技術であるが、地上にて設計検証が困難な技術の軌道上実証
構造の簡素化に伴い、構造重量の大幅縮小が期待できるため、宇宙環境下における実データを取得し次世代に反映できる技術を構築する  (例:共通圧力容器バッテリーの気液分離特性試験)
その他、実証実験の成果が活用され、高度な技術蓄積に挑戦することの重要性をアピールする