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アジア連携による安全安心なアジア社会の実現を〜JAXAの災害・環境監視、人材育成プロジェクト〜
衛星技術者を育てるSTAR計画に参加して インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN) リモートセンシング技術開発部 研究員 ラフマット・アリフ(Rahmat Arief)
Q. これまで自国ではどのような仕事をなさっていますか?

インドネシア国立宇宙研究所(LAPAN)にて、リモートセンシング観測を行うための衛星機器、衛星データの解析や供給、衛星データを受信する地上局など、リモートセンシング技術の開発にかかわる研究を行っています。

Q. なぜSTAR計画に参加しようと思われたのでしょうか?

LAPANとJAXAは、以前から、APRSAF(アジア太平洋地域宇宙機関会議)を通じて良い協力関係を持っています。私は、2006年にジャカルタで開催された第13回APRSAFに初めて参加しました。そして、2008年にLAPAN関係者がバンコクで開催されたSTAR計画の第1回技術ワークショップに参加し、この計画について知りました。STAR計画は、アジア太平洋地域における衛星開発プログラムだと紹介され、それ以来、私はその計画に興味を持っていました。そんなある日、私は上司から、リモートセンシング技術を宇宙先進国の専門家たちから学ぶために、STAR計画に参加するよう言われたのです。こうして私はSTAR計画に参加することになりました。
STAR計画に参加し、JAXAやアジアのほかの宇宙機関の方と協力する機会を与えられたことを、とても光栄に思います。私は初めて日本に来ましたが、JAXAの方たちは技術面においても生活面においても、とても親切に教えてくれます。

Q. 自国ではどのような宇宙開発が進められていますか?

インドネシアの地球観測衛星LAPAN-TUBSAT(提供:LAPAN)
インドネシアの地球観測衛星LAPAN-TUBSAT(提供:LAPAN)

JAXAにて小型衛星のシステムを検討中
JAXAにて小型衛星のシステムを検討中
インドネシアでは小型の衛星とロケットの開発が進められています。2007年1月には、インドネシアの初めての地球観測衛星「LAPAN-TUBSAT」が、インドのロケットで打ち上げられました。この衛星はドイツのベルリン工科大学との共同プロジェクトで、彼らから衛星の技術提供を受けました。「LAPAN-TUBSAT」は、縦横45cm、高さ27cmほどの超小型衛星で、高解像度カメラ1台と低解像度カメラ1台の計2台を搭載しており、現在も運用されています。
そして今、この「LAPAN-TUBSAT」をベースにした後継機、「LAPAN-A2」の開発が行われています。LAPAN-A2では搭載カメラの解像度を上げ、衛星の姿勢制御をより安定性のあるものにしたいと考えています。また、インドネシアアマチュア無線連盟との共同でアマチュア衛星の開発も進められています。
一方、ロケットは1960年代から開発が行われています。現在開発中の「RX-420」は、直径42cmほどの小型の固体燃料ロケットで、2014年に低軌道に自国の地球観測衛星を打ち上げる予定です。そのほか、高層大気観測用の小型観測ロケットの打ち上げも行っています。

Q. STAR計画によって取得する衛星技術を、将来自国に戻ってどのように活用したいですか?

STAR計画には2つの目的があります。300kgから500kgの地球観測衛星(EO-STAR)のシステムを検討することと、50kgから100kgの技術実験衛星(Micro-STAR)の開発をすることです。これを約3年間で行います。
インドネシアは大小の島々から成り、東西に5,000km以上、南北に1,760km広がっています。広大な土地や水、自然の鉱物資源がとても豊富な国です。しかし、昔から水害が多く、また、赤道近くで環太平洋火山帯に位置しているため、地震による災害が多く発生しています。私は、STAR計画で学ぶEO-STARの技術を使って、将来、広大なインドネシアの国土全体を観測し、資源探査や災害被害の軽減などに貢献したいと思います。
また、Micro-STARを開発する経験を、インドネシアの次の衛星開発に役立てたいと思います。現在インドネシアでは超小型衛星しか作っていませんが、STAR計画によって得る技術を活かし、より大きな衛星を作れるようになりたいと思います。そして、自分たちが開発する地球観測衛星が、自国だけでなく、アジア全体に役立てればと思います。

Q. アジアの宇宙機関が連携を強めることについてどう思われますか?また、連携強化によってどのような効果を期待しますか?

さまざまな国が協力し合うことにより、地球観測技術に関するお互いの情報を交換、共有できます。また、共同で観測することもできます。このような連携がアジアの宇宙機関で進むと、アジアに住む私たちの生活にも良い影響を与えると思います。地球観測は、自然災害の被害を減らすだけでなく、農林業や土地利用、漁業、気象、大気汚染などさまざまな分野で活用することができます。ですから、アジアの宇宙機関の連携が強化されることにより、アジアの人々の暮らしが豊かになることを期待しています。
また、リモートセンシングデータの共有や提供、災害監視と被害の軽減、衛星の共同開発など、さまざまなプロジェクトでアジアの宇宙機関と連携をとることにより、インドネシアの衛星開発など宇宙技術を発展させていきたいと思います。

Q. 今後JAXAに期待することは何でしょうか?

JAXAの衛星技術がこれからも発展し、その技術が、私たちアジアの宇宙機関にも提供されることを望んでいます。そして、私たちも技術向上に努めたいと思います。
ラフマット・アリフ(Rahmat Arief)

インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN) リモートセンシング技術開発部 研究員

2002年、ドイツ・ニュルンベルクにあるGeorg-Simon-Ohm応用科学大学の電子工学科を卒業後、2005年にカッセル大学にて工学修士号を取得。1993年よりインドネシア国立航空研究所に勤務し、現在は、リモートセンシング衛星や地上局のデータ受信システムの研究開発を行う。
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