若田宇宙飛行士の帰還後リハビリテーションへの立会い
私はJAXAで宇宙医学研究に携わる前は、ある国立大学で整形外科の講師をしていましたので、骨や筋肉の研究に興味があります。宇宙に長期滞在をすると、骨量が減るだけでなく、筋肉もやせて細くなります。宇宙飛行士は、飛行前に毎日2時間運動してミッションに必要な体力をつけます。飛行中も毎日約2時間の運動を実施し、体力を維持します。そして、帰還後には45日間かけて体力回復のためのリハビリを行います。私はこれまでNASAの運動担当者と連絡をとりながら、日本人宇宙飛行士の運動プログラムの作成や帰還後リハビリテーションへの立会いを行ってきました。より短時間で、より効果的な運動プログラムに関する研究を今後も推進したいと思います。
また、新たな運動器具の開発にも携わっていきたいと思います。ISSで使われている運動器具は、アメリカとロシアが担当してきました。HTV(宇宙ステーション補給機)という新しい日本の輸送手段ができましたので、日本独自の技術を生かした小型で高機能の運動器具が準備できれば、打ち上げて検証するチャンスはあると思います。
長期宇宙滞在では、「衣食住」に関することもとても重要です。JAXAは、国内の研究者や企業と共同で、消臭抗菌機能のある宇宙船内服や、約30種類の宇宙日本食を開発しました。これらは、日本人宇宙飛行士のみならず、海外の宇宙飛行士の評判も良いそうです。今後は、骨や筋肉の健康維持に役立つ機能性宇宙食を開発したり、日本の優れた技術による生活用品が国際宇宙ステーションに搭載され、宇宙での生活がより一層充実することが期待されます。
JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部有人宇宙技術部 宇宙医学生物学研究室 研究領域リーダ・主幹研究員
これまで日本人宇宙飛行士の飛行前後の医学データ取得や、長期ベッドレストによる骨量減少研究などの宇宙医学研究に従事。若田宇宙飛行士や野口宇宙飛行士の宇宙長期滞在フライトでは、飛行前中後の運動プログラムを担当し、薬剤による骨量減少予防研究や小型心電計を活用した遠隔医療研究に参加する。