「イカロス」の膜面の展開手順
アメリカの「ライトセイル1号」(提供:米国惑星協会)
現在は、実際に打ち上げる機体を使って振動試験や熱真空試験などを行い、機器が正常に動作するかを確認しています。2010年の打ち上げ前まで、このような総合試験が続きます。
また特に難しかったのは、セイルを展開する技術の開発です。また、「イカロス」のセイル膜には支柱がなく、打ち上げ時には折り畳んで、円柱形の本体にグルグルと巻きつけて収納します。そして、膜を展開するときには、本体を常に回転させてスピンをかけ、その遠心力を使います。広げた状態を維持するのも遠心力なので、本体はずっと回転しています。このスピン型展開方式は、セイル膜に支柱がない分、重量が軽くてすみます。スピン型はセイルのサイズが大きくなるほど有利です。「イカロス」のセイルはソーラーセイルとしてはまだまだ小さく、近い将来、直径50mや100mクラスのセイルが開発されると考えています。しかし、薄い膜をスピンしながら広げるのはとても難しいです。実際に膜を使って、どのように膜を折り畳めば開きやすいかと試行錯誤を重ねました。地上でのさまざまな実験のほか、観測ロケットに乗せて打ち上げたり、大気球で上空に持っていって、真空に近い状態で膜を広げたこともあります。数多くの失敗も経験し、より手堅く開く方法を追求して「イカロス」の形態に至りました。きっと成功すると信じています。
米国惑星協会が2001年と2005年に「コスモス1」というソーラーセイル試作機を打ち上げましたが、ロケットのトラブルで失敗しました。米国惑星協会は新たに2010年末に「ライトセイル1号」を地球周回軌道に打ち上げて、ソーラーセイルの実証を行う予定です。