
宇宙航空研究開発機構
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
宇宙への往復を容易にするための研究の一環として、繰り返し飛行が可能なロケット飛翔体のシステム構築のための技術の確立と離着陸飛行のための機能の確認を目指して、完全な再使用が可能な宇宙輸送システムの基礎実験としてロケットエンジンを用いた離着陸、安全かつ容易に繰り返し飛行を行うためのシステム設計法などに関する工学技術の蓄積を目的とする。
実験は10月14日から10月31日まで能代多目的実験場において実施され、予定した3回の離着陸飛行を行った。各実験において機体の各サブシステムの機能や飛行軌道および着陸挙動などは計画通りであった。繰り返し飛行の実験を通じて、軽量化による性能向上に資するための複合材を用いた液体水素タンク、耐久性向上設計を施したエンジン、繰り返し運用と故障許容設計のためのシステム構築手法、などの飛行による実証とデータの蓄積が図られた。従来の使い捨て型ロケットと異なる再使用型のロケットシステムを構築する上での課題について多くの知見を得ることができ、所期の目的を達することができた。
 液水エンジンの再使用性/耐久性の定量化
 地上設備の最小化/運用経験の蓄積/安全の確保
 垂直着陸の航法誘導制御とダイナミクス
 飛行中断/セーフアボート機能
 空力特性/構造設計/環境評価/耐熱などの経験蓄積

| 重量: | 約 500 kg | 
| 全高: | 約 3.5 m | 
| 液体水素: | 160 リットル | 
| 液体酸素: | 50 リットル | 
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| RVT#1 (1999) 液水ロケットの推力制御 離着陸機能 再使用飛行運用 | RVT#2 (2001) 耐久性設計エンジン GPSによる航法 エアロシェル 飛行範囲の拡大 | RVT#3 (2003) 液水タンクの複合材化 エンジン噴射器高機能化 再使用運用の洗練 飛行範囲の拡大 | 
|  信頼度定量化エンジン設計検証技術 |  統合推進系システム研究 | 
|  水素酸素RCSの基礎研究 |  空力/飛行力学研究 | 
|  極低温燃料タンク試作研究 | |
|  飛行中の再使用ロケット実験機(10月31日) | |
| 日時 | 高度 | 燃焼時間 | 飛行時間 | 結果 | |
|---|---|---|---|---|---|
| RVT-9-1 | 10月21日11時52分 | - | 6 秒 | - | 正常 | 
| RVT-9-2 | 10月25日09時58分 | 10 m | 20 秒 | 17 秒 | 正常 | 
| RVT-9-3 | 10月27日08時52分 | 30 m | 21 秒 | 18 秒 | 正常 | 
| RVT-9-4 | 10月31日14時51分 | 42 m | 20 秒 | 17 秒 | 正常 | 
 故障検知、故障許容設計を採用したシステムの飛行実証
 短期間での繰り返し飛行運用の洗練
 熱的/機械的離着陸環境の検証
 離着陸航法誘導制御方法の洗練と検証
 充填、加圧、エンジン燃焼、飛行後安全化などの運用実績の蓄積
 大変形許容設計とシール方法の検証
 光ファイバを用いた歪み計測技術の検証
 飛行中の水素漏洩検知
 電鋳製要素の採用による多数回使用の耐久性実証
 均一な燃焼と熱的機械的負荷の軽減の実証
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再使用飛行実験環境の積極的利用による新規要素技術実証の場の提供
|  | 第1次実験 (1999) 液水ロケットの繰り返し飛行 | 
|  | 第2次実験 (2001) 飛行範囲の拡大/飛行誘導の洗練 耐久性エンジン設計 | 
|  | 第3次実験 (2003) 複合材極低温タンク 電鋳製インジェクタ 飛行範囲の拡大 | 
 
 
弾道飛行による宇宙空間への繰り返し飛行能力
科学観測/マイクロG環境実験の高頻度実験機会の利用による再使用実験環境の提供と再使用のメリットの認知
再使用システム構築技術の洗練
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