別紙1
火星探査機「のぞみ」の火星周回軌道への投入断念について
「のぞみ」:今回の不具合に関連する履歴
1998年12月20日 地球離脱オペレーション → 十分な推進力が発生できない不具合が発生
原因: |
酸化剤タンク上流にあるバルブが開ききらなかった為(注1)十分な推力が発生出来ず結果として燃料を使いすぎた。問題となったバルブは米国の火星探査機マーズオブザーバーの失敗を受けて燃料、酸化剤の蒸気が上流に逆流しないように逆流防止弁の上流に安全の為に追加した物である。 |
対処: |
地球離脱オペレーション後の残燃料からは蒸気の逆流防止の為に上記バルブを閉じる必要が無い事が判明した為、21日の可視運用中に上記バルブを開としその後は操作しない事とした。 |
影響: |
当初の1999年10月中旬の火星周回軌道投入が不可能となり4年遅れの2003年12月末〜2004年1月初頭の火星周回軌道投入へと変更する事となった。(その後の軌道の最適化の結果2003年12月14日に火星に到着する事となった。) |
2002年4月26日 ビーコン状態*1で入感(今回の不具合)
原因: |
共通系電源(CI-PSU)の2次側の一部に短絡モードの不具合が発生。22日に太陽フレアに伴う高エネルギー粒子に晒された(「のぞみ」として過去最大の量)事に関連していると推定されている。 |
影響: |
該当電源がオン出来なくなった為にデータが送信できず、かつ熱制御回路が動作しない状況となった。(26日の時点では燃料が凍結していた事が4月末に判明。) |
対処: |
2002年5月3日 |
衛星の保温の為、観測機器を順次オン
熱解析の結果、放置姿勢で9月頃に推進系が自然解凍する可能性が判明 |
2002年5月15日 |
該当電源への連続オンコマンドによりビーコン喪失
- コマンド配信部ICへの電源の不完全な立ち上がりによる不正コマンドによりX帯送信機のリレーが誤動作しオフしたと考えられる(オン・オフの両コマンドが同時に発行される)
- 地上試験の結果 リレーにより挙動が異なる事が判明 → 当該電源への単発オンコマンドによるビーコン復帰の可能性
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対処(承前): |
2002年7月15日 |
7500回程度の試行後ビーコンが復活 |
2002年8月下旬 |
燃料が解凍する温度に到達
→ 以降姿勢を適切な範囲に保つ事で燃料が凍結しないように保持 |
2002年12月20日 |
1度目の地球スイングバイを実施 |
2003年6月19日 |
2度目の地球スイングバイを実施 |
2003年7月5日より |
CI-PSUの連続オンにより短絡個所を焼き切る運用を開始。
その過程において7月9日にビーコンを喪失。 |
2003年10月2日
〜10月20日 |
搭載DHU*2の誤動作の可能性を排除するために搭載メモリの内容を書き換えを実施 |
2003年10月23日より |
CI-PSUの連続オンにより短絡個所を焼き切る運用を再開。 |
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注1: |
バルブ不具合に関する原因究明を行った結果、材料不適合によるしゅう動部の動抵抗増加に起因する作動不良が原因である可能性が高いと推定されている。 |
*1 |
ビーコン状態: 衛星から電波は出ているが電波にデータは乗せていない状態 |
*2 |
DHU:搭載機器へのコマンドの配信や地上へ送信するデータの編集等を行う衛星の心臓部と言えるコンピュータ |