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第5回日仏宇宙協力シンポジウムの開催結果について(報告)

平成17年6月22日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項
立川理事長、CNESデスカタ理事長を議長として実施した第5回日仏宇宙協力シンポジウムの開催結果について報告する。

2. シンポジウム概要
(1) 日程  平成17年6月15日(水)−17日(金)
(2) 場所 パリ  CNES本部(6月15、16日)(開会本会合、分科会)
航空ショー会場(6月17日)(閉会本会合、レセプション)
(3) 主な出席者  JAXA立川理事長、樋口理事
CNESデスカタ理事長、ジャニシェフスキ戦略局長 5分科会の共同議長、
分科会メンバー(JAXA、CNES及び機関間の協力に関係する宇宙関係企業・機関等、総勢約100名)


3. シンポジウムの結果
(1) 前回シンポジウムの共同声明にて設定された重点4分野(宇宙部品、地球観測、宇宙輸送、ISS利用)及び将来ビジョンの各分科会にて、両機関間の具体的な協力可能性について調整を行った。
(2) 本調整結果を踏まえ、両理事長の署名による「共同宣言」を取りまとめた。概要は以下のとおり。
(本文を別紙1(PDF: 74.0KB)に、仮訳を別紙2に付す。)

(1)地球観測分科会 (JAXA共同議長:EORC石田計画マネージャ)
以下の協力事項を今後実施することが合意された。
- 静止観測衛星による災害監視ミッションに係る共同検討実施
- GEOSS10年実施計画の下でのCNES-JAXA間の協力検討
- EarthCAREプロジェクトの準備・利用における科学協力の促進
(2)宇宙輸送分科会 (JAXA共同議長:河内山輸送プログラム推進部長)
以下のテーマに重点化して今後検討することが合意された。
- 飛行実証実験(Pre-X及びJAXAによる新提案等)
- 信頼性技術
- 液体推進薬挙動の制御に係る技術(飛行実験等)
- 将来宇宙輸送システム(ISS輸送関連、若手技術者間による次世代輸送機の検討等)
(3)宇宙部品分科会 (JAXA共同議長:松田宇宙用部品開発共同センター長)
既存の協力活動に加え、更に以下の協力計画が追加された。
- 新FPGA* を産業界とともに共同開発すること。
- Jason2衛星による共同計測実験(LPT及びICARE。2005年10月中旬のMOU締結を想定)
- 人工衛星の帯電解析に関する協力

* Field Programmable Gate Array :ユーザにより自由に書き換え可能な半導体素子
(4)ISS利用分科会 (JAXA共同議長:田中宇宙環境利用センター長)
以下の協力可能性を検討すること、さらに月・火星への有人探査の準備に向けて、ISSを利用してどのように貢献できるかについて共同検討を今後実施することが合意された。
- DECLIC* を用いた臨界現象におけるピストン効果実験
- 二国間協力によるベッドレスト実験
- 将来の生命維持装置における重要な要素の共同開発

* Dispositif pour l’Etude de la Croissanceet des Liquides Critiques :臨界現象・結晶観察実験装置
(5)長期ビジョン分科会 (JAXA共同議長:白水経営企画部次長)
相互の中期・長期のビジョンを紹介し、本ビジョンの下での活動の意義を相互に認識した。さらに、今後本分科会を将来的に新たな協力項目を見出すための議事運営体(Steering Body)として位置づけることに合意した。


なお、本共同宣言において両理事長は、今後両理事長間で毎年会談を行い協力活動の進捗を確認及び促進すること、各分科会を毎年開催することに合意した。




[別紙2]

第5回日仏宇宙協力シンポジウム 共同宣言
フランス、パリ  2005年6月15-17日


 第5回日仏宇宙協力シンポジウムは、「Our roles, our partnership in the era of French-Japanese reinforced cooperation」というテーマの下、CNES、JAXA及び関係研究機関・企業による100名以上の出席者を迎え2005年6月15-17日にフランス・パリで開催された。

 開会本会合において両理事長は、アリアン5ECA及びH-2Aロケットの打上げ再開成功数ヶ月後の今日における相互の戦略を述べた。CNESより、デスカタ理事長がNES・仏政府間の2005-2010年の契約の概要について紹介した。次にJAXAより、立川理事長が20年間に亘る長期ビジョンについて紹介した。
 開会本会合の後、地球観測、宇宙輸送、宇宙部品、ISS利用及び長期ビジョンの5種類のテーマの分科会が開催された。各分科会では、日仏両者の宇宙活動の状況が紹介されるとともに、日仏間の将来的な協力可能性について議論が行われた。

 シンポジウムにおいて、CNES及びJAXAは世界の宇宙活動の現状について認識を共有した。即ち、宇宙技術及びその利用は、今日では人々の日常生活の質を高め、経済成長と環境保全を両立し、地球・人類の持続的発展を促進するための政策目標を達成する不可欠な手段として認識されてきており、宇宙利用を通じて社会をいっそう豊かにするための積極的な取り組みが求められているということである。

 かかる認識の下、両理事長は各分科会の議論の結果に基づき、両機関間の協力を促進するために各分科会で合意された以下の活動を承認した。



1)地球観測分科会では、JAXAの国際災害チャータ加入、地球放射観測ミッション(EarthCARE)プロジェクトの選定といった状況が確認されるとともに、以下の更なる協力事項が合意された。

  • 静止観測衛星による災害監視ミッションについて共同検討を実施すること。
  • GEOSS10年実施計画の下でのCNES-JAXA間の協力の位置付けと内容の具体化を検討すること。
  • EarthCAREプロジェクトの準備及び利用における科学的な協力を促進すること。

2)宇宙輸送分科会では、以下のテーマに重点化して検討することが合意された。
 飛行実証実験(Pre-X及びJAXAによる新提案等)、信頼性技術、液体推進薬挙動の制御に係る技術(飛行実験等)及び将来宇宙輸送システム(ISS輸送関連、若手技術者間による次世代輸送機の検討等)。


3)宇宙部品分科会では、従来からの非常に活発な検討活動に基づき、既存の協力活動(民生用部品使用に係る共通方針及びガイドライン作成等)に加え、更に幾つかの協力計画が追加された。

  • FeRAM* やSOI* といった技術の活用による新FPGA(Field Programmable Gate Array*)を産業界とともに共同開発すること。
  • Jason2衛星による共同計測実験(LPT及びICARE。2005年10月中旬のMOU締結を想定)
  • 人工衛星の帯電解析に関する協力

    * Ferroelectric Random Access Memory :強誘電体物質の分極の状態によってデジタル情報を記憶する素子。
    ** Silicon on Insulator :絶縁膜上に形成した単結晶シリコンを基板とした半導体。通常のシリコン基板と比較して、SOI技術によって低電力消費化、高性能化を図ることができる。
    *** ユーザにより自由に回路をプログラム可能な半導体素子。

4) ISS利用分科会では、近い将来における3点の協力を検討することが合意された。DECLIC* を用いた臨界現象におけるピストン効果実験、二国間協力によるベッドレスト実験及び将来の生命維持装置における重要な要素の共同開発。
 さらに本分科会では、ISSの利用が、とりわけ2010年以降、月・火星への有人探査の準備に向けていかに貢献することができるかについて共同で検討を実施する。

* 臨界現象・結晶観察実験装置


5) 長期ビジョン分科会では、相互の中期・長期のビジョンが紹介され、本ビジョンの下での活動の意義が認識された。さらに本分科会を、包括的な戦略をカバーすること、新たなミッションの骨子に関する意見を共有すること、幾つかの宇宙分野(ISSプログラム、新たな宇宙探査ビジョン等)における国際的な協力枠組みについて評価することを目的とした分科会として存続することが提案された。本分科会は、将来的な協力活動を見出すための議事運営体として位置づけられる。

さらに、JAXA及びCNESは人材交流を促進する意思を確認した。


両理事長は、協力活動の進捗を確認し促進するために毎年会談を行うことに合意した。さらに、5種類の分科会を毎年、日仏交互の場所で開催することについて合意した。


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