宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成19年9月14日に打上げ、平成21年6月11日に月面に制御落下させた月周回衛星「かぐや」の制御落下直前の地形カメラ(TC)等による立体視画像および動画等の作成に成功いたしました。
今回作成に成功した動画は「かぐや」の制御落下から約12分前に、地形カメラの2つのカメラで観測したデータを用いて作成したものです。従前の立体視画像に比べて、「かぐや」の高度が下がったことで、より分解能の高い立体視画像となっています。超低高度観測により、月面の様子をより詳細に判別することができました。
この後、「かぐや」は日陰である制御落下地点に向かったため、落下まで月面が暗くなって、立体視画像の作成に必要な対のデータ取得はできませんでした。このため、今回の立体視画像とその後、地形カメラの片方のカメラで観測できたデータが「かぐや」の地形カメラで撮影した月面のラストショットとなります。また、制御落下1周回前の軌道では、マルチバンドイメージャ(MI)のラストショットも撮影いたしました。
地形カメラの立体視動画は、下記のJAXAホームページ デジタルアーカイブス、「かぐや」画像ギャラリーおよびYouTubeのJAXAチャンネルでご覧いただけます。なお、「かぐや」の観測データについては、11月1日から研究のためインターネットで一般公開を開始する予定です。また、「かぐや」に関する成果等の報告を行うパブリックイベントを平成21年7月18-19日に秋葉原で実施予定です。
【JAXAホームページ デジタルアーカイブス】
http://jda.jaxa.jp/jda/v1_j.php
(ジャンル:観測画像、カテゴリー:月・惑星探査、ミッション:月 で検索ください。)
【JAXA かぐや画像ギャラリー】
http://wms.kaguya.jaxa.jp
【YouTube JAXAチャンネル】
http://www.youtube.com/jaxachannel
【「かぐや」パブリックイベントホームページ】
http://www.sayonara-kaguya.jp
別紙
(1)地形カメラ
図1 地形カメラの片方のカメラで最後に月面撮影した画像を高度補正したもの
(矢印は衛星進行方向 北から南)
観測日時:2009年6日11日 3時15分52秒〜3時16分00秒(日本標準時)
観測場所(中心):南緯83度 東経260度 付近
衛星高度:約18.5km
補正処理:進行方向を5.4倍内挿処理※をしたもの
※地形カメラ、マルチバンドイメージャでは、データを取得する間隔が固定されており、「かぐや」の月周回速度が高度100kmと衝突直前でほとんど変わらなかったため、アロングトラック方向(衛星進行方向)の解像度は、高度100kmでの解像度とほぼ同じで、地形カメラでは10m、マルチバンドイメージャでは20mとなっています。その一方、衛星進行方向と直角のクロストラック方向は、高度が低くなると分解能が向上することになります。このため、高度18.5kmでは、高度100kmに比べて100/18.5 = 5.4倍分解能がクロストラック方向では向上します。このため、アロングトラック方向とクロストラック方向で分解能に差異がでるため、撮影画像は縦方向につぶれた画像となっています。そこで、分解能のよいクロストラック方向にあわせた画像に補正するために、内挿処理を施しています。

地形カメラの立体視ペア画像から作られたオルソ画像
3.8 km × 43.8 km(進行方向:左下(北)=>右上(南))
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右上から左下へ
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左下から右上へ
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図2 地形カメラの最後の立体視画像・動画
観測日時:2009年6日11日 3時12分25秒〜3時12分55秒(日本標準時)
観測場所(中心):南緯73.5度 東経260.5度 付近
衛星高度:約25km
補正処理:進行方向を2.5倍内挿処理をしたもの
動画:「かぐや」地形カメラによる制御落下軌道の3D動画 [HD] (Youtube JAXAチャンネルへリンク)
地形カメラの最後の動画は、図2の立体視画像を動画処理したものです。あたかも月面の約2300mの高さの所に立っている人が、徐々に下っていき、最後は約400mで見ているかのように高さを変化させています。

地形カメラ(TC)の観測原理

星印が地形カメラの撮影場所
左の星印部分が最後の立体視画像の観測場所(図2の観測場所)
右の星印部分が地形カメラの片方のカメラで最後に月面撮影した観測場所(図1の観測場所)
(2)マルチバンドイメージャ
図3 マルチバンドイメージャの最後の月面撮影画像
(左側が観測データ、右側が観測データの一部を高度による影響を補正し、縦方向に1.56倍内挿処理をしたもの。矢印は衛星の進行方向で北から南)
観測日時:6月11日 1時03分52秒〜04分37秒(日本標準時)
観測場所:オリエンタール盆地の西端
(南緯23度 東経261.7度〜南緯25.6度 東経262.2度)
衛星高度:約64km
本画像は、制御落下の1周回前の軌道で撮影した画像です。

マルチバンドイメージャ(MI)の観測原理