宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
宇宙開発事業団(NASDA)が国際宇宙ステーション早期利用の一環としてロシア・サービスモジュール(SM)を用いて実施中のNASDA宇宙実験の実施状況について報告する。
(1)平成13年8月21日 | ロシアプログレス輸送船(5P)による実験装置の打上げ |
(2)平成13年8月25日 | HDTVカメラ実験開始(第1回医学実験) |
(3)平成13年10月15日 | EVAによるMicro-Particles Capturer and Space Environment Exposure Device (MPAC&SEED)のSM外壁への取付 |
(4)平成13年10月21日 | ロシアソユーズ宇宙船(Soyuz-TM33)による、タクシークルーおよびCM制作実験に使用する機材の打上 |
(5)平成13年10月26、27日 | タクシークルーとの交信を含めたCM制作実験実施 |
(6)平成13年10月31日 | ロシアソユーズ宇宙船(Soyuz-TM32)により第1回撮影済みHDTVテープの回収 |
(7)平成13年12月6日 | 取得映像のプレス発表@NASDAi |
平成13年10月15日にロシア人クルーのEVAによりSM外壁にMPAC&SEEDが取り付けられ、実験を開始した。EVAに先立つ船内での準備状況をHDTVカメラで計15分間撮影した。併せて、実宇宙環境下での実験と並行した地上対照実験を実施中。
平成13年8月25日の実験開始から平成13年10月31日の第1回HDTVテープ回収までの間、計353分の高精細度映像を取得した。
8月25日に第1回目の医学実験を、ISSモスクワ管制センター(MCC-M)においてNASDA研究者立会の下で実施し、10月末までに9回の実験で計118分の高精細度映像データを取得した。
また、地上との医学実験の様子を記録したダウンリンク映像6回分も同時に入手した。
今回回収したテープで撮影シナリオの進行状態等を確認した。さらに、無重量状態における被験者の固定状況とカメラの撮影アングルについても確認し、解析に足る十分な情報を記録出来ていることを確認した。
取得したHDTV映像は従来のダウンリンク映像と比較して、臨場感があり視診用の映像としては十分と判断された。
宇宙飛行士の視診の一次所見としては、船内の湿度が低く保たれているためか、顔や上肢の皮膚が乾燥し、皮膚のガサガサを克明に認めることが出来た。 将来的に、皮疹や外傷の程度なども十分に確認が可能と考えられる。
これらの映像データはNASDA研究者に配布され引き続き解析作業が実施されている。
第3次クルーを対象とした実験は帰還直前の12月4日まで実施した。
第3次クルー帰還後の地上に於ける基礎映像データ取得を14年1月に予定している。
これまでに、地球映像計64分、船内宇宙活動計103分の映像を取得した。
回収映像を確認した結果、平成13年10月27日のパスでは、九州鹿児島から北陸、北海道、北方四島と日本を縦断する映像を良好に取得した。
さらに、船内宇宙活動撮影では、宇宙生活や作業の様子、無重量環境を分かりやすく説明する理科実験の様子を捉えた映像を取得した。
撮影は現在も継続しているが、取得映像について、映像コンテンツと映像品質の両面からの評価を行いながら、その特徴を生かした利用形態を検討している。
なお、12月6日以降、今回取得した映像のハイライトの公開を行い、映像を提供している。
平成13年10月26日および27日に2回のリアルタイムダウンリンクを含めて計53分のCM制作実験としての撮影を行った。10月31日にテープを回収し、現在、共同研究者である(株)電通にて編集作業中である。
(1)平成13年12月15日 | 第3次クルー帰還、第4次クルー滞在開始引き続き、第4次クルーによる地球観測撮影実施 |
(2)平成14年3月 | 第5次クルー医学実験・プリフライトデータ取得きぼう利用パイロットプロジェクト実施成果取纏め |
(3)平成14年4月 | 撮影済みHDTVテープ回収(第2回目) |
(4)平成14年5月11日 | 第4次クルー帰還、第5次クルー滞在開始医学実験、広報応用実験再開 |
(5)平成14年8月 | HDTVカメラ実験終了 |
(6)平成14年9月 | EVAによるMPAC&SEED回収(その1) |
(7)平成14年11月 | ロシアソユーズ宇宙船(Soyuz-TM34)により撮影済みHDTVテープ地上回収(第3回目)MPAC&SEEDサンプル地上帰還 |
(8)平成15年、16年 | EVAによるMPAC&SEED回収(その2、その3) |
NASDAはロシアサービスモジュール(SM)を用いて以下の実験を実施する。微小粒子捕獲実験および材料曝露実験は最大3年にわたり、高精細度テレビカメラ利用実験は1年にわたり実験をおこなう予定である。
SM外壁にMPAC&SEED実験装置3式を船外活動により取り付け、それぞれ1年から3年にわたり宇宙環境に曝露させた後、曝露実験試料を地上に回収し、微小粒子環境の計測および材料の経年変化の評価を行う。
1.1微小粒子捕獲実験
宇宙ステーション軌道に存在する微小なダスト(スペースデブリ、マイクロメテオロイド等)の存在量、大きさ、組成、衝突エネルギ等について評価し、安全な宇宙活動に支障を来すおそれのある微小粒子環境の把握、太陽系の形成と進化の一層の理解に貢献するなど、宇宙環境モデルの最新化等に資する。
1.2材料曝露実験
宇宙機の長寿命化、高信頼性確保のために、宇宙環境に曝される部分に使用される機能材料や構造材料の耐宇宙環境性の向上を目的とし、宇宙用材料(熱制御材料、固体潤滑剤等)を宇宙放射線、原子状酸素等の宇宙環境に曝露させ、それら材料の劣化状況及びコンタミによる汚染状況を評価する。
2.1医学実験
宇宙飛行士は精神的・肉体的なストレスが多い特殊な環境で活動を行うため、宇宙ステーションでの長期滞在には医師や、専門家のサポートが必要とされる。本実験では、宇宙飛行時の遠隔医学診断および心理面でのサポートへの実施に向けて、高精細度テレビジョン(HDTV)カメラの高精細な視覚情報の上記サポートでの有効性の評価を行う。
2.2広報応用実験
宇宙ステーション内部の活動及び地上からの撮影要求に宇宙飛行士が対応することによる効率的な地球の映像取得実験を行い、ISSにおける映像取得技術を修得すると共に、取得映像の広報活動等への活用と新たな利用形態の検討を行う。また、「きぼう」における高精細カメラの搭載・利用運用段階に備えた宇宙映像の利用分野の新たな可能性の検討に資すると共に、ハードウエア及び運用に対する開発要求を纏める。
2.3きぼう利用多様化パイロットプロジェクト実験
将来のJEM利用の多様化促進および多様な利用形態に備えた制度検討に資することを目的に、「ISS映像を活用したCM制作・実施プロジェクト」を実施。提案者側が用意する撮影対象物とシナリオ、並びにHDTVカメラを利用して、無重力状態で美しい映像を撮影し、宇宙のリアリティが感じられる広告撮影の技術実験を行う。また、実際の広告まで行い、利用制度構築のための知見を得る。
画像 | 撮影日 (日本時間) | 説明 | 公開区分 |
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MPAC & SEED船外活動準備作業 | 2001/10/10 19:00〜 10/11 0:30 |
MPAC & SEED荷姿、開梱作業状況並びにインターフェースホルダーとMPAC & SEED本体の組み立て作業。作業はロシア宇宙飛行士のミハイル・チューリン(Mikhail Turin)が実施 | 未公開 |
MPAC & SEED船外取り付け状況 | 撮影日不明(10/15〜10/27) | ドッキングコンパートメント(DC-1)の窓から後方を見た映像。 EVA終了後のMPAC & SEED の据え付け状態が撮影されている。 | 未公開 |
船外構造物の状況 | 撮影日不明(10/15〜10/27) | ドッキングコンパートメント(DC-1)の前方の窓からISS外壁の構造物を撮影した映像。 カナダのロボットアームが収録されている。 | 未公開 |
宇宙ステーションロシアサービスモジュール内全景 | 2001/10/1 0:35頃 | 今回の撮影実験の主な舞台となったロシアが提供するサービスモジュールの内部である。ロシア宇宙飛行士のミハイル・チューリン(Mikhail Turin)がサービスモジュールの内部を説明しようとしている。 | 12月6日公開 |
サービスモジュール内寝袋 | 2001/9/8 22:15頃 | サービスモジュールの宇宙飛行士用個室に設置された寝袋に実際に入り、寝袋の説明をしているチューリン飛行士。 | 12月6日公開 |
宇宙小実験 宇宙で紙飛行機はどう飛ぶか |
2001/9/5 8:30頃 | チューリン飛行士が、自分で紙飛行機を作成し、無重量空間で紙飛行機がどう飛ぶか実証している。今回の撮影の機会では、宇宙におけるさまざまな活動を紹介する映像を納めた他、無重量の環境を分かりやすく説明するための素材として、このような小実験をいくつか行い、撮影している。宇宙で紙飛行機を飛ばすと、宇宙では重力がないため、飛行機に加わる力は揚力だけとなり、飛行機は上に上がろうとする。理論上は、回転するように飛行するはずである。実際に飛ばしてみると、理論通りに上に上がり、回転しようとする動きをすることがわかった。(しかし、空間の広さの問題があり、きれいな円運動の様子は撮影できなかった。飛行機の重心を変えた2回目の飛行では、急激に上昇する結果となり、飛行には重心(飛行機の羽と重心のバランス)が大きく影響することが映像をみて知ることができる。 | 12月6日公開 |
宇宙小実験 宇宙でヨーヨーができるか |
2001/9/5 1:30頃 | チューリン飛行士が、無重量でヨーヨーができるかを実験している。宇宙では無重量のため手からヨーヨーを離すだけでは落ちていかないが、軽く投げてやれば、どの方向からも戻ってくるので、初心者にっとっては、ちょっとした名人気分が味わえるはずである。実際、チューリン飛行士は子供の時に2,3度ヨーヨーで遊んだ程度なので初心者と言ってよいが、宇宙ではすぐに上達した。但し、ハイパーヨーヨーを扱う上級者にとっては、糸がのびきった反動で戻ってきてしまい、ハイパーヨーヨー独特の自慢の技が披露できないと思われる。 | 12月6日公開 |
宇宙生活 (散髪) |
2001/9/23 3:25頃 | ロシア人宇宙飛行士が散髪をしているシーンである。切っている方は、チューリン飛行士、切られている方は、ジェジューロフ飛行士である。散髪は宇宙長期滞在においては習慣的な事となる。散髪後に浮遊する髪の毛は掃除機で吸っている。 | 12月6日公開 |
宇宙生活 (余暇の過ごし方;ギター) |
2001/9/12 20:45頃 | ミハイル・チューリン飛行士が自由時間を使って趣味のギターを演奏する準備をしている。 | 12月6日公開 |
地球映像 (地球をバックにしたソユーズ宇宙船) |
2001/10/26 22:15頃 | 画角に入っている宇宙機は宇宙ステーションにドッキングしているロシアのソユーズ宇宙船である。ソユーズ宇宙船の太陽電池パドルが鮮明に映し出されている。宇宙ステーションにドッキング中のソユーズ宇宙船は、現在、宇宙ステーション長期滞在宇宙飛行士の緊急着陸用として常に待機している。このソユーズ宇宙船は、ロシアからクルーが打ち上げる周期(約半年)で入れ替わる。 | 12月6日公開 |
日本列島 九州 |
2001/10/27 9:35〜9:41 | 高度約400kmの宇宙ステーションから地球を見下ろす。 宇宙ステーションの通常の飛行姿勢において常に地球を向いている方の窓から撮影している。 日本列島を縦断する軌道を利用して九州鹿児島から北海道、北方四島の一連の映像の取得に成功した。九州の映像では、鹿児島がよく見える。桜島、開聞岳も識別できる。 |
12月6日公開 |
日本列島 四国・大阪 |
2001/10/27 9:35〜9:41 | 九州のすぐ後に、四国、淡路島、大阪が見える。特に四国は雲も少なくよく陸地が見える。高知市内平野部がはっきりと識別できる。また、琵琶湖も確認できる。画面右下から富士山の火口が見えてくる。 | 12月6日公開 |
日本列島 能登・佐渡 |
2001/10/27 9:35〜9:41 | 雲がかかっていない能登半島にクローズアップされる。北には佐渡も見える。 | 12月6日公開 |
日本列島 東北・北海道・北方四島 |
2001/10/27 9:35〜9:41 | 三陸地方を抜けた後、知床半島、根室そして国後島が見えている。この後、宇宙ステーションは東方向へ移動し、北方四島を見下ろす。 | 12月6日公開 |
宇宙ステーションから見る日本近海の低気圧 | 2001/9/6 7:40頃 | 宇宙ステーションのクルー用個室にある窓から見る地球。 サハリン上空の宇宙ステーションから日本側を撮影。日本の太平洋側に渦状の低気圧が見える。 |
12月6日公開 |
MPAC & SEED 船外活動準備作業
MPAC & SEED 船外取り付け状況
医学実験終了後の状況
トレッドミルでの運動のために固定具を装着する宇宙飛行士
トレッドミルで運動する宇宙飛行士
宇宙小実験:宇宙でヨーヨーが出来るか
宇宙生活:散髪の様子
日本列島:九州・鹿児島
日本列島:本州・北陸