理事長挨拶・定例会見
平成18年12月
平成18年12月 理事長定例記者会見 立川理事長の定例記者会見の概要をお伝えします。
日 時:平成18年12月21日(木)13:30-14:15
場 所:JAXA 東京プレゼンルーム

トピックス
・APRSAFの開催
・産学官連携シンポジウムの開催
・インド宇宙研究機構との協力
・STS-116
・H-IIA11号機の打ち上げによる成果
・2006年をふりかえって

APRSAFの開催

APRSAF(アジア太平洋地域宇宙機関フォーラム:Asia-Pacific Regional Space Agency Forum)の13回目がインドネシアのジャカルタで開かれました。日本からは遠藤文部科学副大臣が出席されるなど、各国の55機関が参加し、約150名が参加しました。年々、参加者が増えており、分科会も熱心に開かれるようになっています。日本も「センチネル・アジア」(Sentinel-Asia)を提唱して活動をすすめています。順調に「だいち」のデータも活用できる状態になっており、さらにインドや韓国からも衛星データを提供してもらおうということになっています。色々な情報が集まってくることと思われます。来年以降も積極的にAPRSAFの活動を進めていきたいと思います。


関連リンク
国際協力:第13回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-13)の開催結果について

産学官連携シンポジウムの開催

産学官連携シンポジウムを12月7日に開催し、多くの方々にご出席頂きました。オープンラボの成果を、事例をもって紹介することができ、懇親会の席上でも展示を行ったり、各社からの製品紹介などが行われました。宇宙からのスピンオフ、宇宙へのスピンインを積極的に進めていこうと考えています。


関連リンク
産学官連携サイト[AEROSPACE Biz]

インド宇宙研究機構との協力

インドのシン首相が訪日された際に出された共同声明の中で、宇宙のことが取り上げられました。JAXAとISRO(インド宇宙研究機構:Indian Space Research Organization)との間で結んでいる協定をさらに推進し、特に宇宙科学や衛星利用についての協力関係を築こうという内容が載せられています。

STS-116

STS-116は12月10日に無事打ち上げられ、23日に帰還予定です。太陽電池パドルの収納および設置も滞りなく終わったようです。


関連リンク
宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター

H-IIA11号機の打ち上げによる成果

JAXAのH-IIA 11号機は、12月18日に2日遅れで無事打ち上げられました。204型の打ち上げは初めてでしたが、無事成功し、H-IIAの四つの型は全て実証を行いました。これでH-IIAについては、民間移管への見込みを得ることができました。H-IIAは長い間開発してきましたが、政府の方針にしたがって、来年度から民間移管を行い、MHIが打ち上げます。衛星を打ち上げてほしい人はサービス契約を結んで打ち上げることとなります。JAXAは引き続き、安全の確保を行います。


関連リンク
特設サイト きく8号/H-IIA11号機打ち上げへ!

2006年をふりかえって

  • 宇宙のことが、少し世の中に解ってきて頂いているという印象があります。第3期の科学技術基本計画で、宇宙システムおよび衛星が国家基幹技術に取り上げられました。航空機関係も戦略重点科学技術ということで取り上げられ、超音速のための研究開発がスタートできる段階にきました。また、2006年の骨太方針にも宇宙関係が盛り込まれました。これを受け、「宇宙の利用・産業化の推進」、「国際競争力を強化すること」、「安心・安全な社会の実現」などの観点で、我々も予算要求を行いました。
  • また、宇宙基本法の審議が進んでいるようです。まだ、国会での審議には至っていませんが、骨子はおおむね固まったと聞いています。日本も、国が宇宙政策を考えるようになる、という基盤ができることから期待しています。
  • 一方、JAXAについては
    1. 信頼性の向上について、実績を示すことができるようになったと感じています。色々な手を打った成果が出てきて、ロケットの打ち上げや、衛星の信頼性が高まってきたのではないかと思っています。
    2. ロケットについては、民営化を是非、決められたとおり実現したいと努力をしてきましたが、H-IIAのすべてのパターンを実証できたことで、目途がつきました。MHIとの間でも細かい取り決めを行い、民間移管するにあたって、監査すべき事項も決めており、その実施も行って、おおむね良好であるという報告を受けています。来年は「セレーネ」の打ち上げや「WINDS」の打ち上げが、民間移管の年の初めての打ち上げになります。安全管理についてはJAXAの仕事として、射場整備を含め、引き続き行っていきます。
    3. 宇宙の利用の拡大については、衛星が上がって初めて始まります。「だいち」の打ち上げも成功して、大いに活用されました。災害チャータにも加盟し、インドネシアやタイの災害の際に色々と情報を提供したことにより、感謝されているところです。また、センチネルアジア(Sentinel-Asia)での情報提供もしています。アジアへ情報提供をするため、バンコクにデータノードを設置して頂きました。そこを経由して情報を配ることになっています。JAXAとしてもそのサポートをするべく、センチネルアジアの事務所を設置し、新任所長も赴任したところです。「だいち」を基として、「きく8号」、来年の「WINDS」も災害対策の通信手段として使えるのではないかと期待しています。関係省庁での実証実験に使えるようになったことから、打合せ会議を持って、将来に向け、どのような機能が重要か、観測周期、分解能、観測幅など、省庁の要求を取りまとめることができました。これに基づいて我々の研究をさらに進めたいと考えます。環境問題をはじめ、農水産業や資源探査関係への適用、あるいは、気象予報情報をより良くするなど、色々な利用の可能性を検討していきたいと思います。
    4. 宇宙科学の進展については、昨年の「すざく」に続いて、「あかり」、「ひので」の打ち上げに成功し、成果をあげています。日本の得意とする分野であり、少ない予算で、着実な成果を挙げていると自負しています。「ひので」についても、太陽が活動期でない段階で良い成果を挙げています。これから活動期に入って、さらに良い成果を出すことを期待しています。また、ブラックホールの問題、全天観測などで、新しい発見が出てくるのではないかと期待しています。
    5. 航空部門は、昨年、グループを独立させましたが、今、超音速航空機開発の計画案を作って審議を受けており、基本的には了解を得ています。超音速機の開発に向け研究に着手して、着実な成果を挙げたいと思っています。実現までには20年ほどかかりますが、国際協調で実現していきたいと思っています。

2006年はJAXAにとって、結構良い年になったのではないかと思っています。