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「きぼう」日本実験棟での共同実験計画が進行中

Q. 今後、国際宇宙ステーションに、パートナーとして参加する計画はありますか?

「きぼう」日本実験棟(提供:JAXA/NASA)
「きぼう」日本実験棟(提供:JAXA/NASA)
多目的実用衛星アリラン3号(提供:KARI)
多目的実用衛星アリラン3号(提供:KARI)

 国際宇宙ステーションでの各種宇宙実験を推進するためのパートナーとして、私たちが協力できる機会があれば、いつでも参加したいと考えています。現在「きぼう」日本実験棟を利用した日韓共同の宇宙実験計画の検討が進められていて、2015年頃を目指して、私たち韓国の実験装置を宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)で打ち上げて、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で共同研究をおこなう予定です。 Q. 宇宙科学探査についてはいかがでしょうか?  KARIとしては、2023年頃に月探査機を月周回軌道に投入するという目標があります。しかしそれを実行するためには、少なくともKSLV-2ロケットが必要です。KSLV-2ロケットを改良すれば、月探査機も打上げられると考えているからです。まずは、純国産ロケットを作ることが先決です。 Q. 韓国はこれまで海外との宇宙協力を推進してきました。日本との協力についてはいかがでしょうか?  韓国は2009年、日本のH-IIAロケットの打ち上げ業務を担う企業に、多目的実用衛星「アリラン3号」の打ち上げを発注しました(打ち上げは2012年の予定)。これまで地球観測衛星の観測データを活用するという点では、1993年に設立されたアジア太平洋地域宇宙会議(APRSAF)を通して、日本との協力関係を築いてきました。そして2006年にKARIとJAXAは、宇宙航空分野での協力のための取り決めを締結しました。しかし、今回のように衛星の打ち上げを委託するなど、本格的な日本との協力関係は、はじめてのことです。2015年頃には「きぼう」日本実験棟の日韓共同実験も検討しています。今後も日本との国際協力を発展させていければと思います。

H-IIAロケットによる韓国の衛星打ち上げ

Q. H-IIAロケットで多目的実用衛星「アリラン3号」を打ち上げようと思った決め手は何だったのでしょうか?

多目的実用衛星アリラン3号の熱真空試験の準備(提供:KARI)
多目的実用衛星アリラン3号の熱真空試験の準備(提供:KARI)

 一言で言うと、国際入札での日本の提示金額が最も安かったからです。日本のロケットは値段がとても高いというイメージがありましたので意外でした。

 日本のロケットで「アリラン3号」を打ち上げることになって、私たちはとても嬉しいです。なぜなら、H-IIAロケットは打ち上げ成功率が高いだけでなく、ロケット発射場がある種子島は、温暖で気候も良いですし、何より韓国から近いため衛星の運搬が楽ですからね。 Q. 日本は、ロケットで衛星を打ち上げることだけでなく、人工衛星の海外への売り込みも行っています。韓国がこれまでヨーロッパに衛星を発注してきた理由は何でしょうか?  なぜこれまで宇宙開発の分野での日本との協力関係がほとんどなかったのか? まずは、これまで日本があまり海外展開を積極的に行っていなかったという経緯があります。また、私たちが必要としていた衛星のレーダー技術などは軍用に転用される恐れがありますので、輸出に関してはとても厳しい規制がありました。正直に言うと、当時、韓国は宇宙開発の実績が少ないと思われていて、むしろ日本の方が私たちを相手にしてくれなかったように思います。

 でも今では韓国も、衛星本体の基本的な機能を持つ「バス」の部分を自分たちで作れるようになってきました。技術と経験を兼ね備えてきましたので、今後は、衛星に搭載する観測機器など、技術的な面でも日本とも協力できることがあるのではないかと考えています。

成長と発展が望まれる宇宙開発

Q. 韓国では、衛星の実用化は進んでいますか?

千里眼衛星(提供:KARI)
千里眼衛星(提供:KARI)
千里眼衛星が撮影した画像(提供:KARI)
千里眼衛星が撮影した画像(提供:KARI)

 GPSのような測位衛星はありません。衛星利用については、安全保障や資源探査、災害観測などを優先させています。ただ、地球観測衛星の画像については、国際災害チャーターに参加して無償提供するほか、販売も行っています。多目的実用衛星「アリラン2号」の観測画像の売り上げが好調だったこともあり、今年打ち上げる「アリラン3号」「アリラン5号」を起点に、衛星の商業利用を本格的に始める予定です。 Q. 国内の宇宙産業についてはいかがでしょうか?  KARIが主導して、韓国の宇宙産業を活性化させようと取り組んでおり、実際に年々成長してきていると思います。今年だけで衛星を4機打ち上げますので、それに携わる人たちは今が最も忙しい時期です。この4機が無事に打ち上がれば、軌道上にある韓国の衛星は全部で6機あることになりますので、その運用とデータ利用の面からも、宇宙産業発展の足がかりになると思います。 Q. 韓国の国民は、宇宙開発に何を求めていると思われますか?  自分たちの衛星を韓国から打ち上げたいという思いは強いですね。ロケットの打ち上げというのは、国家のプライドに関わる部分もありますので、国民の関心が高いようです。だからこそ、2021年打ち上げ目標のKSLV-2ロケットは必ず実現させたいと思っています。

日本との新しい国際協力に期待

Q. 今後の展望をお聞かせください。

 まずは、今年打ち上げ予定の衛星4機を無事に宇宙へ届けたいです。そのためには、羅老ロケットの3度目の打ち上げを成功させることが重要です。そのほか近々では、国際宇宙ステーションでの宇宙実験計画や、KSLV-2ロケットの開発を予定通り進めることが私たちの目標です。 Q. 今後JAXAに期待することは何でしょうか?  これまでJAXAとは、主にアジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)の参加国としての協力関係を築いてきました。そのAPRSAFはJAXAの主導で、他のメンバーはJAXAの衛星の情報を活用させてもらうというのが主軸になっていたように思います。しかしこれからは、私たちも衛星のデータを提供するなどして国際協力に参加したいですし、JAXAともっと連携をとって、アジア地域の宇宙利用の促進に貢献したいと思います。

 また、私たちが自国ロケットで衛星を打ち上げられるようになるまでに、あと10年はかかります。それまでにも新しい衛星を打ち上げる計画がありますので、今後のためにも、今年予定されているH-IIAロケットによる「アリラン3号」をぜひ成功させてほしいです。そして、APRSAFの活動以外でも、日本との国際協力の機会が持てればと思います。

関連リンク: H-IIAロケット21号機打上げ特設サイト(三菱重工)
関連リンク: しずく特設サイト

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