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宇宙からのインスピレーションを広げたい

Q. 2012年9月13日には、宇宙実験の模様がライブ配信されましたが、テレビ番組のようなしっかりした内容でしたね。

「スペースラボ」のライブ配信のようす
「スペースラボ」のライブ配信のようす
細菌の実験の様子を紹介する、サニータ・ウィリアムズ宇宙飛行士
細菌の実験の様子を紹介する、サニータ・ウィリアムズ宇宙飛行士

 私たちは「スペースラボ」のライブ配信を、世界で最高にクールな科学系マッシュアップ(※)にしたいと考えていました。そのため、とても尊敬されている科学コミュニケータのビル・ナイ氏をホストに迎え、45分間のサイエンス教室という構成にしました。最優秀賞を受賞した子供たちも出演して、前半では彼らの実験の科学性を伝え、国際宇宙ステーションでの科学がなぜとても面白いのか、なぜ重要なのかを視聴者に説明しました。そして後半は、国際宇宙ステーションに滞在中のNASAのサニータ・ウィリアムズ宇宙飛行士とつなぎ、実験の様子や結果を紹介しました。このライブ配信はインターネットで公開していますので、見逃した方はぜひご覧ください。

(※マッシュアップ:ウェブ上で提供されている複数のコンテンツを組み合わせて、新たなウェブサービスを生み出すこと。)

関連リンク: YouTube Space Lab: From 250 Miles Above the Earth
Q. 「スペースラボ」を成し遂げた、今のお気持ちはいかがでしょうか?  コンテストに参加してくれた2000チームの人だけでなく、インターネットなどを通して「スペースラボ」の存在を知ってくれた人たちに、宇宙からのインスピレーションが広がっていってくれたら嬉しいと思います。「スペースラボ」のことを知って科学を勉強したくなったとか、何だかよく分からない刺激を受けたとか、どんなことでもいいんです。私にとっては、それこそが「スペースラボ」の目的だと思っています。

 2008年にこの企画が通ってから実際に実験が行われるまでの間、やらなければならないことが山ほどありました。でも「スペースラボ」は私個人の夢の実現でもあったので、そのために時間を費やすことは大きな喜びでもありました。だから、ライブ中継で実際に宇宙実験が行われているのを見たときは大変嬉しくて、感動しました。正直に言うと、今はプロジェクトが終わってしまって寂しいです。「スペースラボ」に続く企画を早く考えないといけません!

人生のターニングポイントと宇宙

Q. バーマルさんは幼い時、どのようなことに興味がありましたか?

 幼少の頃は、私を応援してくれる両親と、高校時代の素晴らしい物理の先生との出会いが、宇宙のことを知りたいという私の気持ちを後押ししました。その先生は、教科書の内容以外にもいろいろな話を聞かせてくれたのです。例えば、学校でニュートンの運動の法則を教えているときです。先生は、ニュートンの運動の法則が、アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』のオープニングシーンを説明できると言うのです。そして、君たちはこの法則が真実だと思っているが、いつか相対性理論を学び、光速で移動している物体について知ったとき、ニュートンの法則が間違いだったことが分かる、などと説明してくれました。こんな具合に、先生はいつも教科書に載っていない話を喜んでしてくれたので、それがとても役に立ったと思います。好奇心をとてもかきたてられました。 Q. 大学で物理学を専攻されていますが、科学者を目指していたのでしょうか?  大学に入学した当時、自分は科学者になるだろうと思っていました。でも、同年代の多くの若者のように、科学以外のいろいろなことに興味を持つようになったんです。そして、公職に就きたいと思うようになり、卒業後は英国政府の仕事に携わりました。国内・国際問題に関するスピーチライターと政府顧問をしていたのです。そして28歳の時に、幸運にも奨学金でアメリカのスタンフォード大学のビジネススクールで学ぶことができ、卒業後まもなくして、Google社に入社したというわけです。この会社はいろいろなことに挑戦できると聞いていましたが、まさか、自分の企画を実現する機会を与えてくれるなんて夢にも思っていませんでした。

自分たちが存在する理由を見つけるために

Q. バーマルさんにとっての宇宙の魅力とは何でしょうか?

 「なぜ私たちは存在するのか」という私の子供の頃からの疑問に答えてくれそうなところです。私は15歳くらいまでは特別何かに夢中になったことがなく、ごく普通の子供でした。でも、生と死、自分がなぜ存在するのかにとても興味がありました。哲学や神学の本をたくさん読んで、「存在」に関する根本的な問題を理解しようとしていましたね。当時の年齢で、そのような本を読んだだけでは答えが見つからないような、とてつもなく大きな問題の答えを探していたのです。

 私の人生のターニングポイントは、15歳の時に、父がスティーブン・ホーキング博士の『ホーキング、宇宙を語る』を買ってくれたことです。その本を必死に読もうと試みましたが、当然、その年齢の限られた物理の知識ではほとんど理解できませんでした。しかし、最初のたった10〜15ページほど読んだだけですっかり魅了され、宇宙の世界に引き込まれました。本の内容のほとんどを理解できなかったものの、自分の疑問に対する答えはここにある、宇宙を勉強したら答えが見つかるだろうと何となく感じました。

 その頃に比べたら自分の視野は広がっていますが、今でも、自分の「存在」の問題には関心がありますし、膨張し続ける宇宙について学ぶことによって、その答えが見つかるかも知れないと思っています。生きているうちにぜひその答えを知りたいですね。でも、いずれにしろ、その答えを見つけるのは私ではありません。「スペースラボ」の応募者の中の何人かがその答えを見つける道を歩むのです。受賞した子供たちとは今後もずっと連絡を取り合って近況を聞きたいと思います。 Q. バーマルさんの将来の夢、あるいは今後の展望をお聞かせください。  次のプロジェクトがどのようなものになるかまだはっきり分かりませんが、「スペースラボ」だけで終わらせるつもりはありませんし、そう願っています。次世代にインスピレーションを与え、自分の存在に関する大きな問題の答えを見つけるためには、まだまだやるべきことがたくさんあります。

(写真提供:YouTube)

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