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 「星の王子さま」への旅 −小惑星が教えてくれること−
吉川 真(よしかわ・まこと)
「はやぶさ」や小惑星「イトカワ」の軌道計算などにも関わってきた、天体軌道計算の世界的な第一人者である、宇宙科学研究本部の吉川真助教授(宇宙情報・エネルギー工学研究系)のエッセイをご紹介します。
(JAXAウェブサイト編集部)
「ね……ヒツジの絵をかいて!」 「え?」 「ヒツジの絵をかいて……」 (c) Akemi Ogura 2005

 これは、「星の王子さま」の初めの部分にある有名な一節ですね(脚注1)。砂漠に不時着した飛行士は、この言葉で王子さまと出会い、その後、現実とも夢の中とも区別のつかない時空の中で、王子さまと心の交流をすることになります。その交流の中から、飛行士は人間には欠けたものがあることを知るのです。

 このサン=テグジュペリの「星の王子さま」は、私の最も好きな本のひとつです。実に不思議な物語で、子供たちが読めばおとぎ話ですし、大人が読めば人間や社会に対する批判の書になります。そして、さらに、この物語が書かれた時代(1942年から1943年)や筆者の兵士としての生き様と重ねてみると、この物語の奥には深いメッセージが隠されているように思えます(脚注2)。

 ところで、星の王子さまがなぜ小惑星から来たことになっているのか、以前から不思議でした。小惑星なんて、宇宙の中ではめだたないちっぽけな存在なのですから。どうして、サン=テグジュペリは、星の王子さまの故郷として、小惑星を選んだのでしょうか?



脚注1:「星の王子さま」の訳文は、内藤濯氏訳の岩波少年文庫より。原書のタイトルは、Le Petit Prince。
脚注2:星の王子さまの世界、塚崎幹夫著、中公新書
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