星の王子さまは、地球に来てからちょうど1年後、故郷の小惑星へと帰っていきます。ちょうど1年後に、王子さまが地球に降り立った場所の真上に、王子さまの小惑星がくるからです。物語の詩的な雰囲気を壊してしまって恐縮ですが、これはちょっと設定がおかしいですね。小惑星は地球とは別の公転周期で太陽を回っているのが普通ですから、小惑星が1年後に地球から見て同じ場所に戻ってくることはまずありません。もちろん、地球と同じぴったり1年の公転周期ならばそのようなことはあり得ますが、そうしますと星の王子さまの小惑星は、非常に特別な小惑星ということになります。そして、地球軌道のすぐそばにあることにもなります。つまり、星の王子さまの小惑星は地球に接近してくるNEOだった、ということですね。
実は、小惑星イトカワも、地球に接近するNEOの1つです。最近では、2004年6月26日に0.01天文単位(約150万km)まで地球に接近しましたし、その前は2001年3月29日に、0.04天文単位(約600万km)まで地球に接近しました。イトカワの場合には、接近の間隔が3年余りありますから残念ながら星の王子さまの故郷の小惑星ではなさそうですが、公転周期がほぼ1年の小惑星もいくつか発見されています。そのような小惑星が星の王子さまの小惑星なのかもしれません。